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血の輪

昏睡状態(第16話)

大川縁

以前から余所で公開している詩集ですが、こちらでいくつかの詩と一緒にまとめることにしました。今後若干の改稿はあるかもしれませんが、まずは先行公開としてオリジナル版をどうぞ。

詩

5,865文字

 

月

 

 

――沼沢から溺れる、足は引き摺られ、

見上げれば、そこがいかなる穴とも知らず、

あれは月だ、美しい月だよと、信じた、

 

瞼が鉄に焼けるように熱い、 息を吸うことは、 息を止めることよりも、苦しく、

四日四晩苦しみぬいた祖母の袂に、 汚された箸を供える、

すすり泣き、

膝から下を漆喰の川に委ね、 よく堪えたねえ、よくないだねえ、

何遍も声をかけ、焚かれる香の、 微かな弛みを浴び、また頬を濡らす、

 

沼沢に集まるかの群れ、

あれは鷺かな、それとも、

未だ乾かぬままに、 淡い期待を寄せた、あれらは、・・・・・・

 

いや、もうよそう、 夜の間は、こうして、

月の穴に溺れることだけが、 唯一の温もりなのだから、

 

 

彼岸花

 

 

せっかくのお誕生日ですから、 奇麗な絹に身を包んで、

ほら、たまにはお化粧だって、

そういう遠慮ばかりしていると、 居間の鬼が笑うのよ、

 

これ使い古しなんだけれどね、

元々は、おばあちゃんが自分の着物を、一糸、一糸、ほどいてねえ、

末っ子だった私のために、よおく縫い直してくれたのよ、嬉しかったわあ、

お姉ちゃんたら、顔を赤くして、

ずるい、ずるいって言うの、

でもお姉ちゃんたちは、普段から、新しいお洋服を買ってもらっていたから、

私は、いっつも、 お姉ちゃんたちは、ずるいって、

私も、赤い靴履きたいって、 駄々をこねたんだから、 お相子よね、

 

立派になって、 おばあちゃんにも、よく見せてあげて、

ほら、 あなたの孫が、こんなに大きくなりました、

どこに行っても、 恥ずかしいことなんて、何一つないんだから、

胸を張って、しゃんと、歩いておゆき、

 

おばあちゃん、 一緒に喜んでくれているね、きっと、

 

 

惨

 

 

驕り翳り、浅まし、十の輩、 己が膿、咎、人、判判判、

泥に塗れ、 堂を歩む、滅、信を裏切り、 腹の底で発芽し、臆す、

風し斑、 四方族、天地反転、崩落、我、 膳安息、界隈、

訛、権化の説戒、 不病を諭し、修羅売買、 繁茂野生と枯渇道徳より集り、窮地、

判を押す、

澱まれ、道化の雫、呪詛、 朱の嗚咽、開墾憚る、無惨惨、

鯱の虚像、恫喝、藪祈、生え、 帳尻に化、敬う喪の共、頂まで負い、

攫え、八つ目、贅脆贅脆贅脆贅脆、 和の営み、接ぎ枝、虚虚、

業坂に、流転、切磋、 禁じ手を破り、嫁入前に没す、畜生の群れ、

 

惨、惨、惨、判を押す、

惨、惨、惨、惨、判を押す、

惨、惨、惨、惨、惨、判を押す、

惨、惨、惨、惨、惨、惨、判を押す、

惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、判を押す、

惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、判を押す、

惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、判を押す、

 

逸る憶測、警戒、凡、 牢悦に唆し、欠伸惑い、非の打ち所、耽々と、

暮煙昇る、縄、葦原焼き、 目下修繕、産湯に浸かる混沌、慈円芳し、

茫々、豫物、蛇と狼煙、 不知火恃み、燻らす、庵篭り、劫、嚥下す、

謂れ、詭弁跋扈に調印、 煮え滾る報復、存、飛沫し、恍惚と縫合、

因とり、諏訪凪、王の爪剥し、 邪な陣、踏み入らず、叙事或る事に、

蹂躙、憩い貰、法資質を間欠泉とし、 鰥夫、卿奪奪奪、卑屈に、卑劣に、

宵、不審を貪り、凶兆、淵から、 息吹く鳥居、方位、子の徘徊、愉快、

さて劣等、障壁に囲まれ、銅鐸、 手締め、諦め、舞う、憐れめ、憐れめ、

 

惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、

判を押す、押せ、判判判、 拇印、判、

惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、 惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、

判を押す、押せ、押せ、判判判判判判、 調印、密接、

惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、 惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、 惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、惨、

判を押せ、押せ、 押せ、押せ、判判判判判判判判判、

割印、金の流鏑馬、

 

印、

 

 

束の間

 

 

擡げる菜の首摘み、籠は満たされる、

日浴み葛よ、訥々と煽てられる、

© 2016 大川縁 ( 2016年3月17日公開 )

作品集『昏睡状態』第16話 (全17話)

昏睡状態

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