日常。(48)

日常。(第41話)

mina

小説

1,459文字

僕の人生は誰にも知られることなく、僕の顔は誰にも覚えてもらえず、僕は何のために生きているんだろうって、ずっと思っていた
最初は学校という場所が僕の存在を消しているんじゃないかって思っていたから、学校という場所に行かなくてもいい大人になれば、僕の時代が来ると心待ちにしていた

大人になれば学校に行かなくても良くなる、社会に出れば、僕のこの真っ白な毎日が無くなると思っていたんだ

毎日毎日僕のことを必要としてくれる時代がやってくると思っていたけど…そんな時代は待っても待っても来なかった
僕はいてもいなくても同じ…でも彼女は僕を必要としてくれていた
それがどんな理由だったとしても、僕は嬉しかったんだ

ただ、嬉しかったんだ

「最近アンタが出勤するたびに来るわねぇ」
「あぁ、戸山さん?」
「そう、あの何だかさえないサラリーマン」
「何だかさえないかぁ」
「あんまり夢中にさせるとあの手のタイプは怖いわよ~」
「怖いか…そうよね」
「そうそう、ああいうのってきっとストーカーになるわよ~」
「やだ、変なこと言わないでよ」
「変なことでもないと思うわ、気をつけなさいよ」
「 … 」
私は本当にストーカーっているのかな?ってずっと思っていた
テレビのニュースでストーカー殺人事件とか見てても他人事だったし…
第一、殺しちゃう程誰かのことを愛することなんてあるのかな?
私は人間なんてそんなに一途に誰か一人のことを愛せないって思ってるし、どこかでいつも誰かのことを裏切ってる生き物だって思ってるから、逆にストーカーさんってスゴイなぁっていつも感心してた

私も誰かに必要とされるときがくるのかな?

         ・           

今日は彼女とどんな話をしようかな?彼女と逢える日は一日中楽しくて、彼女が僕のことを待っていると思うと胸がドキドキした
こういう気持ちが「愛してる」っていうんだろうか?僕にとっては全てが未経験だ

もっともっと彼女のことが知りたい
もっともっと彼女に近づきたい
僕の全ては彼女にあるんだ

         ・          

「ねぇアンタ大丈夫?」
「ん?何が?」
「気づいてないんだ…」
「え?」
「鈍感というか、おめでたいというか…何時に上がるの?」
「十時だけど…」
「じゃぁ今日は一緒に帰ろうね」
「え?」
同僚でいつも頼りになるさゆりさんが急にそんなこと言ってきたから何だろう?って思ったら…
「解る?」
「えっ?」
「アンタつけられてんの解る?」
「つけられてる!?」
「戸山よ、戸山!」
「戸山さん…?」
私は恐る恐る後ろを振り返ってみた
「あっ…」
「ね、いるでしょ?アイツ」
そこには確かに戸山さんがいた
「今まで何もなかったの?」
「うん…」
「運がよかったのねぇ…で、どうする?」
「どうするって言われても…」
「一緒に行ってあげるから警察行こう!」
そう言って私の手を掴んださゆりさんの手を私は振りほどいた
「…何で?アンタ殺されちゃうかも知れないのよ!」
「…大丈夫」
「何言ってんの!?」
「戸山さんはきっと何もしないわ」
「アンタ馬鹿じゃないの?」
「心配してくれてありがとう、でも大丈夫」
「…全く、何かあったらすぐに私に連絡するのよ、解った?」
「ありがとう」
私は戸山さんのことを怖いと思わなかった
むしろ戸山さんの存在を知ってから逆に安心出来た
「 … 」
誰かに一途に愛されているという事実が私をカンジさせた

               end

2015年5月11日公開

作品集『日常。』第41話 (全70話)

© 2015 mina

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