日常。(37)

mina

小説

1,564文字

午前六時に起床。軽くシャワーを浴びて、いつも行くお気に入りのカフェで買ったパンを焼く。バターとジャムはネットで取り寄せたちょっと値段が高めの贅沢なヤツ。コーヒーは輸入雑貨店で見つけた、ニューヨークのカフェでいつも飲んでいたものと一緒の豆を自分で丁寧に挽いて、ゆっくり抽出させたもの。
「 … 」
僕にとってかなり幸せな時間。1人で過ごす朝。1人が当たり前の朝。そしてまた同じ毎日が始まる。

僕はいつも完璧を目指す。無駄な時間を過ごしたくないからだ。僕にとって究極な無駄は恋愛。

          ・         

頭痛い…。昨日飲みすぎた…。てか、なみちゃん、酒強かったなー。
「…って、もうお昼なのね。仕事行かなくちゃ」
携帯電話をみたら『新着メール15件』って…どんだけよ。大体最近、なみちゃんの彼氏話聞かされ過ぎなのよね。
「てか、いい天気…。」
自分の部屋の窓から見える青空がすごくキレイに見えた。

          ・         

会社での僕は役職もついていて、ある程度、自由がきく存在だった。でも…その自由な時間に何をしたらいいか、解らないでいる。1人で何をどうしたらいいのか、全く解らない。
「加藤さんは休んでいて下さい」
部下にそう言われて、とりあえずオープンカフェでコーヒーを飲んでいるのだが…落ち着かない。街を歩いている人を見るのも飽きてきたし…。
「てか、マジで!?」
そんな事をボンヤリ思っていたら、僕の後ろでそんな声が聞こえた。
「今日もお店休んだら、店長怒りまくるよ?
それに、アンタそんなに彼氏に振り回されて
ていいの?」
「 … 」
後ろを振り向いたら、茶色の巻き髪、セミロングヘアーで目の大きな、いやらしい口元の女の人がいた。
「…出勤しなよ、待ってるからさ。」
僕が振り向いたら、少し小声になって、彼女は携帯電話を切った。そして僕に…
「ごめんなさい、うるさかったでしょ?」
「いや、そんなには…」
急に話しかけられて、ドギマギしている僕に彼女は笑って、
「もしあなたさえよければ、一緒にお茶しませんか?」
「えっ…」
彼女からの急な誘いに僕は更に動揺した。
「私、1人で過ごすの苦手なんですよ。」
「あ…」
僕の同意を得ぬまま、彼女は僕の隣りの席に座った。それは僕にとってかなりのサプライズで、感情が高ぶり、高揚している自分に驚いていた。
どうやら彼女は風俗の仕事をしている女性らしく、男慣れしているその雰囲気が僕を安心させた。
「でね、そのなみちゃんが、彼氏が仕事行くなっていうから、仕事行かないって言うんですよ!それじゃダメじゃないですか?」
「そうだね、仕事は仕事だからね」
彼女は僕に全然関係のない人達の話や、昨日のテレビの話、今ハマッているお菓子の話…と、表情をコロコロ変えながら屈託なく話していった。何だか僕は彼女を見てるだけで楽しかった。
「加藤さん、お待たせしました…。」
「あぁ、じゃぁ行こうか。」
「行っちゃうんですか!?あ、じゃぁこれ…もらって下さい」
面食らう部下をよそに、彼女が差し出した名刺のようなものをもらい、その場所を後にした。
「 … 」
若い部下はその後、終始、僕の事を不思議そうに見ていた。彼女からもらったそれは、やっぱり名刺で、蛍光色で書かれた彼女の名前が可愛らしかった。

          ・         

「あ、あの時の!」
「こんにちは、逢いにきたよ」
僕は無駄な時間も楽しいと、思うようになっていた。それは彼女との出逢いがきっかけだった。彼女と過ごすその時間は僕にとって非日常的で、居心地が良かった。
「また逢えて嬉しい」
彼女に触れたその時、指につたわるその液体が僕を興奮させた。
               end

2015年2月2日公開

© 2015 mina

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