日常。(35)

mina

小説

1,408文字

どうして男の人って浮気するのかしら?

「何かさっきのお客さん、私のこと抱きしめて愛してるとか真剣に言うのよ」
彼女が話している、さっきのお客さんというのは私にも愛してると言って、私を抱きしめた男だ
「困っちゃうのよね、好きになられても…お客さんなんだし」
彼女は饒舌に自慢げに、得意気に話す
「 … 」
私はあんな男の話なんて聞きたくなかった
これは風俗という仕事で、もちろん私とあの男は恋人同士ではないし、
永遠の愛を誓いあったわけでもない
「あのお客さん、本気で私と付き合いたいと思ってるのかしら?」
どうして、彼女はあんなくだらない男の話を延々と私に聞かせるんだろう
「…気持ち悪い」
「えっ!大丈夫?」
「ちょっと、トイレ行ってくるね」
私はその場所の居心地の悪さに堪えきれなかった
昔、愛してるっていう言葉はもっと大切な言葉だと思っていて、
こんなに頻繁に男の人から言われるような言葉ではないと思っていたし、
私も最初は彼女のように勘違いしていた時もあった
「 … 」
トイレって落ち着くなぁ

         ・          

「愛してる」
また言われた
「僕だけのものにしたい」
私のことを舐め回しながら、そんなこと言うのやめてくれる?
「愛してる」
こんな男でも愛してるって何回も言われると私の心が動きそうになるじゃない
「本当にそう思ってるの?」
私はこの男に何を期待したんだろう
「思ってるよ」
当たり前のようにそう返してくる男を私は…
「じゃぁずっと言い続けて」
「ずっと?」
「そう、ずっと」
今度は私から男をきつく抱きしめた
「今日…何かいつもと違うね」
「そう?」
「どうしたの?」
「どうもしないわ、あなたは私を愛していて、自分だけのものにしたいんでしょ?」
戸惑った表情をした男を私は…
「何でそんな顔するのかしら?」
押さえつけて、男の顔を舐め回し、唾液でメチャクチャにした
「やっぱり何かいつもと違うよ」
怯えきった男の表情が楽しくて、私は男を自分の思うままに弄んだ
「愛してるって言いなさいよ」
「えっ…」
私は男の顎を掴んで
「愛してるって言いなさい」
と命令した
男は小さな声で
「…愛してます」
と言った
私は一人で絶頂を向かえた
男の怯えた表情と「愛してます」という言葉
は私にとって最高の媚薬だ
「もう二度と愛してるなんて言わせないわ」
「 … 」

         ・          

「最近ね、前に話したお客さんが愛してるって言わなくなったのよねー」
「そうなんだ」
今日は彼女から、あの男の話をされても嫌じゃなかった
むしろ愛してるって言わなくなった、あの男を可愛いと思った
「何、笑ってんの?」
「うん、ちょっと思い出し笑い」
「私のこと嫌いになっちゃったのかしら」
彼女はまるであの男と恋愛しているみたいだ
「気になるの?」
「うん、ちょっとね」
不安そうな表情を見せる彼女に私は何も言えなかった
「愛してるってお客さんに言われて嬉しかったの?」
「…そうね、嬉しかったのかも知れない」
「 … 」
そうよね、私も最初は嬉しかったんだもの
でももう、それだけじゃ濡れないの
またあの男に逢ったら、愛してますって言わせてやるわ
また、怯えさせて弄んで…

                end

                           

2015年1月12日公開

© 2015 mina

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