日常。(36)

mina

小説

1,467文字

携帯電話の着信ランプがピンク色に光るたびに私はドキドキしていた
私の携帯電話の着信ランプがピンク色に光る時は彼からメールが来たしるしだから
彼は私より8歳も年下で、音楽の趣味も食べ物の好みも全く合わなくて…一緒にいても何となく違和感があって…それでも私は彼が好きだった
一緒にカラオケボックスに行ったとき、隣りに座りたかったけど座れなかった私の隣りに何の躊躇もなく座ってきて、歌っている私に不意にキスをしてきた彼
「抱きしめて『好き』って言って欲しいの」って泣きながらワガママを言う私を優しく抱きしめて、好きだよって言ってくれた彼
手を繋いで欲しくて、黙って下を向いて歩いている私の手をギュッと握りしめてくれた彼が…大好きだった

         ・

「そういえばさーあの年下の彼元気?」
「 … 」
「…何?別れちゃったの?」
「うーん…ていうか、メールが来なくなっちゃったの」
「じゃぁメールしてみればいいじゃない?」
「…何か自分からメールするのって重い気がして嫌なんだ」
「何?重いって?アンタたち付き合ってるんでしょ?」
「付き合ってるっていうか…」
「…もっと自分に自信持ちなさいよ」
同じ店で働いているルカさんは私より年上で何かと私のことを気にしてくれる女の人
2児のママで旦那さんがいて、何だかとってもたくましい

『もっと自分に自信持ちなさいよ』

って言われても、8歳の年の差は私を臆病にさせていて、素直に彼の胸に飛び込めない自分がいた
頭の中が彼のことばかりになり、ちょっとしたことにでも嫉妬してしまう自分が嫌だった
…彼のこれからの人生を潰してしまいそうで怖かった

「まぁ、アンタの気持ちも解らない訳じゃないんだけどさ」
「…何か怖くて」
「大丈夫、きっと彼からメールが届くわよ」
「 … 」
お店の仕事もしたくなかった
彼が私の頭の中にずっといるから、他の男の人に何を言われても何をされても、何も感じなかった
…彼以外の人に触られたくなかった
「そんなことより、今日は暇よねー」
「うん」
「給料日前の月曜日だからかしら」
「この時間、普通は仕事してるもん」
「困ったなー娘に洋服買ってやるって、約束しちゃったのよね」
「うーん、きっと今からだよ!」
「そうよね、娘のためだもんね!」
ルカさんには悪いけど、お店が暇な方がいい
彼に出逢う前は仕事なんだっていう、割り切った気持ちが私の中にあって、お客さんに対してキチンとサービス出来た
でも今は無理、絶対に出来ない
なのに、彼に逢えない日は寂しくて、誰かと一緒にいたくって、お店に出勤してる
本当は彼に逢いたいのに、彼に逢いたいって言えなくて、私はここにいる

ここにいて、誰かを待ってる

「2人とも15時から予約が入りましたよ」
「やった!店長何分?」
「ルカさんは100分です」
「良かった!これで娘に洋服買ってやれるわ」
「 … 」
私はルカさんの笑顔が羨ましかった

         ・

そのお客さんは私の写真をホームページで見て気に入って来てくれた人だった
紳士的なオジサマといった雰囲気で優しそうな人だった
「写真より可愛いね」
「 … 」
私はおじさんに抱きしめられながら、彼のことを考えていた
そしたら寂しくなっちゃって、泣きそうになった
そのとき、私の携帯電話の着信ランプがピンク色に光った…
「…もうこんなに濡れてるなんて感じてくれたんだね…嬉しいよ」

                end
                        

2015年1月19日公開

© 2015 mina

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