49

小林TKG

小説

1,527文字

こないだの合評会の前に書きたかったやーつ。

父が死んでから、一か月ちょい経ったくらいのタイミングで実家の母親から電話がかかってきて、出ると、

「49日の法要やるよ」

という話であった。

「やらないといけないんですか?」

と聞くと、やるよそらやるよ。という。母親。息巻いてる母親。鼻息でふんふん言ってるじゃん母親。

ちなみに初七日の法要は、葬儀の時に合わせてやった。あれは合わせられるらしい。葬儀やって、御住職のお色直しがあって、初七日やった。子供の頃、祖母か何かが死んだ時、その時も多分、葬儀と初七日を合わせてやったんだろうけども、住職がいったんはけてのお色直ししてまた出てきた時、あの時、ちょっとした殺意みたいなものが芽生えた。

「やっと終わったと思ったらなんだこら」

って。まあ子供だったからね。この世の何も知らない子供だったから。世界は綺麗なもので溢れていると信じている様な子供だったから。だからそらまあ、長い葬儀が終わって、やっと帰れると思ってたら、お色直ししてまた住職が出てきてたら、そらね。そらそうなる。

「殺す」

って思う。今は思わない。父の葬儀の時は思わなかった。御住職がお色直しして出てきたのを見て興奮したくらい。

「お色直してるー」

って。

そんな訳で、49日の法要の為に実家に帰省した。で、帰ると母親が既に待っており、

「これに着替えろ」

と言う。言われた。えー、何ちょっと座る暇もないのか。とか言いながら着替えるとすぐに車に乗せられて、御寺に向かった。

御寺に到着すると、駐車場というかな、御寺の前のスペースの所に御住職様が、父の葬儀の時にお世話になった御住職様が立っておられて、お出迎えっていうかな、そういうのをしてもらった。なんでかわからない。49日ってそういうやつなんだ。みたいな感じ。

そんで、みんなして御寺の本堂に入り、入って座ったらもう、すぐになんか、しめやかに何かが始まった。多分49日の法要が。

御住職は葬儀の時や、初七日の時ともまた違う法衣を御召しになられて読経をしておられた。

子供の時分と違い、今はそういうことも楽しめる、楽しめるって言うとあれかもしれないけど、まあでも、正直に言って楽しめるようになっていたので、それはもう興味深く拝見した。拝聴した。

そうして葬儀の時よりは短く、まあ、初七日の時と同じくらいの長さの読経をされて、その間私達は、手を合わせたり、お焼香したりして、そんで終わった。

読経タイムが終わると、御住職が振り返り、それでは外へ、と言った。

「え」

外?

なんで?

とはいえまあ、言われるがままに本堂から外に出るとそこに、何かいた。キラキラした、華やかな衣装を着た、アイドルみたいなビジュアルの人達がいた。居た。並んでいた。アイドルだった。アイドルにしか見えなかった。アイドルいるって思った。

「Hōyō49です」

その人たちは元気な声で言った。

Hōyō49?

Hōyō。法要?

49。49日?

49日の法要?

そんで、そこでその人たちになんか踊りながら、ダンスしながら一曲歌われて。歌われた。なんかアップテンポな曲を。その間に私は母親に小声で話しかけた。

「これ、大丈夫なの」

って。

お金的な話。

「葬儀プランにこれも最初から入ってたから、大丈夫」

大丈夫なんだ。へー。ふーん。

母親はそのHōyōとか言う人達のそのパフォーマンスを見て、ちょっと涙ぐんだりしていた。なんで涙ぐんでんだよって思った。

私はその間、

「御寺が家からちょっと離れててよかった」

っていうのを思っていた。

とりあえず早く終わってほしいとも思っていた。

 

でも、諸々終わって家に帰ったら、実家に帰ったら、なんか、なんか、やっと面白くなってきて、その日の夜にdヒッツで曲探して、見つかったから、マイヒッツ登録した。

 

2023年2月1日公開

© 2023 小林TKG

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