水槽の家

泥で建てた家(第5話)

長崎 朝

小説

1,906文字

みじかいお話です。

家に帰ると、家が消えていた。

さっきまで確かに見ていたはずの夢が、目覚めた瞬間にもう思い出せなくなるときのように、文字通り、ぼくの家は家族もろとも跡形もなく消え去り、それがあったはずの場所には見知らぬ巨大な水槽が建っていた。

ぼくは隣の家の人のところへ行って、尋ねてみないわけにいかなかった。

「すみません。ここにぼくの家があったと思うのですが」

「さあねぇ。ここにはそんなものなかったような気がするな」隣のおばさんが言った。

「たしかに今朝まではあったはずなんです。ぼくは今日ここから勤めに出たんだから」

「そんなこと言われたってねぇ。勘違いじゃないのかい?」

2019年8月29日公開

作品集『泥で建てた家』第5話 (全6話)

泥で建てた家

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© 2019 長崎 朝

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