人形の子どもに延々とプレゼントを手渡し続ける電気じかけのサンタクロース。その隣は、雪の降らない島に青白い照明と人工雪で作り上げた銀世界の庭。そのまた隣は、屋上から色とりどりの電球を垂らした光の洪水……。リョウの運転する車に乗った益美の前を趣向を凝らしたイルミネーションが次々と流れていく。丘の裾野に並ぶ外人住宅はクリスマスの時期になると地元の若者の人気ドライヴコースになる。軍属が多く住むこの地域では毎年競いあうように豪華な電飾が施されるためだ。
「他人さまの庭を勝手に覗いて言うのもなんだけど電気代とか大変じゃないかな。クリスマスまで毎晩つけっぱなしでしょ?」と、益美が助手席の窓ガラスに鼻をつけたまま言った。
「大丈夫。このあたりの家は米軍から住宅手当をもらってるし、光熱費も支給されてる。以前は政府の思いやり予算から出してた時期もあったそうだよ」
「なら、気兼ねなく好きなだけ見物できるね」
「安あがりなデート……」
そうつぶやくとリョウは前を向いたまま小さく鼻で笑った。
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