ちっさめろん(6)

ちっさめろん(第6話)

紙上大兄皇子

小説

10,148文字

異能者集団○者の一員である探索者は、動物殿でシロクマに襲われた後、目を覚ます。目覚めた彼を待っていたのは、長い時間を経て変わり果てた日本だった……。スラップスティックSFの最高峰、第二部開始!

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二章 見出された語り部

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ところで、ぼくは目を覚ます。バキバキと身体を齧られる悪夢から目を覚ます。世界から取り残されなかったことに安堵して、ほっとため息をつく。目の前にはテレビがついていて、サッカーの試合を映している。それがますますぼくを安心させる。

でも、よく見ると、そのテレビは壁にかかっていて、すごく薄い。カレンダーぐらいの薄さだ。いつの間にあんな新型のテレビが出たんだろう。しかも、試合をしているチームは見たことがない。「ヤマトン東京」と、「アニマ別府」だ。Jリーグの下部チームだろうか?

「起きたか」

声が聞こえる。振り向こうとして、ぼくは叫び声を上げる。アロロロ! 首ががっちりと固定されて動かない。しかも、口の中の異物を噛んでしまう。

「慌てるな、いま外してやるよ」

声は続ける。《なんでも知っている友人》の声だ! 顔は見えないが、その手はぼくの鼻と口に入っていたパイプを優しく外してくれる。

「ひさしぶりらね!」

と、ぼくは喜びの声を上げるが、肺に凄まじい激痛が走るのを感じる。思わず咳きこむ。そのリズムにあわせて激痛が肺を締め上げる。

「大丈夫か、無理するな」

彼が肺に手を当ててくれたらしい。なんとか落ち着く。

「君、少し声が変わっらかい?」

「ああ。なんたって八年がたっているからな。そりゃあ、色々と変わるよ」

「八年?」

「ああ。探索者、おまえが動物園で白熊に襲われてから八年だ」

「そんらに?」

ぼくは眼球をぐるぐる回しながら考える。でも、足し算ができない。脳の機能がだいぶ低下しているようだ。

「いま何年ら?」

「****年だよ」

「ゴメン、桁の多い数字は理解れきないや。語呂合わせれ言ってくれるかな?」

「匂いな、だよ」

「ニオイナ……」と、ぼくの頭にあの懐かしい数字という概念が蘇る!「なんらって! もう二〇一七年?」

彼は「残念ながらな」と笑う。なんだか信じられないような気もするけれど、《なんでも知っている友人》が言うんだから、本当なんだろう。ぼくは観念したように溜息をつく。

「なんてこった……そんなに経ってしまったなんて。一昔じゃないか。なんらか、もうすべてがろうしようもないよ」

「そんなことはないさ。また、これからも今までどおり世界は続いていくよ」

「れも、きっと色んなものが変わりすぎていて、ぼくなんかじゃ……ねえ、よかったら、教えてくれないかな。ぼくが寝ている間に何が起こっらのか」

「たしかに、世界は変わったよ。でも、絶望はしないでほしい」

《なんでも知っている友人》は小さな音で、優しいため息をつく。すべてが終わってしまったことをおおい隠そうとする、優しいため息。

「おまえはオオサカズキ動物園で白熊に襲われて、ずっと寝たきりだったんだ。ほんとうにいろんなことがあった。まず、おまえが寝たきりになってすぐ、同時多発テロがあったんだ。ネズミのいる某テーマパークで天然痘ウィルスがまかれて、大阪の地下鉄が火事になった。いくつかのテロは未然に防がれもしたがね。あと、これは本当に大事件だったんだが、ついに東海大地震が起きた。二〇一二年のことだ。この傷からはまだ回復していない」

起き抜けには信じがたい話だ。が、《なんでも知っている友人》が言うのだから間違いない。

14包帯ぐるぐる巻きでベッドに横たわる探索者

「なんだか、安っぽいマンガみたいな話だね」

2015年11月19日公開

作品集『ちっさめろん』第6話 (全12話)

ちっさめろん

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© 2015 紙上大兄皇子

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