日常。(62)

日常。(第55話)

mina

小説

1,482文字

ここ最近身体の調子が良くない

「そうですね…風邪のひきはじめでしたら…葛根湯…この満量処方のものが良いかと…」
「あぁじゃぁそれを」
「はい」
市販の薬に頼ることなんて今までなかったのに、もう本当に辛い
でも今は仕事が忙しく、更に接待もある
誰にも頼れない、弱音を吐けない、誰も助けてくれない
そんなことは解っていたんだけど、いざこういう状況に陥ってしまうと…涙が出そうになる
あぁ自分は孤独なんだなと感じてしまう

そう、家に帰っても…
「今日またお母さん、私の料理が不味い不味いって言って食べないのよ」
妻の愚痴をずっと聞き
「何も食べる物が無いから、ちょっと小遣いもらえないかしら?」
母親の相手をして
「食べる物たくさんあるのに何でそんなこと言うのかしら!」
また妻の愚痴を聞き…妻も母親も僕の体調を気にしてくれず、僕はドラッグストアで購入した葛根湯を飲み、カップラーメンをすする
「今年のテーマは家族、そして絆です」
「 … 」
最近テレビを観ているとよく聞く言葉「家族・絆」
「やっぱり家族っていうのは良いですね」
「お互いがお互いを助け合い、1つになって日本を盛り上げていきましょう!」
僕はいつも思う
僕の家が津波にのまれたわけでもないし、地震で家が崩壊したわけでもないけれど同じようなもんだって
「母親が行方不明になってしまって…」
「妻を捜してるんです…見つからなくて」
僕は多分…津波や地震で妻や母親と離れ離れになっても2人を捜さないと思う
「 … 」
信じられないとか言われようが思われようがきっと僕は捜さない
「疲れた…」
どこにも僕の居場所がない
「苦しいなぁ…」
明日も朝早くから仕事だし、もう寝よう

         ・          

「何かまた震災のこと、テレビでやりだしたね」
「忘れるなってことじゃない?」
「でもさー嫌なことって…早く忘れたくない?私だったらそんな嫌な事はすぐ忘れて頭切り換えたいけどな」
「それもそうだねー」
私は震災のことを毎日毎日テレビでやってたとき、その悲しくて悲惨な映像をもう観たくないって思ってた
だからいくら忘れちゃいけなくてもまた特集されるのは嫌だなって
「何か待機してるときに暗くなるからチャンネル変えようよ」
家族と離れ離れになって、孤独になってしまった人達を見たくなかった
私は1人が寂しいというのを良く知っている
私みたいにもうずっと1人で1人に慣れてしまうのは…良くないって思ってる
「今年のテーマは家族、そして絆です」
「 … 」

         ・          

「こんばんは」
「こんばんは!めずらしいですね、遅い時間にいらっしゃるのって」
「…何だか眠れなくてね」
「…顔色悪そうですけど大丈夫ですか?」
「あ…」
「 ? 」
いつも休日の昼間に来てくれるタナカさんが眠れないといって平日の夜、私に逢いに来た
「お仕事忙しいんですか?あんまり無理しちゃダメですよ」
「 … 」
私がそう言ったら、タナカさんは顔をクシャクシャにして泣いた
「タナカさん?」
そんなタナカさんの姿を見て、驚いている私をタナカさんは強く抱きしめた
「…僕のことを気にしてくれてありがとう」
「 … 」
タナカさんの身体はあったかくて、熱があるみたいだった
「風邪…ですか?」
「…大丈夫、今日キミに逢えてよかった」
更に力強くタナカさんに抱きしめられたとき私は…
「タナカさん…痛いですよ…あっ…」
その力強さにカンジてしまい、イッてしまった

                end

2015年8月28日公開

作品集『日常。』第55話 (全70話)

© 2015 mina

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