今月は新潮、文學界、群像、すばるの4誌が発売された。4誌の概観をここで紹介しよう。そして、文學界には破滅派フリーク必読情報があるので確認されたい。

新潮 2022年9月号

・沢木耕太郎による、大戦下の密偵にして修行僧だった西川一三を追った超大型ノンフィクション「天路の旅人」第二部が掲載。

・安倍晋三元首相の国葬が閣議決定される中、旧統一教会と国会議員との関係が次々と明るみに出て問題となっている。今回は【緊急寄稿】として、磯部涼「安倍元首相射殺事件――令和四年のテロリズム」が掲載 。

・天童荒太の「聖都創造(二十一)」と、中森明夫「TRY48(十)[最終章]寺山修司を超えて」が連載完結を迎える。

文學界 2022年9月号

・【第一特集】「声と文学 作家、アーティスト、批評家たちと考える、声と身体と文学の関係!」として、Dos Monosや平沢進などアーティストの創作についてや、上田岳弘「声」、藤野可織「ブーツ」などの口述筆記、川原繁人「言語芸術としての日本語ラップ――その5つの理由」など批評を通して音楽と文学における声、身体と言語の関係について考える。

・【第二特集】「『ジョン・フォード論』を読む 蓮實重彦氏のライフワーク、ついに完成」として、ジョン・フォード監督とその映画について考察。蓮實重彦×阿部和重×三宅唱×三浦哲哉による〈大座談会〉「フォードの「うまさ」とは何か」のほか、濱口竜介監督によるエッセイ「謙虚な人」、木下千花による批評「イメージとしての妊娠――ジョン・フォードにおける僻地分娩の主題」など掲載。

・創作では、金原ひとみによる新連載「YABUNONAKA」がスタート。五十代の文芸編集者を通して文学と人生の意味を問う。山田詠美による「家畜人ヤプ子」も掲載。

・『第167回芥川龍之介賞』を受賞した高瀬隼子の特別エッセイ「わたしの歌」が掲載。

・王谷晶の新連載、映画エッセイ「鑑賞する動物」がスタート。

・初単著『ギークに銃はいらない』も好評な斧田小夜が、エッセイ「屈せない娘より、父へ」を寄稿。斧田ファンには必携の記念号となっている。

群像 2022年9月号

・毎年戦争について考えている9月号。今年の特集は「戦争の記憶、現在」として、松浦寿輝、高山羽根子、工藤庸子、石沢麻依、松永美穂、大川史織、庭田杏珠が戦争と文学について考える。

・創作では、川上弘美「水でぬらすと甘い匂いがする」、長島有里枝「灯台と羽虫」、町田康「応神天皇」が掲載。

・高瀬隼子による特別エッセイ「失われたおいしいごはん」が掲載。

・関口涼子の『ベイルート961時間(とそれに伴う321皿)』の刊行を記念して小特集。食を通して新たな社会の姿を探る、藤原辰史との対談「「食を書く」こと」。沼野恭子による書評「光に満ちたベイルートをめぐる魂の住まうテキスト」も。

・小川公代「ケアする惑星」、星野太「食客論」が最終回を迎える。

すばる 2022年9月号

・創作では辻原登「偶然の本質」、井上荒野「ぴぴぴーズ」、宮内悠介「花であれ、玩具であれ」が掲載。

・【特集】『生命は歓ぶ──人はなぜ「面白い」「美しい」を創造するのか』として、川上弘美×森郁恵「引き寄せ合う芸術と科学」、池澤夏樹×山本貴光「美しいとは何か──科学の視点から」、町屋良平×松原仁『「フレーム」から飛び出す術を求めて』、近藤良平×野村亮太「目に見えない熱を味わう」それぞれの対談を一挙掲載。

・『第46回すばる文学賞』予選通過作が発表される。