中学時代、授業中に隠れて電撃文庫をよく読んでいたので、やたらとジョークが挟まれるギャグっぽい文体には懐かしさを感じた。めちゃくちゃ読みやすかった。全く500頁を感じさせなかった。脳内でアニメ化もされた。場面によって文体を変えたり、ただの中二病にもいろんなバリエーションを持たせているのがすごいと思った(感想)。でも、本格ミステリ??? とは思った。偏見だが。新感覚ミステリではあると思った。個人の感想です。
私自身、中学時代は諸々の読書に励みつつ、猟奇殺人と少年犯罪を新聞から切り抜いてスクラップにし、なぜか黒地に血文字で英訳されたことわざ(「curiosity kills the cat」や「A drowning man catches even a straw」など)が大量にプリントされたTシャツを着ていたことを思い出してしまい、田中に漏れなく黒歴史をほじくり出された。私は十徳ナイフペロペロ側の人間だった。無意味に鞄にハサミを入れていたせいで、誤ってハサミを握って流血したことがある。
そういえば、最近の子は中二病にならないらしい。職場の子に「中学生の時ってそういうのに憧れるよね~」みたいな話をしても全く通じず驚愕した。なので、この作品を楽しめるのも中二病を経験したことがある一部世代のおっさんおばさんだけなのかもしれない。とはいえ、職業柄、偶然長野側の人間が集まっている可能性もある。十徳ナイフペロペロ側の人間は別の職についているのかもしれない。
脇道にそれたが、本題に行くとしよう。
犯人は天野川恒星。身内の不幸じゃあるまいし「胸騒ぎがする」という曖昧な理由で田中の「秋」の現場を発見させ、アリバイがある状態で長野に電話するという行動をとっているという点で怪しすぎるからだ。田中は天野川の不審さを見抜いていたので、探偵事務所に加入はさせなかったし、探りを入れるために相生とコンタクトを取っていた。
・なぜ犯人は長野と会ってから4時間も彼女を殺さなかったのか
→アリバイを作るため。スマホのバイブレーションを一定時間鳴らし続けることで、失神している長野が水に沈められるようになる仕掛けを作り、周りの目がある中で電話をかけることで発動。
・なぜ死体はプールの真ん中に沈んでいたのか。
→何か知らんけど仕掛けの都合。何か糸を張り巡らせる系で失神した長野が真ん中に吊るされるとかそういうやつ。中二病はそういうのが好きなので。
・なぜ黒猫を殺してまで「春夏秋冬」の文字を現場に残したのか。
・なぜ暗黒院は犯人に襲撃されたのか。
→実際にやりたかったのは「冬」の殺人事件のみだが、それを誤魔化して見立て殺人っぽくするために「春夏秋」を実行した。大がかりな仕掛けが噛んでそうなのは「冬」の殺人のみで、びしょ濡れの黒猫も、濡らされた田中も、大量の画鋲も、不気味なだけで意味がない。田中に至っては簡単に殺せそうな状況であるにも関わらず殺されていない。なので田中の狂言にも見える。疑いの目を自分から逸らす効果もある。
また、田中の「秋」の事件を起こし、わざと発見させることで「冬」の仕掛けを作った後だったが、その後起こった事件かのように錯覚させ、アリバイを作った。
っていうかそんな大量の画鋲使ってるなら、近所のホームセンターで大量の画鋲を買ってる奴を洗えば分かりそうな気もする。分からないように少しずつ買ったのかな。
・なぜ長野は殺されなければならなかったのか。
→ここが良く分からない。
・2年前の謎解きを台無しにされた逆恨み。実際に台無しにしたのは小鳥遊だが、小鳥遊の意図は読み取っていたので、長野のせいだと思うようになっていた。
・小鳥遊と一緒に謎を解く環境を作ることで探偵部を再結成しようとしていた。あるいは、小鳥遊と謎解きがしたかったので事件を起こした。毎度おなじみヤンデレパターン。
・「俺は感情が死んでいるからな。だが、人が死ぬことには心が動く気がした。俺は自分に心があるということを確認したかった。だから、自分の感情を実験するために人を殺してみようと思った」と中二病をこじらせすぎて、人格に支障をきたしたから。そこまでいく人はたぶん家庭環境に問題があると思う。めっちゃ偏見。
などは考えたが、いずれも決め手がない。個人的には二番目の理由が一番好きです。
ちなみになぜ鍵とスマホだけ別の位置に沈められてたのかはわからない。後から、こう、糸で「シャッ!」と滑らせる系かと思ったが、何故その位置に落ちるのかはよくわからなかった。
"さあ、妙々たる幕切れ(ワンダフルフィナーレ)の始まりだ!"へのコメント 0件