「地獄の沙汰もカネ次第」という言葉があるくらいなので、当然この世の沙汰もカネ次第である。本章では親の介護において、一般的にどれぐらいのコスト(つまりお金と時間)がかかるものとされているのか、そして、私の母の場合はどうだったのかについて説明したい。先にまとめてしまうと、以下の話題を取り上げる。
- 平均的な介護期間と年間あたりの金額
- 親の資産を把握し、何年も持つか予想する
- 銀行口座の凍結を防ぐために家族信託の利用も検討する
- 母の収支決算
最初に断っておくが、あなたは中年として仕事や家庭で金銭的管理をしており、「自分はお金のプロである」と自負しているかもしれない。しかし、あなたが相続や介護のプロでない限り、基本的には素人だと思っておいた方が安全だ。人生でそう何度もない「親の介護」という大イベントの経済面にズブの素人として向き合う謙虚さを忘れないでおこう。
私たちに予想される介護の終わり
そもそも親の介護期間というのはどれぐらいなのだろうか。親に持病がある場合は先述した『ビジネスケアラー 働きながら親の介護をする人たち』の著者のように、三十年という超長期にわたることもあるが、ここではあくまで平均的な例をもとに考えたい。二〇二五年問題は喫緊の課題なので、政府のほかシンクタンクや研究期間が統計情報を発表している。公益財団法人生命保険文化センターの発表「リスクに備えるための生活設計」では次の通りに平均像を結んでいる。
介護を行った期間(現在介護を行っている人は、介護を始めてからの経過期間)は平均六十一.一カ月(五年一カ月)になりました。四年を超えて介護した人も約五割となっています。
私の母は介護生活が始まってから四年で亡くなってしまい、これは私にとっては「早い」という印象だった。なぜなら、パーキンソン病が寿命に与える影響もわずか(一、二年程度)という情報を書籍で読んでいたからである。しかし、こうして統計と比べてみると、それほど特殊な例ではないことがわかる。介護期間四年以上の人(三十一.五%)と十年以上(一七.六%)の人もけして少数派ではない。私の母は介護期間の短いグループに属していたのだろう。とはいえ、これから介護を迎えるあなたは、介護開始当初の私と同じように、十年以上の介護生活がかかるもの、と悲観的に考えておいた方がよさそうだ。
また、同発表では介護期間にかかるお金についても次のようにまとめられている。
なお、介護を行った場所別に介護費用(月額)をみると、在宅では平均四.八万円、施設では平均一二.二万円となっています。
私の母の場合だが、在宅介護でも月九万円ぐらいかかっていた。毎日ヘルパーと訪問看護のどちらかにきてもらってデイケアにも入る、となると、それぐらいだ。生活費はそこに含まれていない。住宅ローンは払い終えていたので家賃は必要なかったが、食費や光熱費はまた別途かかった。うろ覚えだが、十二万ぐらいはかかっていた印象がある。これを年額にすると介護費用は年間約百五〇万程度だ。そうすると、十五年の介護期間があったと超悲観的に考えた場合、二二五〇万円がかかる。両親が健在なら、合計で四五〇〇万円だ。麻生太郎が二〇一九年の副総理時に「夫婦の老後資産として三〇年間で約二〇〇〇万円が必要」との金融庁報告に触れて叩かれたが、現実を見ているとそれほど間違った調査報告ではない。
ちなみに「健康寿命」という概念も存在するが、これはアンケート方式で「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」という回答に「ある」と回答したことを基準に算出されている。主観的な判断が含まれるので、必ずしも介護期間の参考にはならないことを留意しよう。
なんにせよ、いまあなたの両親が健在だったとしても、介護費用が発生しないことに賭けようとは思わないことだ。
寿命を数える
"カネと介護"へのコメント 0件