消雲堂の投稿一覧 101件

  1. 下妻模型屋夫人 小説

    • 消雲堂
    • 12年前
    • 3,774文字

    2010年の春・・・僕は茨城県の下妻まで出かけた。なんつったって桜満開の花見の季節であった。   下妻には街の中心部に砂沼っていう湖くらい大きな沼がある。 この沼は何も特徴がなくて殺風…

  2. 「神の川」 夢奇譚 / 小説

    • 消雲堂
    • 12年前
    • 3,496文字

    1.   一面に広がる麦の穂がそよ風に揺れている。それは緑色の海が波打っているようにも見える。耳を澄ますと遥か遠くの入道雲の奥から微かに雷の音が聞こえる。もう・・・夏も終わりである。僕…

  3. 「電車で骨を喰らう女」 夢奇譚 / 小説

    • 消雲堂
    • 12年前
    • 2,321文字

    その日、僕は仕事で荻窪に出かけた。仕事が済んだのは午後9時。僕は荻窪駅から総武線の電車に飛び乗った。 電車は津田沼行きだった。以前から疑問に思っていたことだが、中央線と総武線の違いは八王子方面行…

  4. 安全に与した男たち その1「伊能忠敬」 小説

    • 消雲堂
    • 12年前
    • 4,774文字

    織田信長は「人間50年、下天のうちをくらぶれば夢幻の如くなり、ひとたび生を得て滅せぬもののあるべきか」と言った。つまり現世の人間の平均人生に値する50年は、天人には一日でしかない。まるで夢幻のよ…

  5. 安全に与した男たち その1「伊能忠敬」 小説

    • 消雲堂
    • 12年前
    • 1,393文字

      江戸時代の旅人は1日に10里(40キロ)は歩いたと言われる。実質7時間程度で測量しながら10里を歩いた。時速では5.5キロ程度だが、実際には早足で歩く以上の早さだ。さらに忠敬は幕府…

  6. 生死生命論 小説

    • 消雲堂
    • 12年前
    • 1,652文字

    僕たちは、日々、会社や学校まで電車やバスに乗って通います.これが生死運命の全体像です.始発駅が誕生で到着駅が死です.簡単に書いてしまいますが、まあ我慢してください.人によって通勤通学時間は変わり…

  7. 「穴」 夢奇譚 / 小説

    • 消雲堂
    • 11年前
    • 685文字

    「穴」 朝、歯を磨いていると、鼻の穴がムズムズする。「鼻毛が伸びたか?」と思って鏡に顔を近づけて鼻腔を広げて覗き込む。 鼻毛が長く伸びている様子はないが、鼻の奥から何かが僕を覗いているような気が…

  8. 「赤い華族」 歴史奇譚 / 小説

    • 消雲堂
    • 11年前
    • 1,130文字

    ロシアのロマノフ王朝を退けたロシア革命の余波は、日本にも大きく影響しました。昭和の初期には恐慌、失業増加の不穏な世相の中に共産国家を理想郷として夢を追った若者の中には、本来ならば共産主義に対抗し…

  9. 「分身」 夢奇譚 / 小説

    • 消雲堂
    • 11年前
    • 911文字

    朝、洗濯機が動いて「ウン~ウ~ンウン・・・」と機械的な唸り声をあげている。 僕は、鏡を見ながら歯を磨いている。 鏡の中で歯を磨く自分の姿がブレて二重に見える。子供の頃から乱視なので「いつものこと…

  10. 無職の湯河原温泉行 壱 無職紀行 / 小説

    • 消雲堂
    • 11年前
    • 1,980文字

    乳がんで左乳房を失ったナマコを温泉に連れて行きたいと思った。   手術前にはふたりで温泉旅行をすることも多かったのだが、4年前に手術をした後、ナマコを温泉旅行に誘っても「温泉に行っても…

  11. 無職の湯河原温泉行 弐 無職紀行 / 小説

    • 消雲堂
    • 11年前
    • 1,512文字

    僕とナマコを乗せたバスは15分ほどで現地に到着した。「源泉境バス停」は小さな橋を渡ってすぐだった。バスから降りて橋の上から渓流を見ると、川面にくっつくように垂れ下がったモミジや楓の葉は見事に紅葉…

  12. 2008年幕張「能天気な僕は数年後に苦しむ」 無職紀行 / 小説

    • 消雲堂
    • 11年前
    • 4,689文字

    一昨昨日は、船橋職安に行って“職探し”をした。一応スーツを着込んでいるが実は本気で職を見つける気はない。今のところはね。独立したいからさ。適当にやって自由を謳歌して身体壊すってのがいいじゃんかね…

  13. 新宿 青春放浪 / 小説

    • 消雲堂
    • 11年前
    • 938文字

    若い頃・・・25歳だったかなぁ?池袋西武百貨店の販売員を辞めてマスコミで働きたいと思って、いくつかの業界紙(誌)編集部の面接を受けたが、採用してくれる会社はなかった。   そんなときに…

  14. 選挙野郎① 小説

    • 消雲堂
    • 11年前
    • 2,288文字

    投票日まで残すところ2日となった日の朝。早朝の駅頭活動を終えて冷凍庫のように冷えきった事務所内を石油ストーブ4台で暖めていると、「まだ折られだ!」と牛久から通う金井芳雄が強い北関東訛りで叫びなが…

  15. 選挙野郎0.1 小説

    • 消雲堂
    • 11年前
    • 1,480文字

    4時にセットしておいた目覚まし時計が鳴る。布団から手を伸ばしてもなかなか時計を掴めない。それだけ覚醒しているのだろう。稲生清弘は、ようやく時計を探し当ててアラームを停めると、妻の翔子を起こさない…

  16. 綾瀬幻想 歴史奇譚 / 小説

    • 消雲堂
    • 11年前
    • 1,145文字

    小菅とか綾瀬ってさ、面白い街なんだよ。まず東京拘置所があるよね。有名な犯罪者さんたちが、この拘置所に入ったから話は尽きないけど、それはまたにしようね。   ここは江戸時代に治水工事の専…

  17. 「綱淵謙錠さんのこと」 歴史奇譚 / 小説

    • 消雲堂
    • 11年前
    • 1,032文字

    吉村昭先生のほかにも尊敬する時代小説作家がいます。綱淵謙錠さんです。といっても読んだことがあるのは、会津藩の最後を描いた「戊辰落日」と「幕末風塵録」ぐらいです。綱淵さんの本はあまり書籍市場にない…

  18. 千住幻想 吉展地蔵尊 歴史奇譚 / 小説

    • 消雲堂
    • 11年前
    • 1,069文字

    昭和38年(1963)3月31日の夕刻、台東区にある建築業者の長男、村越吉展ちゃん(4歳)が、入谷南公園から忽然と姿を消した。 両親は警察に通報し、捜索が始まった。4月2日の夕刻、男から身代金5…