生死生命論

消雲堂

小説

1,652文字

僕たちは、日々、会社や学校まで電車やバスに乗って通います.これが生死運命の全体像です.始発駅が誕生で到着駅が死です.簡単に書いてしまいますが、まあ我慢してください.人によって通勤通学時間は変わります.家の前が会社や学校の人もいるだろうし、3時間以上かけて通う人もいます.この所用時間が人生時間です.通勤通学場所が家の前の人は生まれてすぐに死ぬ.長い時間をかけて通う人は長生きということになります.

 

ところが僕たちは通勤や通学では本当に死にはしません(途中に事故があって死ぬとか病気で死ぬとかということになると面倒になるのでそれは考えないでいただきたい).何度も何度も生まれては死んでいる訳です.

 

ただ、これは理想的な生死運命の構造ではありません.理想的なのはループになって周回する山手線です.たとえば上野から新宿まで通います.山手線には内周りと外周りがあります.さらに中央線が真ん中を貫いています.それだけではなく地下には数多くの地下鉄が走っています.これらをそれぞれ毎日違う電車や地下鉄で通う...または、これらを組み合わせて上野から新宿まで通うとします...これらがすべて運命選択と言う事になります.

 

脱線しそうなので生死運命だけについて書きたいのですが、脱線してしまうかもしれません.その場合は勘弁してください.申し訳ありませんが、まとまりのない文章から僕の言いたい事を“読み取って”下さい.

 

基本は山手線だけを使って通いましょう.通うのは僕だとします.上野から外回りで新宿まで通います.これが僕の人生です.前述したように始発が誕生で到着が死です.ところが山手線は僕が降車する(死んだ)新宿では止まりません.新大久保、高田馬場と、それぞれ新しい客を乗車・降車させて走り続けるのです.山手線が時間ということになります.山手線はループを描いてぐるぐると永遠に回り続けるのです.つまり降車した僕は死にましたが、死んだ後も時間は不滅なのです.

 

その後も僕は降車駅からから自宅のある始発点まで戻ってきます.つまり死にはしません.一緒に同時間を生きてきた方々から見れば、肉体は滅び、この世から消滅してしまうように見えますが、時間は生きているのです.

 

肉体がなくなれば死ぬんじゃないかって?繰り返しになりますが一緒に同じ時間を過ごしてきた人間から見れば「この道では死んだ」ことになるのですが、山手線=時間はそのまま継続しているのです.

 

無理矢理な感じはありますけど、まだしばらく我慢してください.生死や運命も人生もこれと同じような事です.僕たちは生まれて死にますが、実は本当に死んではいないのです.なぜなら僕たちが生きてきた“道”は残っているからです.道と言うのは山手線のことで、つまり時間のことです.山手線、つまり時間は始まりから終わりまでを何度も繰り返しています.

 

時間の中では考えられるくらい昔...ま、創世記とでも言っておきましょう...から人類の滅亡までループを描いて結びついているのです.本当に存在したのならば卑弥呼だって聖徳太子だって菅原道真も平将門も永遠にループを描いて続く時間の中で息づいているのです.

 

では具体的に申し上げましょう..

 

例えば1957年1月2日に生まれた僕がたった今死ぬとしましょう.命日が今日...2011年6月30日だとすると、この54年間はなくなってしまうのでしょうか? いいえ違います.この54年間は永遠に続くループ状になった時間の中に存在しているのです.生死を肉体がなくなることで存在した時間もこの世から消滅してしまうという考え方が間違っているのです.残念ながら時間を遡ったりすることはできません.ですから肉体が滅べば“死んだ”ことになっているに過ぎません.もし1957年の1月2日に行く事ができれば、そこには僕が生まれることを確認できる事でしょう.

 

つづく

2012年6月30日公開

© 2012 消雲堂

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