シュトラーパゼムの穏やかな午後(3)

シュトラーパゼムの穏やかな午後(第3話)

佐川恭一

小説

11,483文字

CRUNCHNOVELS新人賞特別表彰作品。

 

 

「君もこれでバツイチだな」

ユー・キャン・ドゥ・イット本部長は嬉々として俺に声をかけた。

ユー・キャン・ドゥ・イット本部長はバツイチなのだ。

「いやあ、なかなかうまくいかないものですね」

「うまいくはずがないのさ、違う人間が二人、ずっと一緒にいるなんてことが人間の存在原理に反している」

「そんなものですか」

「そんなものなんだ。大体、人間というのは飽きる生き物だからね。同じ相手とばかり話したりセックスしたりすることには向かないのさ。どんどん違う相手を探さなきゃ枯れてしまうんだ、ホントは。それなのに、この社会は結婚なんて制度に縛られている、結婚しなけりゃ一人前と見てもらえない風潮がある。しかしね、結婚というのは退屈という灼熱地獄に身を投げて、焼け死ぬことだよ。こんなに恐ろしいことが一般にまかり通っているのが不思議でならんね。

その点、HLOは違うんだ。会員の男女比は大体半々になっていて、パートナーを毎回変えることができる。互いの合意は必要だが、年に一週間だけ、誕生日の属する週には絶対的権利が与えられる。つまり、自分のセックスしたいと思う相手を指名すればそれが百パーセントかなうってことだ。会員の中には美しい女も醜い女もいて、大体、同じレベルの男とくっつく。そういう風にできてるんだな、やっぱり。でもそれではあまりに夢がないだろう、この制度は現実社会で憂き目に遭っている者への救済措置でもあるんだよ。

もちろん君が女性に不自由しているだなんてこれっぽっちも思っていないさ、でも、最高ランクの女性を確保できているか、となるとどうかね? ここだけの話、売れっ子の芸能人だってたくさんHLOに入信しているんだ、君がいかに魅力的な男性であったとしても、彼女らを狙い落とすのは非常に難しいところがある。でも誕生日の週ならば、女優やアイドルとセックスすることも可能なんだ」

もちろん俺はユー・キャン・ドゥ・イット本部長の話が終わるより先に、契約書に実印を押していた。こうして俺はHLOの一員となった。ユー・キャン・ドゥ・イット本部長の勧誘が成功したのは初めてのことだった。

 

 

そうか

よかったんじゃないか

それできみが満足ならな

まだ不満があるというなら

それなりの代償を払いたまえ

人生はどこからでもやり直しができる

どこからどのようにでも参入できる

イージー・モードのゲームのようなものですからな

社会は厳しいようでいてまだまだ優しい

私などは「敗者復活」をなくせば

もっとまともな社会になると思いますがね

ここにはチャンスが多すぎる

そうは思いませんか

 

 

銀の矢が脳の中心を貫いて

もうすぐ四日目

俺はもうだめだと言われている

しかし即死するはずが四日も生きたのだから、

もうだめなはずが全然だめではないということもありうる

あてにならんですな

何もかもが

 

 

俺にも今度見せてくれよ

いいよ、減るもんじゃないしさ

いや減るだろ

俺は減らないと思ってる

2015年7月13日公開

作品集『シュトラーパゼムの穏やかな午後』第3話 (全5話)

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© 2015 佐川恭一

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