僕が最初に彼と会った時、彼が生地の良い黒いロングコートを着ていたのをよく覚えている。僕はただちに軽い反感を覚えた。別に黒いロングコートなんて珍しくもないのだけど、その郊外のなんてこともないカフェでは彼の格好はどこか気取りすぎた印象で明らかに浮いていた。年齢不詳の見た目をしていて、最低でも三十代以上だろうというぐらいにしか見当が付かなかった。そして彼の浮かべているやや退屈そうな表情はいかにも周りの連中など相手にしていない感を醸し出していた。さらに悪い事には――彼は僕のいつものお気に入りの席に陣取っていたのだった。
もっとも、今になってみるとそれは一種の羨望だったのかもしれないと思う。その頃の僕は色々なことが上手く行っておらず、自分のことを誰の目にも留まらない無価値で退屈な匿名的存在のような気がしていた。そういう僕の目からすると、ただ居るだけでどこか異質な存在感を放っている彼は疎ましかったのだろう。それは自分もそうありたいと思いつつ結局なれないであろうものだったから。そんな訳だから、一体何がきっかけで彼と話しこむ次第になったのかよく覚えていない。
「今年だけでもう五百万円負けてます」
彼はスロットマシーンの目押しをする動作をしながら、笑ってそう言った。僕はあきれ返って彼の顔を見た。今年、といってもそれはまだぎりぎり秋だった。
「趣味ってものが無いんですよ僕は。やる事がないと時間を持て余してつい行ってしまう。ゲームなんかもやってたけどすぐ飽きちゃうし、スロット打ってる方が面白いんですよね。でも最近はちょっと負けすぎだから少し休もうと思ってて……」
それから彼は、わりと誰でも知っているような有名人の名前を出して、あの人はどこだかの店によくいてたまに話しますよ、結構病的なギャンブル狂ですという話をした。けれど僕は僕の年収以上の額を一年もしないうちにスっておいてそれを平然と話している彼はどういう人間なのかと疑っていて、あまり耳に入らなかった。ふと彼は僕に向き直って言った。
「あなたは何かいつも勉強しているようだけど、弁護士にでもなるの?」
「え? いや、あれは……」
当時鬱屈を抱えていた僕は、何のためという事もなく小難しい本を買い込んでは、そのカフェでノートを広げて読書メモを作りながら読みふけっていたのだった。読書メモなんていうものはやってる感を出すためだけのもので、本の内容もよくわからずさっぱり覚えていないけれど、夜に都心から混んだ電車に揺られこの閑静な郊外まで帰ってきた僕は、せめて形だけでも自分の無内容さに抗いたかったのだ。それをどう説明したものか、あるいはごまかしたものか苦心しながら話してはみたが、彼は興味を持った風ではなかった。
「それは儲かるんですか?」
「いや全然。全然儲かるとかそういうんじゃないです、ただの趣味で」
「ふうん。大変ですねえ」
彼は僕が金にならない事をしているのがいかにも不思議だというように目を丸めた。
***
彼の話をまとめると、彼は資産家の息子で相当な遺産を相続しているらしかった。資産の殖やし方についてレクチャーしてくれた事もあった。まず貯金を作り、それを元手にマンションを買い、やがてそれをまた売って……とかいう話だったが、自分と全く無縁な世界に思えたし、また強がりでも何でもなく言うのだがそういう金儲けにあまり興味が無い自分としてはそれはどうでもいい話だった。僕が興味があったのはまず彼のこういう話は本当なのか、本当だとしたところで彼の精神構造はどうなっているのか、そっちに興味があった。正直に言うと、僕は彼の尻尾を掴みたかったのだ。なーんだ何やらすごそうに見えて所詮はこんな人間じゃないか……そう思える何かを彼から引き出さないうちは何だか不安だったのだ。僕はそんな凡人根性で今思えばずいぶん突っ込んだことも訊いてしまったように思うが、彼の方では、少なくとも表面上は全く無頓着であけすけに話をするのだった。しかし、僕は何が不安だったのだろう?
「失礼ですが今おいくつですか?」
「僕ですか? 二十五、もうすぐ六になります」
「じゃあ全然お若い。実家にお住まいですか?」
「…………」
僕は言葉に詰まってしまった。いまだ実家に住まわせてもらっていることをひどく引け目に思っていたからだった。
「なら、貯金なんてすぐ作れるでしょう。いまの時代、なんか起業始めたっていいし。お父さんは健在ですか? 今おいくつで?」
「ええと、五十五だったかと」
「ならまだまだ元気だ。うちはね、お袋がまだ生きてるんですが、もう前から寝たきりでしてね……正直そろそろポックリ逝って欲しいんだけれども、なかなか……」
「…………」
だいたい彼の話はおかしいではないか。そんな金を持っている男が、スロットだなんて小銭稼ぎに熱中するものだろうか? こないだはひさびさに五万勝てたなんて言ってホクホクしていたし。ただのほら吹き、虚言症かもしれない……
「――なに、職を失うのが不安? だってあなたまだ二十五でしょう? これから金なんていくらでも稼げますよ。僕に言わせりゃ会社をクビになったぐらいで自殺するなんて、あんな馬鹿な話は無いんです。会社なんて大勢社員がいるようだけど、まともな仕事してるのなんかほんのちょっとなんだからね。そんな真面目に悩んじゃいけません」
「けれど仕事が無いことには……」
「どうしても職が見つからないっていうなら失業保険でも生活保護でももらって食いつないでればいいんです。そうしてるうちにまた運が回って来ますから。生活保護みたいなのは貰うのが恥みたいに考える人も多いんだけれども、貰えるものは貰っておきなさい。そういう話をするとお前舐めてるのかって言い出す人もいるんだけれど、自殺なんてしたって何の面当てにもなりゃしないんだから。本当に悪いやつはノーダメージでのうのうと生きてるものですよ。偉い人っていうのはね、本当に汚いんですよ」
なぜか僕は、その『本当に悪いやつ』とは彼なのではないかという気が直観的にした。けれどそれについては黙っていた。
「けど、運なんてそんな簡単に回ってくるものですか?」
「回って来ますよ。僕の知ってる人にいますけれどもね、ホームレスになってから缶集めやって、そこからひと財産築いた人もいますからね。僕自身、リーマンショックの時にヘマして遺産ほとんど消えましたけど、そこから元以上に回復しましたよ。人間、生きてる限りはどうにかして生きてくものです」
「僕にそんな強さはありません。一回どん底に落ちたらきっと自殺しちゃうかもなあ」
「図々しく生きていかないと駄目なんです。これはまた別の知り合いですけどね、奥さんに不倫されて無理心中した人がいましてね。奥さんと子供道連れに、ダムに車で突っ込んで自分だけ生き延びたんです。七年とかの実刑になったはずですが、行儀よくしてたのかなんか知らないけど五年で出てきて、いま普通に生活してますよ。誰も彼の過去の事なんか知りません。人間生きてる限りは生きてるものです」
僕は一度、彼の前でつい弱音を吐いてしまったこともあった。いま思うとそれは自分でも恥ずかしい。弱音を吐いたことが恥ずかしいのではなく、それとなく助けを期待するような――露骨な言い方をするとワンチャンちょっとした金銭の援助なり、それともなにかいい仕事を紹介でもしてもらえないかという卑しい魂胆があったからだ。もっともそれに対して彼は少し目を細め「ふうん。大変ですねえ」と言うだけだったが。
「まあねえ、どういうのが幸せなのかって難しいですからね。例えばほら、――」
彼はそこでまた、誰でも知っているような有名な起業家の名前を出した。
「……僕の大学時代の古い友達ですけどね、あいつなんか僕よりずっと金を持ってるけれどそれが幸せかっていうとわからないですね。彼もやっぱり趣味なんて無いやつで、仕事しか知らないんだから。人生にはもっと大事なことがあるんでしょうけどね」
「何ですか? 大事な事って」
「やっぱり生きてて楽しいんじゃないとね」
僕はやがて読書に、正確には読書するふりをする事に興味を失くした。彼となにか話していた方がよっぽど気がまぎれたからだった。もう僕は彼が虚言症なのだとは思っていなかったが、……きっとサイコパスなのだろうと思うようになっていた。けれどそうだったとしても、どうでもいい。
***
「――あの人といつも何を話してるんですか?」
大学三回生ぐらいの、若木の幹のような腕をした店員さんが僕にコーヒーを渡すときにそう訊いてきた。あの人とはもちろんあのサイコパスの事だ。僕もそうだが彼もやはり毎晩必ず来ているわけではなかったし、こないだは少し旅行に行ってくると言って一週間ぐらい見かけなかったけれど、やはり気になる存在なのだろうか。
「なんか色々謎な人ですよね。こないだの日曜日は僕らと一緒にフットサルしたんですけど……」
「フットサル? へえ? あの人が?」
「はい。昔サッカーやってたと言ってたので、誘ってみたら来てくれたんです。楽しかったですよ。でも何をやってる人なのか今だに誰も知らないんですよ。あの人自分では無職なんだなんて言ってましたけど」
まあ嘘ではないなあ、と思いながら僕はそれと別に半分彼に感嘆し、半分彼を羨んでいた。自分のような陰キャは誘われたとしてもフットサルなんてできはしない。いい歳こいたオッサンでありながら声をかけられて、しかも楽しく若者(まあ、僕だって若者の部類のはずなのだけど……)に混じってフットサルをできるとは。なんだか格の違いみたいなものを見せつけられたような気になった。そして奇妙な、嫉妬に似た感情まで湧いてきたので僕は自分でもすこし戸惑った。俺の方が彼をわかっているんだ、彼を理解できるのは俺なんだ、というような、そんな感情が……
「それで、今日はなんか女の人と来てるんですよ」店員さんは少し声を潜めてそう言った。「こないだは別の人と一緒に来てたんですけどね」
僕は自分のコーヒーを受け取って空いてる席へ向かいつつ、それとなく店内を探してみた。彼は奥まった席でたしかに誰か女の人と二人でなにか話していた。僕はこれまた陰キャムーブ丸出しで無関心を装いつつ、彼らを安全圏から観察できる位置の席に座った。
僕は彼を前にしていつも感じる憂鬱の正体がわかった気がした。僕はずっとこう思っていたのだ、彼はきっと女の子に困ったことなど無いのだろう、どこへ行っても彼に引っかかる女の子がいるような、そういうタイプの男なのだろう、と。きっといつまでも独身生活を謳歌していろんな相手をとっかえひっかえして遊んでいるのだろう……
けれどうんと年下の子でないことだけは好印象だ……
大人っぽくて似合いの年頃の人みたいだ、案外奥さんなんだったりしてな……
おや、なんか雲行きが怪しいぞ……
ひょっとして喧嘩してる……?
やがて相手の女性はうんざりした表情で立ち上がり、出て行こうとしてふと振り返って僕らのサイコパスにこう怒鳴りつけた。
「すかしてんじゃねえよ、私がおちんちん撫でててあげなきゃ眠れないくせに!」
それはまさに雷が落ちたかのようで、店内は一瞬しんとしてしまった。彼女は靴音高くずんずん歩いて出て行った。
あとには茫然と座っている彼と、笑いをこらえている周囲が残った。彼はぼりぼり頭を掻くと、ゆっくり立ち上がって自分も出て行った。僕はただそれを目で追うだけだった。
***
次に会った時、彼は少ししょんぼりしていた。彼がそんな神妙な顔をして落ち込んでいるのが少し可笑しかった。こないだの出来事は恥をかいたようでいて、考えようによってはなかなかクールではないかとさえ僕は思っていたのだが。僕はようやく彼の「尻尾」を掴めたような、今度は自分が彼をいじめてやるターンであるような優越感を感じながら、彼の話に耳を傾けた。
「なんで女というのはこちらの事を何でもかんでも知りたがるんでしょうね。ずっと一緒にいる事になる相手の事だからだっていうんですけど、別に結婚するんでなくたっていいでしょう? なのに結婚できないなら一緒にいる意味がないとか言い出すんですよ。それで最後はあの始末です」
彼は愚痴っぽくこぼした。
「結婚したら結婚したで女ってのはうるさいんだから。僕はもう一度懲りてるんですよ」
「え、結婚してたんですか?」
「とっくに離婚してますけどね。その、前の奥さんにも『私はあなたの家政婦なの?』ってよくガン詰めされたんですけど、何が不満なんだかわからない。当たり前でしょう、結婚したらこっちは経済力全部向こうのために使うんだから、向こうだってそれに見合う働きをしてもらうんじゃないと。今だって彼女の生活費はもちろん子供の養育費だって出してるんですよ。――けどそれでわかったんですが」彼は急に少し生き生きとし出して、「なんかそういう関係が一番いい気がしましてね。お互い深くは干渉せず、別々に住んでというのが一番気楽でいいんじゃないかって。子供もたまに会うぶんには可愛いですけど、子育てなんて僕はとてもできない、すぐ嫌になっちゃうだろうし。向こうからしてもそれが理想的なんじゃないかと思うんですが、ひどいですよ前の奥さんは。やらずぶったくりです」
彼はやや冷めたコーヒーに口をつけて続けた。
「結婚なんかするもんじゃありませんよ。ヤっちゃったら見返り求めてくるような子には気を付けないと。今は仲良くなれば簡単にヤれるんだし、結婚する意味自体わかりませんしね。ところであなたも盛んにヤってますか?」
「いや僕は全然その……そっちの方面の才能は……」
「ためらわずどんどん行きなさい。僕の見るところ、お兄さんは結構いけますよ。あのねえ、人間持ち慣れない金と暇を持つと使い道は女だけなんですよ。たまに出るでしょうそういうスキャンダルが。僕は十代二十代のころにあらかた済ませましたから大丈夫だったけど、ああいうことやらかしちゃう人はなんかこう満足することを知らないんでしょうね。元気だなあと感心します。僕はそこまでの欲望というのは無い。若いころはそりゃそれなりでしたが、その時からめんどくさい女の子ばかりに引っかかっちゃって」
「……面白そうな話ですね」
「いや、何も。僕が初めてだったっていう子がいたんですが、なんか重くってね。重いって体重じゃなくて接して来方が。愛情が重いんですよ。少し距離を取れば気持ちも冷めるだろうと思ったら、何のことは無いひどい淫乱女子だったんですよ。自分が連絡しなくなってから誰彼構わずヤりまくるようになっちゃったって。僕の知り合いともですよ。頭おかしい子だったんでしょうね」
「いや頭おかしいって、それは捨てられたと思って自暴自棄になっちゃったんじゃないんですか?」
「まさか」
そんな発想はまるでなかったらしく、彼は虚を突かれたような表情になって黙った。
僕はそんな彼の様子を見ていて、呆れると言うよりはもはや笑うしかないというのが本当のところだった。今さら彼を非難するような気にもならない。
「ま、まあとにかく――」彼は少し咳き込みつつ言った。「僕はもう新しい奥さんとかそんなのはいりません。むしろね、年取ってくるとやっぱり新しい友達というのができないので、それが少し寂しいですね。金というのはまた稼げますけど、おじさんになると同じおじさんでさえつるみたくない存在になりますから」
「けれどこないだ、お店の人たちとフットサルやったとか聞きましたよ」
「ああ、あれはね。物珍しいおじさんのように思われてるんでしょう。なかなかこう、胸襟を開いて話をできるような友達というのはできません。しかし考えてみりゃ昔からそうでしてね僕は。友達ができないのです」
そりゃそうだろうなあ、と思いながら、そして『胸襟を開く』などという表現が出てきたのに少し驚きながら(脳内で字を変換するのに少しかかった)、僕はようやく彼に人間味のあるところを見つけたように思った。けれどなんだか通俗的でディスアポインティングでもある。僕はむしろ、彼のように俗世に頓着しない飄然とした孤独に安住したいものだと思っているのに……すると彼はふと顔を上げてほほ笑んだ。
「あなたを最初に見た時、この人とはこういう話ができるという気が、なんとなくしたんですよ。いやいや、あなたは気難しそうな顔をしていたし僕とは全然別の世界に生きてるように見えたのに、変な話ですけどね」
僕は意外さに打たれて言葉に詰まった。彼はまたすぐ、なにか別の事を話し出した……
家に帰ってから僕はとりとめなくあれこれ考えてみた。あれはやはり、それとなく自分に友達になってほしいと言ってるのではないかという気がしたのだ。しかしここらで彼とは一線を引いた方が良くはないか? 僕は彼の事をそれとなく同僚に話したとき、同僚に詐欺師かもしれないからカモにされないよう気を付けろと言われたのを思い出した。その時はなんか鼻白んだのだが、たしかに詐欺師に騙されるときというのはこんな感じなのかもしれないと思った。それにしても……彼はサイコパスであるにしろそうではないにしろ、たぶん何か欠けていて人格に問題がありそうなのは間違いない。しかし、だから何だと言うのだろう? 実際のところ、僕は今さら彼と縁を切りたくなどなかった。またコーヒーを飲みながらしょうもない話がしたかった。そう、しょうもない話をするだけなのだ。ならば何も構わないじゃないか。また僕はあのサイコパスとしょうもない話をしに行くんだ。
***
けれどそれは実現しなかった。それからすぐにあのコロナ禍が始まって、一か月以上ものあいだ店が閉まってしまったからだった。やがて落ち着いてきて営業が再開すると僕はすぐにまた行って彼の姿を探した。しかし彼はまるでそれが一つの区切りにでもなったかのように、ぱったりあのカフェに来なくなってしまったのである。あの店員さんにそれとなく訊ねてみたけれど、彼も別に連絡は取っていないようだった。僕は心のどこかでまた彼に会えることを期待していたけれど、とうとうある時点でこれはもう見込みがないなとあきらめが付いた。僕は飽きられたのだろう、と。
友達になっていたりしたら大変だったろうし、厄介なことに巻き込まれたかもしれない。そう考えてこれで良かったんだと自分を納得させようともしたが、なんで自分はもっと彼と深く付き合わなかったろうという後悔は消えなかった。厄介な事になったところでそれはそれでいいじゃないか、これだから自分はいつまでもうだつの上がらない日々を送ることになるんだ……僕は夜な夜な家路を辿りつつ自分を罵った。やがてあの店員さんも大学卒業とともにあの店を辞めてしまった。僕もそれから少しして、とうとう都心の方で一人暮らしを始めた。
こないだ用があって実家に戻ったとき、僕はひさしぶりにあのカフェに寄った。もう見知らぬ店員さんばかりになっていたけどあの時も見かけた常連客の何人かは見かけたように思う。不思議なことにその時でも、彼があの時のまま黒いロングコートをまとっていつでも店に入って来そうな気がした。
僕は閉店時間までぼんやり座って過ごしてみたけれど、彼はやっぱり現れなかった。
A.anji 投稿者 | 2024-01-20 16:24
「本当に悪いやつはノーダメージでのうのうと生きてるものですよ」にグッと来てからすぐ「運が回る」の台詞が続くと、冒頭のスロットマシーン狂が活きて来て、物語に引き込まれました。回る→回復の連想も素敵です。
この先に破滅派の求める何かがあるのかもしれないと思いましたので、暫く研究させていただきます。
河野沢雉 投稿者 | 2024-01-22 15:53
敢えて削らずに投稿したとのことですが、長さを感じずに読めました。
しかし敢えてを言うと、やれば削れたとは思います。
とはいえこの長さでないと出せない雰囲気や人物造形の奥深さがあり、私はそちらを堪能できたことの方が良かったと個人的には思います。
松尾模糊 編集者 | 2024-01-25 09:50
途中で出てくる女性の台詞が一番サイコパスでした。孤独が人を狂わせるのか、孤独への恐怖が人を狂わせるのか、考えました。
曾根崎十三 投稿者 | 2024-01-26 10:54
サイコパスですね! この何となくじんわりずっと違和感があって、距離が詰められそうで詰められない魅力のある人物像が良いと思います。
黒いコートとしか書いてないですが、彼の姿が目に浮かびます。色白で脱毛したみたいに髭が薄くて胡散臭い笑顔をしてるんだろうなと思いました。
今野和人 投稿者 | 2024-01-27 11:38
サイコパスと思われてる人も人生への違和感や寂しさを抱えてるかもしれないという着想が素敵です。スペクトラムという考え方で人を見たいなあと思います。
諏訪靖彦 投稿者 | 2024-01-27 11:39
こういった人間ほど魅力的に見えるんですよね。距離を置いた方がいいんじゃないかと思っていても気になる存在、内に入っていくと怖いなと思うけど遠くに行ってしまうと寂しい、そういうものに わたしはなりたい。
大猫 投稿者 | 2024-01-27 11:47
特に大きな事件も起こらず、カフェでの対話が淡々と続くだけなのですが読ませますね。お金があって育ちが良くて教育もあって、でもどこかずれている、そのずれっぷりの表現が上手くて、どうしようもなく彼に惹かれてしまう心情も丁寧に書かれていて、心静かに「サイコパス的世界」を堪能しました。
「重いって体重じゃなくて」というセリフが好きです。
なんかサイコパスの人が言いそうだよって思いました。
そんなところわざわざ解説しないだろうって。
小林TKG 投稿者 | 2024-01-28 02:21
並びで読んでて、ここくらいまで来てようやく、
「あ、サイコパスって何か持ってる人じゃなくて、持っていない人の話かあ」
って思いました。ああーそうなんだ。やべー私の話そうじゃねえじゃんって。気が付きました。
それはそうと、文字数かっこいいよぉー。うおおおおって思ったよぉー。内容もクールでかっこいいよぉー。
眞山大知 投稿者 | 2024-01-28 08:55
人間として大事なものが欠落してるのにそれに気づかず、自分でもどうすればいいかわからず、孤独に陥る。そんな哀れな人の悲劇を淡々と描きだしていて心にぐっとくるものがありました
春風亭どれみ 投稿者 | 2024-01-28 14:51
サイコな彼がこんなにも饒舌な理由はなんなのだろうとふと考えてしまいました。自己弁護なのか、それとも……。