理性的な天使

応募作品

ヨゴロウザ

小説

6,714文字

Or, “Everybody Wants to Destroy the World”

1.
 天使長は天使ケンチンジルにちびた2Bの鉛筆を手渡してこう言った。
「これをあなたに託します。上帝はわれわれ天使の中であなたこそ最も理性的な者とお考えだからです」
「何ですかこれは?」
「今まで上帝の怒りに触れた街に遣わされた天使は皆これを携えて行きました。彼らのうちある者はこれを使い、ある者は使うことなく戻ってきました。上帝もなるべくなら使うことなく戻ってくることをお望みです」
「ははー、これが例の……なるほどねえ」
 ケンチンジルはそのちびた鉛筆をハナクソでも丸めるようにいじり回してから訊いた。「けれどなぜ私なのでしょう?」
「ケンチンジル、あなたはかねてから上帝のなさり方に疑問を抱いていましたね。上帝はあまりに簡単に人間たちをまとめて処分してしまう、まるで腹を立てた子供が上手く行かない積み木をひっくり返すみたいだ、上帝は本当に人間を愛しているのだろうかと、畏れ多くもそう考えていましたね」
 天使ケンチンジルは無言でごくりと唾を飲み込んだ。天使長は続けた。
「安心なさい、上帝はあなたにお怒りではありません。そうであればこそ今回はあなたをお遣わしになるのです。いいですか、最も理性的な天使であるあなたはこれから異教徒の島国にあるトーキヨの都に降りなさい。そして彼らを滅ぼすのが本当に理にかなっているかよくよく吟味してからその鉛筆を使うかどうか決めなさい。上帝はあなたがそれを決めるようお望みです」
「トーキヨですって? あの街はたしかすでに二度ばかり灰燼に帰したと記憶しておりますが。またやるんですか」
「タイムリミットは十二時間です」天使長はケンチンジルに答えることなく続けた。「朝から夜に至るまでの間、それだけです。その間にあなたは街の人間をよくよく観察しどうするか決めなさい。どちらに決めたにせよ、帰ってからその理由を報告するように」
「十二時間。そんな短い間にそんな重大な事を」
「上帝のご意志を問うことはできません」天使長は声を高めてぴしゃりと言った。「私たちにできるのはただそれに従うこと、その意味を考えることだけです。あなたがどちらを選ぶにせよ、その時あなたは上帝のご意志が常に正しいこと、自分の限られた理性で神意を計ろうとしていた事の浅はかさを知るでしょう。では行ってらしゃい。鉛筆を使う時は、芯の方を下向きにして地面に投げるのですよ」
「天使長、私は思うのですがもし上帝のご意志がすでに決まっているなら……」
 言い切らないうちに天使ケンチンジルは地上にいた。『しかして光が、玻璃琥珀または水晶を照らす時、その入来るより入終るまでの間に些の隙もなきごとく』であった。
  
  
2.  
 さて、そのようなベラボウな任務を帯びた天使が降りてきたとは知る由もないトーキヨの都は、いたって穏やかな朝を迎えていた。いったいこの街に住む誰が、自分たちがいまそんな危機の上に在るなどと想像できただろう。それは平和で平凡で散文的な秋の朝であった。始めも終わりも途切れることもなく続く、嫌になるほど濃密で退屈な日常の一齣である。
 しかしそれは俯瞰的に見ての話であって、実際にその中に生きる人々はそれぞれ大変そうであった。都心では夜明け近く、世界を拒否して大量のブロン錠を齧ってから抱き合って飛び降り自殺した十代のカップルがいて、彼らが路面に残した血の染みを年老いた清掃員が黙々と洗い落としていた。それは人々が周囲にぎっしり詰まった有象無象にうんざりしてこいつら全員死ねばいいのにと考えながら電車に揺られて運ばれてきた時にはすっかり綺麗になっていた。彼らの出て行った家では夫がこのまま帰ってこなければいいのにと願いながら、面倒な家事がひと段落した主婦たちが唯一の楽しみである韓国ドラマを何時間もぶっ続けで鑑賞していた。子供部屋では夕方になってやっと起き出した、いい歳こいて無職の息子たちがSNSや掲示板を活用し、外国人排斥のデマゴギー拡散や「上級国民」批判、息抜きのAnime鑑賞に余念が無かった。それら「上級国民」と呼ばれる層には実際はただの成金や上級でもなんでもない頭脳労働者(大学の非常勤講師やいっこうに芽の出ない小説家志望者といった屑もこれに含まれる)も多かったが、底辺層の無知・無学・無教養および下品さを憎悪していた。娘たちはどうかというと、彼女らは完璧な顔に生まれなかった自分の運命を呪い、体をひさいだ金で顔を造り変えようと努力していた。そしてすでに人生の表舞台を退いた老人たちは、単に使い捨てられただけで何事も人生において成しえなかったという事実を受け入れられず、誰も自分に関心も寄せなければ敬意も払おうとしないのを怒り、そのためますます鼻つまみ者として無駄に長く生き続けていた。要約すると彼らの多くは人生があまり順調ではなく、互いに憎み合っており、実のところ世界の滅亡を望んでいた。しかし実際に自分でそれを実行する力などない無力な畜群もしくは産業廃棄物だったのである。
 天使ケンチンジルは、さすがに天使だけあってごく短い間にこうした彼らの生活を了解した。そして物思いにふけりながら都の路上を歩いていた。
(驚いたことに彼らは世界の滅亡を望んでいる。彼らは皆自分が馬鹿なのではなく周りが馬鹿だと信じて馬鹿のくせに他人を馬鹿にする馬鹿どもだ。救いようがない。どこかから破局が降ったように訪れればそれで自分たちの世界が改善されるなどと考えている。安直だ。安易だ。お望み通りにする事だってできるのだが……)
 しかし理性の天使であるケンチンジルは、この都を滅ぼすに足るほどの理由を見出すことができなかった。彼は人間とはいつの時代もこのようなものであり、その大多数は熱くも冷たくもなく、実ることなき麦粒としての一生を終え、しかし日はまた昇り世界は続くのだと知っていたのである。そして、世界は創造されたその時のまま変わらず善かった。ならばどこに、この都を滅ぼすべきparticularなreasonがあるというのか?
(彼らに必要なのは怒りの鉄槌などではなく、むしろ愛なのではないだろうか? 彼らを苦しめているのは彼ら自身の非寛容に他ならない。彼らはお互いを、さらには同じ人間全体を愛するという事を知らない)ケンチンジルは思索を進めた。(まあでも、これぐらいの事でこの都を滅ぼすことはできない。彼ら自身が実はそれを望んでいるとしてもだ。滅ぼすというほどの悪が不足しているし、またこの都には生ぬるいものであっても充分に善がある。今までの例を見ても、住人のほとんどが悪人であっても一握りの義しい者たちがいるなら、その者たちだけのためにその都市は滅亡を免れたのだ。この都には一握りどころかもっともっといるだろう)
 まだ時間は残っていたが、ケンチンジルの心はすでに決まっていた。トーキヨの都は存続するべきであった。
  
  
3.
 ケンチンジルはいつの間にか、朝早くに飛び降り自殺があった路地まで来ていた。
 彼が通りがかった時、それはすでに夕方であたりは暗くなりはじめていたが、それにまぎれるようにして花束をそっと置き、手を合わせる少年がいた。彼はそれから階段を上り屋上を目指した。ケンチンジルは彼に興味を覚えそっと後を追って自分も屋上に出た。屋上は街の猥雑な光に囲まれていて、それが頭上にがらんと開けた暗さを強調するようだった。少年は二人の墜落した路地をのぞき込んでいた。そこはいかにも狭く暗く、あまり良い死に場所にも思えなかった。
 しばらく様子を見てからケンチンジルがやけに気軽に声をかけた。
「君は二人の知り合いかい? よかったら少し話をしないか」
「…………」
 少年はびっくりしてケンチンジルをふりかえった。ケンチンジルは天上での普段着である白いローブではなく、地上的な黒いスーツを着ていたので、少年は彼をホストかスカウトだろうと考えた。
「こう見えても僕は天使なんだ。君のように優しい心を持った少年に会えて嬉しい。だから、少し君の意見を聞いてみたくてね」
 通常であれば少年はこれは狂人か、どのみちかなり胡散臭いしめんどくさい男と判断して無言で退散するところであった。こんな海外ドラマの吹き替えみたいな喋り方をする人間などまずまともではない。しかし知人の自殺で感傷的になっていたところだったのでつい逃げるタイミングを失ってしまった。
「君はどうして屋上へ来たの?」
 少年ははっとしたような顔をして空を見上げた。
「――実は、二人が最後に見た景色を見てみたかったというか」
「そういう事か。まあなんだね少年、僕が不思議に思うのは――」ケンチンジルはおもむろに語り出した。「放っておいてもこの世での時間はやがて終わるものだ。なのにどうして自分からそれを急ぐのだろう? それがわからなくてね」
「それは、待ちきれないほど嫌だったからでしょう」少年はぽつりと答えた。
「嫌だった。それはこの世界が耐え切れないものだったという事かな」
「さあ、二人が本当に何を考えていたかわかりませんけど。何も考えてなかったのかもしれないし」
「けど君も気持ちはわかるんだね。こんな世界、滅ぼせるなら滅ぼしてしまいたいかい」
「…………」
「こりゃ驚いた! 君もやっぱりそう思う事があるんだ」
「誰でも一回ぐらいあるんじゃないですか。だから代わりに自殺したり」
「そう、自殺すれば少なくとも自分にとっての世界はなくなるように思えるからね。けれどそんな事をしても自分がなくなるだけで、世界の方じゃ何もなかったように平然として在り続けるよ。だから君たちはそれに耐え切れず、代わりに今度は世界をよりよい場所にしようだとかそういう馬鹿げた考えを起こすのさ。そして実行するんだから恐れ入る」
「それは馬鹿げた考えなんですか?」少年は驚いたように顔を上げた。
「馬鹿げてるさ君。いいかい、永遠の中に時間は無い。長い時間のうちに色々な事が起こって色々と変わるように見えるのは誤差の範囲だよ。表面上のささやかな凸凹でしかない。世界は創造されたとき、すでに善かった。という事は永遠不変に善いものとして在り続けるに決まってる。それをどうやってより良くしたりなどできるだろう? それは不可能というより、最初から考え方が間違っているんだ。その間違いに気が付かず、どうも上手く行かないと見るや君たちは今度は正反対の事を考え出す。そもそも生まれるということ、新しい生命を生みだすという点に根本的な間違いがあるんじゃないかと疑いだすんだ。世界の意義を疑い出すんだね。そうじゃないんだよ、間違ってるのは他ならぬ君たちなんだ。世界はいま在るより良くもならなければ、悪くもならない。すべては今在るごとく在り続ける。たとえば今ちょっと歩いてみただけでも、この街の構成人口の七割は特に生きる価値もない糞、二割はややマシなやつら、一割が君のような善い人間だとわかったけど、この街が特別ひどいわけじゃなくて大体こんなものなんだ。世界は圧倒的な量の糞の中に少数の宝石が煌めいているものとして在り続けるだろう。糞はこの世の始まりから終わりまで糞、宝石はこの世の始まりから終わりまで宝石。それが永遠という事の意味さ」
「だったら」少年は少し食ってかかるように言った。「むしろ何のためにそんな世界を存続させなきゃならないって言うんですか」
「その一割の宝石のためにさ。君のような人間のためだ。世界を良い方向にしろ、悪い方向にしろ変えようなんて考えてる連中、あるいはただ現状に満足している群盲に決定的に欠けているもの――それこそが愛なんだ。他ならぬそれこそが、時空の制約を越えて永遠に到達する唯一のそしてもっとも簡単な手段だ。ところが君たちは……」
「そんな事訊いてません。大体何です、愛とかそんな抽象的な話……俺が知りたいのは、そんな無意味な世界がそもそもなんで在るのかという事ですよ。それが勝手にできたにしろ、誰かが作ったにしろ、なんでそんな意味もないもののために俺らが苦労しなきゃならないんですか? そんなの壊せるなら壊すかさっさと出て行くかするのが一番理性的って事になるじゃないですか」
 ケンチンジルは虚を突かれて言葉に詰まった。少年の疑問は本質的であり、それは彼ケンチンジルの力の及ばないところ――すなわち理性の及び得ない領域を突いているのに気付いたのである。完全であり欠けるところとて無い神が何の必要あって世界を創造したというのか? しかも、実際にその中に生きる者らには苦しみである世界を? 「愛するために」か? なぜ神にそれが必要なのか? その理由は、天使である彼といえども知り得ることではなかった。
 少年は興奮気味にさらにまくし立てた。
「あなたは大体いい気なもんだ。天使とか名乗ってたけど、そりゃ天使かなんかのつもりで外から見てケチつけて笑い物にするだけならさぞ面白い見ものでしょうよ。意味なんか無いんだとかそういう御託はいらない。天使なんだったら意味を教えてみろ! あんたによればほとんどが糞しかいないこの世界が在る意味は? 言えないんでしょう、あんたにだってわからないんだ。なら少なくとも自分だけ賢いつもりで無責任な批評するのはやめろ。愛が欠けてるのはあんたじゃないか」
 ここにいたってケンチンジルはくずおれるように、そして敬虔に少年の前に跪いた。
「なんです?」
「君の言う通りだ。僕はいま自分の限界を君によって示された。そう、世界の行方は君たち世界の中に生きるものが決めるべきだ。と言うと何が起ころうとも世界は善きものとして永遠不変であるという、僕の理性が下した判断と矛盾するようだが、君たちの判断も行動もおそらくつねに神意に叶っているのだろう。僕にはもうこれを持っている資格は無い」
 感激して理性に曇りができていたケンチンジルは、事もあろうにあの恐るべき鉛筆を少年の手に握らせたのだった。
「これは君が持っていたまえ。これこそは今までソドムとゴモラをはじめ、数多の都を葬り去ってきたそれと同じ鉛筆なのだ。濃さによって何が起こるか変わるんだけど、これは2Bだから最上級にやばいやつだ。けれど君なら安心さ。君はこれを手の中に持ちながら――つまり使おうと思えばいつでも使えるにもかかわらず、そうしないで愛が君を導くままに生きるだろう。その権利も力も持ちながらそれを行使することを拒み通す! 君たちこそは地の塩なのだ。上帝は君たちに世界を託したのだよ。ではさようなら、時間が来た。僕は天上に戻らないといけない」
 言うが早いかケンチンジルは白いローブをまとった本来の姿に変わり、見えないエレベーターにでも乗っているかのようにするする上昇して夜空に消えて行った。少年はあっけに取られてその後を見送った。いま目にしたところが幻でないなら、彼は狂人ではなく本当に天使であったことになる。それとも、自分は夢を見ていたのだろうか? (そうじゃない。ならこの鉛筆は何だ)少年は手触りで存在を確認するようにちびた鉛筆を撫でてみた。そしてついさっき聞いた話を思い出し、しばし黙考した。今朝彼の友人たちが落ちて行った暗い路地を見た。それから一つ大きく深呼吸をして、鉛筆を握った手を思い切り振り上げた。
  
  
4.
「どうしたのですケンチンジル、なにか不服そうな顔ですね。あなたは立派に任務を終えましたよ」
 天使長はどこか勝ち誇ったような笑みを浮かべながらそう言った。ケンチンジルは無言で目をこすった。
「ああ、まだ目が眩しいのですね。無理もない、あなたがまだ天に昇りきらないうちにあれが炸裂したものだから。トーキヨほどの都を丸々焼き尽くす捧げものにするにはあれぐらい強烈でないとね」
「…………」
「けれど慈悲深き上帝は人間を丸々滅びつくそうとはなさりません。つねにやり直すチャンスを与えておやりになるのです。あの都ひとつが滅んだからといって世界の終わりにはなりません。上帝のご意志はこのように、理性の限界を越えてつねに正しく遂行されるのです。何のためにですって? それがあなたのいけない所なのです、ケンチンジル。語りえないことについては沈黙せねばなりません」天使長は言葉を切ってケンチンジルを見据えた。「今こそあなたにもそれがわかったでしょう」
「はい」
 ケンチンジルは不承不承答えた。
「しばらくゆっくりお休みなさい。このたびのあなたの働きに上帝は満足しておられます」
 天使長はそう言い残して去って行った。ケンチンジルは地上に目をやった。かつてトーキヨの都があった箇所が大きなかさぶたのようになっているのが目に映った。実は目はなんともなかったのである。
 理性的な天使はほっと溜息をついた。

2021年9月18日公開

© 2021 ヨゴロウザ

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"理性的な天使"へのコメント 25

  • 投稿者 | 2021-09-20 05:18

    面白かったです。
    最初こそ、ケンチンジルという名前が気になりましたが、読んでいるうちに気にならなくなりました。前回の合評会提出品とはまた違った。あるいは前回の印象をぶっ潰したいと思って書いたかのような。私としてはそういう印象です。違っていたらすいませんでも、冷静に怒ってるみたいな。面白素敵でした。

    • 投稿者 | 2021-09-21 23:21

      小林様、ご感想ありがとうございます!
      さっそく痛いところを突かれました。天使っぽくてふざけた名前をと思ったのですが、いま見るとどうもいい名前ではないですね。人物の名前は実はかなり重要と思いますので、もっと色々考えるべきだったと反省しています。名前だけでなく、いま読み返してみるとつくづく自分の文章はリズム感もなくひどく下手な文章で嫌になりました。今度からは提出前にもっともっと推敲してからにします。
      前回がたまたま哀しい話になってしまっただけで、本当はこういう路線で行きたく思っております。個人的に今年は気の滅入ることが続いたので、ふざけた可笑しみのあるものを書きたいです。

      著者
  • 投稿者 | 2021-09-20 05:19

    存在か、非存在か、To be, or not to beという人類永遠の疑問ですね。東京は人が多過ぎるから、常にこれが頭に湧いて来る。私みたいにプレイリーの真中で遠くに高速道路しか見えない所に住んでいると、あんまりそういうことは考えない。何年か前に、何年か振りで東京にいたら、電車がとまって、中から何百人もの人が私達の方へ歩いて来て、ほんとに怖かった。東京に住んでる友達に「あんな群衆にいると何かで成功しようと思ってもそれが不可能に感じると思う」と言うと、友達は「人数はいるけどほとんどは大したことないやつなんだよ」と言っていた。

    • 投稿者 | 2021-09-21 23:31

      千本松様、ご感想ありがとうございます。
      言われてみて気付いたのですが、世の行く末を悲観するというのは都市的な発想?なのかもしれませんね。そうした閑静な場所で、語弊のある言い方かもしれませんが異邦人として暮らすというのはそれはそれで哲学的な思索が出てきそうに思いますがそういう訳でもないのでしょうか。
      哲学的な話は、せいぜい大学生ぐらいまで卒業するのが地に足の着いた大人なのかもしれないのですが、わたくしは若い頃はそんな話に興味はなく、むしろ年取るほどにそんな事ばかり考えるようになってしまいました。

      著者
  • 投稿者 | 2021-09-24 02:45

    ケンチンジルが理性的な天使、という伏線が最後にこういう形で回収されるとは予想外でした。参りました。

    • 投稿者 | 2021-09-25 01:11

      鈴木様、ご感想ありがとうございます。
      まあ要するに理性だけで片付くなら世話無いんだ、理性は誤る事もあるんだ、最終的にはそれが及ばないところで動いてるんだ……という話なのですけども、それは別に新味もないしわかりきった話なのですよね。なんかもう一歩踏み込めたなら作品になったのでしょうけれども。精進しますので次回もよろしくお願いします。

      著者
  • 投稿者 | 2021-09-24 11:25

    面白い小説でした。俺、4Bの鉛筆持ってますよ。あと本作とホロコーストの関係については補足がほしいかも(俺の取材不足だとは思うけど)。

    • 投稿者 | 2021-09-24 11:28

      追記。Theじゃなければ問題はないということで理解しました。面白かったです。

      • 投稿者 | 2021-09-25 01:16

        波野様、ご感想ありがとうございます。
        「ホロコースト」の原義にさかのぼって、世の不条理な暴力について書こうと思ったのですが、皆様の御作を読むと自分のこれはこれで逃げだったかなあとも思っております。それなのに今回は他人様の作品に注文ばかり付けてしまったようで恥ずかしく思ってます。拙作を存分にぶっ叩いていただきたいです。

        著者
  • 投稿者 | 2021-09-25 15:36

    面白く読ませて頂きました。上帝はケンチンヂルが鉛筆を使わないことを望んでいるが、上帝は今まで多くの人間をいとも簡単に殺してきた。上帝の意志は絶対であるのになぜ決定を天使に委ねるのか不思議に思いつつ読み進めましたが、最後はやっぱりそうなるのですね。
    それとSSブロン錠を大量に飲めば希死念慮が弱まり幸せな気分にはなります。

    • 投稿者 | 2021-09-26 00:07

      諏訪様、ご感想ありがとうございます。
      実は神自身が生き延びるために人間個々人の活動が必要、つまり神はすべてを決定しているのではなく自身が危機的な生を生きているという考えもあるのですが、そういう神の目的論みたいな事は理性の及ばないこととして今作ではノータッチでした。むしろそれを知り得ないとする事で、突然自分たちに振りかかる不条理な暴力の残酷さを描きたかったのですが、とうてい成功作とはいえないものになりました。精進しますので次回もよろしくお願いします。

      著者
  • 投稿者 | 2021-09-25 22:33

    ケンチンジル(ネーミングが(汗))と少年との問答は、果てしない気分へと誘われます。そもそもなぜこの世界があるのか、神が作ったとしたら何のために?愛のためならばなぜこれほど苦しまねばならないのか。遠藤周作も辿った思考の道は私にはとても歩けそうもないけれど、「こんな街の一つや二つ滅んだところで人間の世界に影響はない」という天使の論法に、まさしく「ホロコースト」の匂いを嗅ぎとりました。

    人間をクソとか安易に分類するよりは、人間が時に良き者であったり、堕落していたり、邪悪な者に変貌したりする有り様に天使が混乱する方がいいなあ。私の好みですけど。

    宝石と見込んだ少年は自爆したんですかね。自己の消滅とこの世の消滅との区別の付かなさっぶりが、いわゆる頭でっかちな若者っぽくて良かったです。

  • 投稿者 | 2021-09-26 00:44

    他者に対する無関心を症候的に描き出している。都市生活者を一面的な類型としてしか認識できていない点、都の存続をよりにもよって厭世家に託してしまう点など、全編を通してケンチンジルには人を見る目がない。上帝が試していたのはケンチンジルの見識であったようにも思えた。「あの」ホロコーストの回避は、歴史に対する無関心から来るものか?

    対話パートが観念的で冗長なので読んでいて鼻白んだ。この話なら4000字に収められる。

    • 投稿者 | 2021-09-26 00:59

      Fujiki様、ご感想ありがとうございます。
      実はこの作品で書きたかったのはまさにその対話パートのみであり、極端なことを言うと他は付け足しのようなものでした。そのためにどうも小説としては味気ない、ただ論理の骨組みだけでできたような構成になっています。精進しますので、次回もよろしくお願いします。

      著者
  • 投稿者 | 2021-09-26 00:44

    大猫様、ご感想ありがとうございます。
    ネタばらしをしますと、実は今作の着想元になったのはヴォルテールの『この世は成り行き任せ』でして、同作の主人公は様々な人間の間を遍歴して、人間はそんな単純なものではないし世の中の仕組みも複雑なのを知って最終的に世界はこのままでいいのだという結論に至るのですが、どのみち我々この世界から出れないのですから、ひたすらにひどい世界でも肯定するべきという前提でこんな書き方にしました。
    ただ、人々を糞だの何だの言うのは天使の目を通してこそ許されることであって、作り話でも同じ人間である自分がそんな事言ってはいけないのですが、地の文の叙述を読み返しますとどうもそのへんのけじめが付いてない、作者自身の言葉のように出てきてるところもあって、本当にあれこれしくじった作品に思います。次回からはもっと推敲を重ねます。
    少年は結局、自分の手で全部ご破算にできる機会を与えられたとき、それを行使してしまったのです。

    著者
  • 投稿者 | 2021-09-26 13:19

    ケンチンジルを飲むたびに天使を思い浮かべることになりそうで怖いです。少年との会話や最後の選択は少年には少し重すぎる気がしたので、青年、限界の来た院生くらいの設定の方がより没入感が出たような気がします。

    • 投稿者 | 2021-09-26 23:51

      松尾様、ご感想ありがとうございます。
      理性に対する感情、観念的な天上の論理に対する「現場の」地上の論理を代表するような人物にできてれば良かったのですが、今作は実にいろいろと雑でした。お目汚しして申し訳なく思います。精進しますので、松尾様が良ければ次回もよろしくお願いします。

      著者
  • 投稿者 | 2021-09-26 14:22

    けんちん汁飲みたくなりました。
    ケンチンジルとけんちん汁に何か由来があるのかしらと読み進めましたが、由来は分からなかったです。
    ホロコーストの原義に基づく話なのかな?と思いました。
    少年の意見は真っ当とも思えますし、彼が良い子でもあの状況なら確実に鉛筆を使うとは思ったので、ケンチンジルは託してるようで実は分かっていて実行を押し付けたのだろうなと感じました。
    あと、あえてぼかしてるんだろうとは思いましたが「鉛筆を使う」のがどんな感じなのかと気になりました。地面に突き刺したら爆発するとか? ちびてて使いにくそう。そして、何で鉛筆なんでしょう? 私はHB派です。

    • 投稿者 | 2021-09-27 00:00

      曾根崎様、ご感想ありがとうございます。
      ホロコーストの原義に基づいて、例えば最愛の息子を理由もわからぬまま犠牲にするよう強いられるような、そういう「不可抗で不条理な暴力」と捉えて書いたのですが、よくよく考えてみますとナチスのホロコーストはむしろその非人間的な機構こそが本質に思えます。その点、曾根崎さんの御作のような作品の方が本質に迫っているように思います。
      細かい設定にはあまり深い意味は無くて、どことなく馬鹿げた感じを出したかったのです。

      著者
  • 編集者 | 2021-09-27 16:17

    他の人が良いことを全て書いてしまった。
    俺は小学生の頃、小学校という小さな社会のレベルながら、「日本」とか「日本人」と言う物を滅ぼしたくて堪らなかったので、そこに偶然こういう天使が来たら爆発させるかもしれない。それくらいにはリアリティのある話だった。

    • 投稿者 | 2021-09-27 23:47

      Juan様、ご感想ありがとうございます。
      副題に付けたように、実は誰もが世界を滅ぼしたい(と思ったことがある)んじゃないかという仮定で書きました。「しょうもねー」「くだらねー」という読後感でありながら、でもまあちょっとは考えさせられるところもあるな、というようなものにしたかったのですが、あまり健康的ではない作品になってしまったようです。精進いたしますので、次回もよろしくお願いします。

      著者
  • 投稿者 | 2021-09-27 18:01

    対話部分、とても良かったです。哲学的な問答を興味深く読みました。「ホロコースト」という言葉をどのように解釈し(どこを本質と捉えるか、など)、それを表現するか、という点で今回のお題は難しかったなとわたしは思っておりますが、その意味で、本作は少々ホロコーストからは距離を感じました。被害の側にとってはまさに不条理な暴力に違いありませんが、加害の側にとっては思想と目的があり、その手段は極めて機械的かつ確率的で、その双方の悲惨さをホロコーストとして私自身の作品では解釈したつもりですが、ホロコーストの前提次第で、またことなる問答があったようにも思いました。

    • 投稿者 | 2021-09-28 00:18

      一希様、ご感想ありがとうございます。
      仰る通り歴史上のホロコーストは突然の天災なのではなく人間に責任のある事で、①被害者②加害者③どちらでもない人(=どちらでもある人)が全て書かれるべきですが、拙作はその原因をなにか不条理なもの、認識を越えたものから来るとしたことで、歴史上のそれに当てはめた場合責任の所在を不問にしてしまう一番駄目なパターンであろうと今では思っています。
      私が一希さんの作品について述べた事ですが、浅い解釈かもしれませんが一希さんの御作は上記のうち③を書かれていると思ったのです。しかしそう書く場合、きっちり主人公をいじめると言いますか、または追い詰めると言いますか、こういうところがこの人間は駄目なんだなというのが浮き彫りになっていなければ、こんな風な反省があるんだから自分はいいですよねというような安易な免罪符的な作品になりかねないという気がしたのです。これ自体が私の浅い、偏った解釈かもしれないとも思いますが、自分は今回一希さんの他の御作も拝読しまして、力量は自分よりずっと上の方だと思っております。そういう方の御作に礼を失し恥をさらすように注文を付けるというのは、決していい加減な気持ちでケチを付けたかったのではなく、ご叱正いただきたいと思ったからです。
      精進しますので、一希さんがよろしければ次回もよろしくお願いいたします。

      著者
  • 投稿者 | 2021-09-27 19:53

    生きることや世界のありようについて考えさせられる会話劇や、かゆい所に手が届くような表現などをおもしろく読ませてもらいました。
    テーマはずれますが「ベルリン・天使の詩」や手塚の「ワンダー・スリー」などを思い出しました。
    たまたま最後に読ませてもらったのですが、今回はお題のせいもあってか厭世的な作品が多く、ボリューム、価値観合わせてとどめを刺されたという気分になっています。

  • 投稿者 | 2021-09-28 00:39

    古戯都様、ご感想ありがとうございます。
    『ワンダー・スリー』は未読でしたが、拙作の元ネタであるヴォルテールの作品にもやはりまた元ネタがあるようですので、古典的な設定なのかもしれませんね。本当は軽い、しかしちょっと毒気のあるコントみたいなものが書ければと思っていましたが、力が足りずどうも読後感の悪い、しかも粗だらけのものになってしまい恥ずかしく思っています。こういうものは書かない方がいいですね。時間が経って見るとなんか鬼面人を驚かそうと変に気張ったものも感じられ、余裕が無い気がします。
    次回はもう少しましなものをお目にかけますので、またよろしくお願いします。

    著者
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