消されえぬ記憶

佐川恭一

小説

1,020文字

イグBFC4という日本最大級の催しがあると聞き、ここ10年ほど1000枚の長編にしようと温めていた構想を3枚に圧縮しました

「鹿かわいー」「鹿せんべい買う?」「てかケバブ食べたい」「えっ奇跡!うちも!」「ケバブどこかなー」「大阪ちゃう?」「大阪行こ!」

 

「来たけど」「なにこれ?淀川?」「ヤバくね?」「ヤバい!」「え待って、めっちゃ刺された」「ムヒあんで」「神!もう帰ろ」「ケバブないもんな」「泳いで帰らん?」「夏っぽい!」

 

「疲れてきたー」「え待って、カップルだらけやん!」「何これ鴨川?」「最悪」「京都まで来とるやん」「誰かケバブ食っとらん?」「食っとらん」「てか彼氏持ちウザ」「死すべし!」「てか女全員檸檬堂飲んどる」「全員?」「全員」「うわマジやん」「うちホワイトホース飲みたい〜」「うちはカティサーク〜」「てか本気でケバブ探そ」「もうちょい泳ぐか」「次バタフライでいくわ」「うちはサイコクラッシャー」

 

「えっ、広!」「何ここ?」「琵琶湖ちゃうん」「琵琶湖?ヤバ」「ほらビアンカ!」「知らんけど。あの船?」「船船」「誰かケバブ食っとらん?」「食っとらんなー」「え待って、今の反町隆史!?」「何が?」「今ボートで横切ったの!反町隆史!」「ウソウソ!?ケバブ食べてた!?」「わからんけどなんか食べてた!」「ヤバ!追いかけよ!」

 

「あれ、反町は?」「わからん」「てかまたカップル」「鴨川やん!」「いつまで檸檬堂飲んどんねん」「もうさあ、撃つわ」「何を?」「トマホーク。千発」「どこに?」「ここに」「死ぬやん!」「もうよくない?」「あかんあかん、いっぺん落ちつこ!」「だって彼氏もおらんし、松嶋菜々子にもなれんし」「確かにうちら彼氏はおらんし、松嶋菜々子にもなれん。でもうちにはあんたが、あんたにはうちがおる。素敵やん?松嶋菜々子の人生にはうちもあんたもおらん。それに絶対、松嶋菜々子には松嶋菜々子の地獄があるんや」「(´;ω;`)ウッ…」「今日の社会ではある種の松嶋的なものが理想として固まってるけど、その凝固はあくまでも時代的特殊性に裏打ちされたものにすぎひん。うちらはそこから脱する身振りをせめてもの抵抗として反復する中で、気づかれんように少しずつ社会の理想を松嶋的なものからうちらの方へ引き寄せる、いわば理想を簒奪していくことによって時代性を変」「ごめん!もう撃った」「南無三!」

 

 数時間後、焼け野原となった京都の河原町周辺には無数の檸檬堂と、「と、いうわけで。」と書かれた看板が静かに転がっていたという。

2023年10月22日公開

© 2023 佐川恭一

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