ある契約

フィフティ・イージー・ピーセス(第23話)

藤城孝輔

小説

2,249文字

作品集『フィフティ・イージー・ピーセス』収録作。

昼休みに職場近くのそば屋に入ると、悪魔がてびちそばを食べていた。

「あいっ、政彦くんね? 久しぶりだねー!」

悪魔と会うのは高校生のころ以来である。酔いつぶれた親父を迎えに行ったスナックで、背中を丸めてカウンター席に腰かけてウイスキーをちびちび飲んでいたのをときどき目にしたことがある。何度か言葉は交わしたものの、よく名前まで憶えていたものだ。

「ああ、はい。ご無沙汰してます」

政吉せいきちさん、元気にしてる?」と、悪魔は親父の名前を口にした。お袋が死んで以来、親父は今でも一人で暮らしている。家を建てたときに団地を引き払って同居しないかと勧めたのだが、一人のほうが気楽でいいと言って聞かなかった。親父の部屋にするつもりで作った和室は物置代わりに使っている。

「ええ、まあ。相変わらず酒とギャンブルが好きなフリムンですよ」

「ははは、ちゃんと顔見せてあげてるね?」

「いや、それもなかなか」

2018年4月29日公開

作品集『フィフティ・イージー・ピーセス』第23話 (全50話)

フィフティ・イージー・ピーセス

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© 2018 藤城孝輔

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