奇人狩り

フィフティ・イージー・ピーセス(第19話)

藤城孝輔

小説

2,307文字

作品集『フィフティ・イージー・ピーセス』収録作。

「化け物と呼びたければ呼ぶがいい。お前たちに何と言われようと知ったことか!」

そう叫んだ直後、音楽教師は胸に散弾銃の弾を受けて絶命した。

私の村には奇人狩りの風習が残っている。村人はよそ者を注意深く観察し、奇人かどうかを確かめる。誰かの報告を受けて奇人が入り込んでいると判断が下ると、男衆を集めて対象となる人物を排除する。これは村の秩序を保ち、それぞれの家が代々守ってきた先祖の位牌が汚れた血筋に渡らないようにするための古い伝統である。村の中学校に赴任してきた音楽教師が奇人狩りの標的になったのは、彼が秋休みに男性の恋人を呼び寄せたところを目撃されたためである。村に報告したのは彼の生徒の一人だった。

生きかたの違う人間や、宗教や価値観が異なる相手を村は奇人のレッテルを貼って排除してきた。誰もが血なまぐさい秘密を共有し、互いの言動を監視しあう。私は高校を卒業したらすぐにオーストラリアに留学することを心に決めて準備を進めていた。両親には反対されたが、もちろん私に躊躇は一切なかった。一刻も早くこの醜悪な村から逃げ出したかったのだ。

シドニーの語学学校で私はショーンに出会った。ショーンは英語名で中国語の名前は英雄インション。上海出身である。上級クラスに配属されたアジア人は私とショーンの二人だけだったので、自然と一緒におしゃべりをしたりチャイナタウンに出かけて食事したりする仲になった。週末には映画を観に行った。古い作品や外国の作品を専門に上映する映画館である。まだ英語圏の映画の内容が完璧に聞き取れない私に気を遣ってか、英語字幕がつくアジアやヨーロッパの映画や日本映画によく誘ってくれた。

2018年4月29日公開

作品集『フィフティ・イージー・ピーセス』第19話 (全50話)

フィフティ・イージー・ピーセス

フィフティ・イージー・ピーセスの全文は電子書籍でご覧頂けます。 続きはAmazonでご利用ください。

Amazonへ行く
© 2018 藤城孝輔

読み終えたらレビューしてください

リストに追加する

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 短編集として公開したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

あなたの反応

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

作品の知性

作品の完成度

作品の構成

作品から得た感情

作品を読んで

作者の印象


この作品にはまだレビューがありません。ぜひレビューを残してください。

破滅チャートとは

この機能は廃止予定です。

タグ

この投稿にはまだ誰もタグをつけていません。ぜひ最初のタグをつけてください!

タグをつける

タグ付け機能は会員限定です。ログインまたは新規登録をしてください。

作者がつけたタグ

ホラー

"奇人狩り"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る