無道

合評会2016年12月応募作品

Juan.B

小説

8,439文字

※2016年12月合評会参加作品。

~1~

 

 

「……」

 

私は13階建てのビルの屋上から、金網を挟んで街を見下ろしていた。この商業ビルの屋上にはクレープ屋やたこ焼き屋等の屋台とベンチが並び、学生だのカップルだのが思い思いに過ごしている。隅には自動販売機や所謂ガチャガチャの筐体が並んでいる。ここで誰か連れ合いが居ないのは私だけだろう。

 

「アハハ……フフフ……」

 

後ろから聞こえる嬌声に振り向かず、私はただこの街の隅々を眺めていた。そう遠くない場所に駅がある。その近辺には交番がある。交番があれば警官が居る……。私はいつもの思考パターンに入ってしまった事を自覚し、頭を振った。

 

「おかーさん、ガチャガチャやりたい、あのウルトラマン子のガチャガチャ」

「ゆーくんダメでしょ、昨日もしたでしょ」

「やりたいやりたいやりたいヤリたいヤリたいヤリたいヤリダイヤリダイヤリダイ……」

「ダメ!」

「ビイイイイイイイ」

 

後ろで、母親に叱られた子供が泣き出した事を機に、私は飲み終わったソフトドリンクの紙コップを潰し、屋上から出る事にした。私には今何もする事は無い。何も……。

 

 

~2~

 

 

しばらく歩いて、自宅のアパートの前まで来ると、一人の老人が下の階の廊下にいるのが見えた。

 

「おやおや、いまお帰りですか」

「はい」

 

この老婆らしき何かはまだそれほど寒くない昼間なのにかなり厚着し、カートに身を任せるように猫背の姿勢になっていた。綺麗な銀色の髪をして、眼には薄く曇ったメガネをかけていて顔がよく見えない。かなり前からここに住んでいる様なのだが、顔を見る様になったのはここ一、二ヶ月の事だった。ただ、私はあまり人付き合いに積極的ではなく、この老婆とも挨拶以上の会話は殆どした事が無い。

 

「……」

「……」

「いやあ、本当に、私の死んだ息子に似てるねえ……」

「は、はあ」

「いやいや、すみませんねえ、こんな気持ちの悪いこと言っちゃってえ」

「いや、気にしないで下さい……」

 

私は自分の部屋番号のポストを確認しながら何気なくそう答えたが、死と言うイメージが急に膨らんできた。そしてどうして良いか分からず、どうでも良さそうな言葉が出た。

 

「息子さんが居たんですか」

「ええ……もう幾つになるかなあ……まあ前ですよ」

「今はお一人でお住まい……」

「そう……ちょっと前まで入院してましてねえ、でもまあ追い出される様に退院してまたここに居るんですよ」

「ああ、その、お大事に」

「どうもありがとう……ああ最近の若い人はいいねえ」

 

私は適当に会釈しながらどうにか二階へ上がり自分の部屋に入った。

 

 

~3~

 

 

夕方、私はアパートの一室に寝転がっていた。電気は付けていないが、アパートの二階で夕日が差し込んで来るので暗くは無い。ちょうど、机の上に飾ってある、ガラスの写真入れに夕日がきらめいた。何枚か写真が飾ってあるが、その内一枚だけは伏せてある。かといって取り払う気も無い。起す気も無いが。

 

「……」

 

おもむろに、古いブラウン管式のテレビの電源を入れると、警察官が何やら動き回っている映像が映っていた。

 

『1974年に警察官3名、1978年に警官1名と非番であった自衛官及びその家族計9名を殺害し現在も逃亡中と見られる菊池斬(現在推定60代)。警視庁は未だ菊池が生存しているとの見方を崩していませんでしたが、昨日、長野県に於いて菊池斬が数ヶ月前まで潜伏していたと見られる山荘が発見され……』

『山荘発見に至る経緯は明かされていないものの、物的証拠などからここに潜伏していたことは確実視されており、警察は引き続き捜査を……』

 

粗末そうな山荘から、警官達の数に対してあまり多くはなさそうなダンボールが運び出されている。PC-9801と思しき古いパソコンもそのまま運び出されている。そうかと思うと次に、菊池斬の似顔絵が映し出された。私はチャンネルを変えた。

 

『さて、時代の主役が貴族から武士へ移り変わる頃、民衆の暮らしはどの様な物だったのでしょうか?……説話から、当時の社会を垣間見てみる事にしましょう。』

 

宇治拾遺物語にある、京童たちと検非違使忠明の話や、河原者の話が始まった。私はまたチャンネルを変えた。何も見るべきものがない。最終的にNHK教育テレビの無難な番組に変わった。

 

『皆さんのご家庭では性教育はどうなさっていますか?……はい、先輩ママの橋本さん』

『ウチは、息子が二歳のときに、お風呂で一緒に性器の部位を確かめ合い始めたんです、ここが陰核でここが膣で……って、それを高校三年の秋までずっと繰り返しました』

 

 

~4~

 

 

二条天皇の時代、京の河原者の中で諸芸を極めその名を知られた……筈の人物がいた。名前は仁某と言う。田楽、猿まわし、蹴鞠に猿楽と、何にでも才能を発揮していた。ある人々は貴族の落胤ではないか、あるいは北宋の徽宗皇帝の筋の子ではないかとまで言われたが、本当のことは誰も知らない。

 

「それだけか」

「とんでもない」

 

仁某はその諸芸で身を成し河原者の中でも非常に慕われ、上から下から賞賛を得、百人の手下がいた。しかしその身分だけはどうにもならなかった。ある日、様々なものが転がってはいるが粗末な仁某の小屋に、朝廷から使いが来た。蹴鞠の腕が貴族たちの耳に届いて、上覧の名誉を賜る事になった。

 

天皇や貴族たちが見守る前で、仁某は見事な蹴鞠の腕前を披露した。

 

「さて、どうなったのだ」

「はい」

 

蹴鞠の腕には貴族たちは感心したが、今度は予定にも無い、天皇と上皇の治世を称える歌を詠むよう仁某を脅迫した。仁某は虚栄を嫌って一度は断ったが、強制され続けとうとう詠むことになった。仁某は普段めったに憤らない人だったが、この時は瞳だけを怒らせたと言う。

 

一首は、生きる為に”罪””穢れ”を負う人々への同情の歌。一首は、禁中で様々な迷信に耽っている貴族を笑う歌。そして一首は身分制度を吹き飛ばす痛快な歌。今はどれも残っていない。

 

しかし、仁某が思っていたより、権力者達の性根は醜く歪み腐っていた。

 

全て歌い終わってしばらくしたとき、貴族達はお歯黒も溶けんばかりに顔を真っ赤にし、控えていた女官たちはかすかに悲鳴らしき声を上げながらヘナヘナ座り込み、御簾の向こうの天皇は笏を取り落としてそのまま完全に固まった。あまりにも不敬なのでこのことは何の公の記録にも残されなかった。

 

「ああ、歌が残っていないのが、本当に、本当に……いや、求めるのは止めよう」

「……はい」

 

仁某は捕らえられ、貴族たちの圧力により京の外れに連れ去られて拷問を受けた。二度と蹴鞠が出来ないように片足を指から一本一本、しまいには膝から斬られた。次に片腕も同じ様に斬られた。次に、顔に熱い火箸などを突きつけられ、その顔を傷つけられ、しかし目は潰されなかった。貴族達は彼の目の前に鏡を置いて自分の崩れた顔を見させた。そして次に毒を飲ませて声を潰そうとした時、突風が起き、拷問小屋が潰れて、不思議にも仁某だけが生き残った。彼は片手片足で這い出て京をうろついたが、もう誰も仁某と気付かず気味悪がった。

 

しかし彼が羅生門の下である歌を読むと、百人いた手下の内の誰かが彼だと気付き、ようやく仁某だと分かった。だがもう手下たちは散り散りになり、仁某も芸が出来なくなり、わずかに彼を慕って残った4人の手下を連れて丹波へ逃げた。だが仁某は義手義足を使った術を身に付け、すぐに京に戻った。満面の、いや狂った様な笑みの能面を付け、金の仕込み義手と仕込み義足を付け、権力と言う権力を呪い、傷つけ、殺す為だけに働き始めた。彼は諸芸を出来なくなった代わりに、権力を殺す「芸」を編み出した。

 

「それが……『無道』なのだ」

「……」

「武士が『武士道』などと言うもの、貴族が『風雅』『花鳥風月』『古今伝授』などと言うもの、あるいは茶道、華道、柔術から出た柔道、剣道……と言うものがある」

「……はい」

「日本人は何でも道にすると言われるが、『道の無き道』が無道なのだ……無道は政治思想とは趣きが違うし、あるいはそれを通して有益な精神を編み出すと言うものでもない……どこまでも『芸』、スポーツなのだよ」

「……」

「一見空虚にも見えるこの姿勢に、耐えられるかどうかだ」

 

武士や貴族や検非違使や徴税人や何やら、世闇に紛れて手当たり次第殺し始めた。権力は死因を偽ったり鬼や魑魅魍魎、崇徳の怨霊のせいだといってこれを隠した。本当は仁某の仕業だと知っていたかも知れないが、一度存在を消したからにはそれを認めることは出来ない。何より、仁某は誰にも捕まらなかった。

 

仁某は弟子に技を伝えた。そして無道を象徴する”狂笑の面”を一番弟子の神滅丸に渡し、この面は代々無道の象徴となった。

 

「神滅丸から羅殺、屑吉、仏滅三郎、陰、甚左衛門、半兵衛、傷太郎……」

「ああ、良い、とても良い名前だ、まあ大よそ祖師達は可愛げのある名前を名乗ったのだよ、もちろんそれを残す場は無くてもな」

 

無道は時代に合わせ影に潜み、いつの時代も権力をただ無惨に傷付け、犯し、殺してきた。危機も無かった訳ではない。少数精鋭を誇っても、脱落者が出た事もある。

 

「それでも無道が判明せずにきたのは……無道には関わる者全てに呪いの様なものをかけるからだろうな」

「?」

「ふむ、いずれ分かるさ、さあどうなった」

 

江戸時代には組織を東西に分け日本各地の藩に無差別な攻撃を加えた。しかし明治維新以来、高度になっていく国家の武装、監視・統制社会化、広がっていく世界に無道は活躍の場が減ってしまった。社会主義や無政府主義と言ったもっと”社会に対して有益な、抵抗思想”が日本に伝わった事で無道の基礎が崩されたことも一因である。無道の実践者はそれでも戦いを続けたが、ある者は召集先で上官を密かに殺しつつ戦死し、ある者は官吏を道連れに事故に見せかけ爆死し、ある者は単にどこかへ消え去った。そして日本が敗戦した時、無道を引き継いだ者はただ一人だった。

 

「ふむ」

「……私が知る歴史はこの通りです」

「良い……最後のその一人、それが私の師だった……そして今、お前がいる」

「はい」

「今、お前は秘儀を果たす時だ」

「……」

「ゆめゆめ、忘れるなよ」

 

男は小屋のカーテンを開けた。と言っても強い光が差し込んできたりする訳ではない。ただ月明かりがぼんやり光っている。男は……あの狂笑の面を付け、窓からそのまま外に出て行った。冷たい、信州の風が吹き込む中、青年は一人佇む。深呼吸の息だけが響いている。

 

 

~5~

 

 

「……」

 

アルバイトの帰り、私は夜道を一人歩いていた。アパートまでもう近い。今日の日雇いは特別に重労働だった。すぐに寝たい気分を抑えながら、薄寒い道を進んでいたその時、急に音もなく赤いランプが見えてきた。パトカーだ。それは私の前で止まった。

 

「そこの人、ちょっと……」

 

警官を見ると血が逆立つ。警官を……。私は平然と立ち止まった。

 

「お兄さん、ご苦労さんです……ちょっと良いですか、お荷物見せてもらって」

「いや、あんた方に見せるものは無い、家が近くなので失礼」

「こちらも仕事なんでね、その、職質に協力してもらって……」

 

パトカーから警官が急いで降りてきて、私の行く道に沿おうとした。私の頭の中で何かが逆立っているが、理性とか前頭葉とでも言うべきものがそれを必死に抑え付けている。

 

「あのね、お兄さんみたいな人が夜道を歩いていると、やはりこちらとしては」

「お兄さんて俺か、”俺みたいな”、とは何だ」

「まあその言葉のアヤはおいといてね、その、荷物見せてもらうだけで」

「職質に答える義務なんか無いんだ」

「まあそう言う人もいるが、こちらとしては治安のね、その」

 

警官。警官。警官。

 

「邪魔をするな、俺の家は近いんだ」

「そのねえ、あの、じゃあ家までお伺いしても、だからね、あの、荷物を……」

 

私はどうにかなりそうだった。

 

警官を見ると本当に血が逆立つ。警官を殺したい。警官をグチャグチャにして川にでも放り込むと面白そうだ。婦警は強姦すると良いだろう。警官の家族も殺すと尚良い。自衛官もだ。消防士も場合によってはそうだ。税務署もぶち壊した方が良い。権力の名によって立った建物は全て公衆便所の様に扱うべきだ。うるさい奴らはみんな殺……。

 

「やはり応じてもらえないならこちらも貴方を不審人物として相応に……」

 

その時、パトカーの中からもう一人の警官が何かを言ってきた。

 

「両津先輩、どうも、その、無線が変なんです、繋がらないんです、ノイズが酷くて」

「何、繋がらないってどういう事だよてめえ、優秀な警察無線が繋がらねえわけねえだろバカ」

「でも報告は」

「そんなのは後でいいんだよ、このアホ、お前みたいなののせいで成績が落ちるんだよ」

 

警官は後輩らしき人物に対して暴言を吐きながら、私に振り向くとニタニタ面をして、私のリュックをやんわり触りながら何かを言ってくる。だがその時、また別の人物が前から現れた。

 

「おや、まあ」

 

下の階の老婆だった。

 

「どうされたんですか」

「……」

「おばあさん、あっち行ってなさい、ね」

 

警官は老婆を追い払おうとしているが、老婆は何も聞いていないように過ごしている。

 

「おまわりさん、あんまり弱いものいじめは良くないですよ」

「……これは弱いものいじめではなくて職質なんだよ、ほら、徘徊してるのか、おうちに帰りなさい」

「最近のおまわりさんはあまり老人に優しくないですねえ」

「……このババア……お婆さん、もう一度言いますよ、帰りなさい」

「やれやれ」

 

その時、老婆はキュルキュルとカートを押しながら振り返って去っていった。

 

「やっと行った……さて君はングッ」

 

次の瞬間、警官の首に何かのコードが巻きつき、警官は引きずり倒された。

 

「先輩ッ……!」

 

飛び出てきた若い警官の喉と額の二箇所に深々とヤスリの様なものが突き刺さった。

 

「ギャッ……」

 

私は呆気にとられていた。こんなことが出来るのは……。急のことに反応できない私を、闇の中から太い腕が掴み、物凄い力で私を引っ張った。

 

「ああああッ」

 

私の顔は塞がれ、気が動転している私はどうにも出来ない。

 

「……!」

 

普段の私なら抵抗出来る筈なのだが、どうにもこの力には逆らえない!

 

 

~6~

 

 

しばらくして顔の覆いが外された。私は縛られている。見回すと、私の部屋に似ているが、物の配置が違う。……同じアパートの別の部屋だろうか?

 

「どうして逃げた」

「!」

 

私の前には、あの菊池斬が居た。斬は老婆に化けていたのだ。何らおかしみの無い普通の壮年の顔なのだが……瞳だけが異常に輝いている。

 

「……」

「もう一度聞く、なぜ私と、無道から逃げた」

「……」

「お前がこの数ヶ月何もしなかった事は知っている」

「……」

「密告しなかった事もな」

「!」

 

驚いた私の顔を見て、斬は薄笑いの顔を浮かべた。

 

「最近のニュースを見て私がどうにかなると思ったかね?……今頃私の使っていたものを弄くった警官達は爆死しているだろう、あの古いパソコンとかな」

「……自分で招きよせたのか」

「ああ、しばらく殺していなかったからな」

「……」

「お前も今回のことで権力の汚さが分かっただろう」

「……こんな事くらいでは、貴方の元に返ろうとは思わない」

「フフフ、無道に関わった物は皆、離れられない……そう言った筈だ」

「……」

 

斬は私の前に鏡を置いた。

 

「ではその顔に問え、権力はお前を愛するかとな」

「……!」

 

私の褐色の肌。私の角ばった顔。

 

「政治はお前を救わない」

「”芸”で権力と戦い続けられると……」

「虚無に見えるか……?」

「ああ」

「”無道”には始まりも終わりもない……」

 

鏡の中の私の顔がなぜか別の意思を持って喋りかけている様に思えてきた。だが斬は鏡を伏せた。

 

「過去、無道から逃げた者は皆、お前みたいな具合だったのだろう……密告しなかったのは、突拍子が無さすぎるからか、きちがい扱いされるかだからかなあ」

「まあな」

「ふん……今のお前に何が出来る、無道から逃げて、では政治や宗教などに求めてお前の何が達成される……」

「……」

「無道に戻れ……お前の過去は癒されない、お前の未来は暗い、だから無道に戻れ」

 

私は前のめりになり、嗚咽した。

 

「ううう……」

「お前はもう無道の縁からは逃れられないのだ」

「……!」

 

見上げると、斬は狂笑の面を付けていた。

 

「権力に交わるやつを殺した後この面を付けると、本当に気分が良い」

「……」

「格闘技では、単に相手を倒すだけでなく、美しく倒せるか問われることもある……無道はそうだ」

 

面の瞳は私をじっくり見据えている。

 

「明治以来、人間のあり方が多様になりまた権力の形が多様になって以来……むしろ私たちの仲間は消えていった」

「うう……」

「それを過ちと言うかどうかなど……そもそも私とお前以外にもう何も知る人物は居ないが、誰が決められる?」

「……」

「社会主義や無政府主義とも我々は違うのだ……まあ、無道は、一番破滅的な無政府主義者に似ていると言えばそう言えなくもない……だがそんなものが芽生える前から……仁某以来、九百年この道は常に一貫していた……生きて権力を殺し続ける、だけだ」

 

瞳が赤く光った。

 

「この爽快は、芸、スポーツならではだ……政治ではない、宗教でもない、この道がだ、この道だよ!永遠の宇宙の中で権力と戦う!……これ以上何の意味を求める?さあ!」

「……師よ!」

「……弟子よ」

 

私は頭を上げた。斬は私の頭に掌を合わせた。私は立ち返ったのだ。

 

 

~7~

 

 

通学路を一番乗りした、小学生の登校班の一団が、いつもの大通りの交差点まで来た。

 

「いつもの交通指導のおばさんいないよ」

「いいよ、青だしわたっちゃおうよ」

「……」

 

最後尾の一年生の女児が、ミラーポールに赤いペンキらしき液が垂れているのを見つけた。女児は上を見上げた。

 

「あっ、ねえ、あそこにいるよ、たかいたかーい」

 

交通指導の婦警の生首が天辺に突き刺さっていた。

 

 

 

 

 

『東京都板橋区で、警官二名が何者かに殺害され……』

『交通指導のおばさんとして十五年間勤務していた有名な婦警が何者かに……』

『警視庁女子寮に侵入者があり、計三名の婦警が強姦致死……』

『一日署長として勤務する予定だったアイドルの松駄精子さんが、乱暴された姿で公衆便所に放置されているのを……』

『朝霞駐屯地の兵舎で爆発が起き、八名の自衛官が死亡……』

 

(終)

 

 

16日深夜急いで追記す

 

文字数が超過している?

これには深い訳が……そう、ニ条天皇の時代……フリーメイソンが……

 

なんてことはなく、単に文字数規定を全く知らずにポカしただけである。別に学生時代のジョージ・ルーカスみたいにわざと意味があって破ったりふざけて破った訳ではない。瀧上ルーシーさんに指摘されるまで全く気付かなかった。ありがとうルーシーさん。ライナスによろしく。

 

わかった、今回の三万円は諦めよう。評価が真っ赤になるのも仕方がない。俺はアカだしな。だが、せっかく出したのでこのままにする。どんなに立派な車でもガスは出る。どんな住み心地の良い街でもゴミは出る。俺の作品は合評会にとってのそう言う存在になろう(?)。

じゃ、合評会、楽しみにしてるぜ。

2016年12月16日公開

© 2016 Juan.B

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"無道"へのコメント 4

  • ゲスト | 2016-12-16 01:42

    退会したユーザーのコメントは表示されません。
    ※管理者と投稿者には表示されます。

    • 編集者 | 2016-12-16 03:13

      (合評会の作品でコメント返しするのは考えていなかったが、特別にここにも書きます)

      16日深夜急いで追記す

      文字数が超過している?
      これには深い訳が……そう、ニ条天皇の時代……フリーメイソンが……

      なんてことはなく、単に文字数規定を全く知らずにポカしただけである。別に学生時代のジョージ・ルーカスみたいにわざと意味があって破った訳ではない。瀧上ルーシーさんに指摘されるまで全く気付かなかった。ありがとうルーシーさん。ライナスによろしく。

      わかった、今回の三万円は諦めよう。評価が真っ赤になるのも仕方がない。俺はアカだしな。だが、せっかく出したのでこのままにする。どんなに立派な車でもガスは出る。どんな住み心地の良い街でもゴミは出る。俺の作品は合評会にとってのそう言う存在になろう(?)。
      じゃ、合評会、楽しみにしてるぜ。

      著者
  • 投稿者 | 2016-12-17 11:49

    伏せられた写真に象徴される抑圧された心理状態から自己認識と覚醒に至るまでの経緯が面白く読めました。「私」の中で連想が特定の方向に広がりやすいという伏線があった上で、平安時代の河原者を扱ったテレビ番組から三人称で語られる第4節につながる連想的な物語の展開は特にわくわくしました。第4節における会話文の使い方もいい。破天荒な字数超過や「上を見上げた」のような雑な表現は問題ですが、内容そのものには好感が持てます。

  • 投稿者 | 2016-12-22 12:43

    この作品はドラマや映画のようだった。映画化してほしいと思わせる魅力がある。。それと同時に、文章には雰囲気といかニュアンスというか、そういうものが弱く、やや説明的な印象がした。役者の演技や映画監督の演出がそういった雰囲気やニュアンスを補うことにより完璧な形で成立する作品だ。小説単体としては、もしかしたら若干脆いのかもしれない。
    声優さんに実写で演技をしてもらって、石原慎太郎が演出をしたものを観てみたい。星4つ。

    余談だが、字数に関しては①当初編集会議で「上限なし」にすると決定、②そのまま合評会があるかないかわからないまま予定の締切日を過ぎる、③その後に「延期」と「新たに字数に上限を設ける」ことを発表、という流れである。このプロセスでは、最初に予定した締切日前に書いたりプロットを作った投稿者はどうなるんだ、という問題が生じる。だから私は今回に関しては、字数上限を過ぎているこの作品を、その理由で不利には扱わなかった。

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