「第23回女による女のためのR-18文学賞」大賞に広瀬りんご「息子の自立」(応募時ペンネーム:広瀬苹果)、友近賞に神敦子「君の無様はとるにたらない」が選ばれた。

 窪美澄、町田そのこ、宮島未奈らを輩出した公募の新人賞。募集する作品を「書き手の感性を生かした小説」と定め、応募は女性に限定している。新潮社社内の女性編集者らによる一次~三次選考を行なったのち、最終候補作品の中から受賞作を選出。また、タレントの友近が一人で選考する「友近賞」も設けている。

 選考委員の窪美澄、東村アキコ、柚木麻子による選考会が行われ、応募総数798作品の中から受賞作を決定した。

 広瀬りんご(応募時ペンネーム:広瀬苹果)は福岡県出身。関東在住。おもにWEB上で作品を発表。pixiv内で数度受賞。

 「息子の自立」のあらすじは、ぎっくり腰をわずらった曜子は、突如として難題に直面する。障碍をもつ息子の性処理をどうしたらよいのか――。障碍者専用の派遣風俗店のウェブサイトにアクセスし、21歳の風俗嬢に来訪を依頼するが……。読む者の心に風穴を開ける、繊細かつ力強い大賞受賞作。

 神敦子(じん・あつこ)は1977年生まれ、神戸市出身。青山学院大学卒。情報誌・専門書の編集を経て、現在は教材等の執筆・校正。

 「君の無様はとるにたらない」のあらすじは、高校生の瑠璃は、十歳のときに離婚して家を出た父親から、会うたびに五万円を手渡されている。四百万を優に超えた「ヨゴレの金」をどうしたらよいのか――。友人の唯織に相談し、瑠璃が下した決断とは。割り切れない思いを乗り越えようとする少女たちの姿が胸を打つ友近賞受賞作。

 障碍をもつ息子の性について描かれた「息子の自立」には、「このテーマで描く、と決めた書き手の胆力、勇気にまず拍手を送りたい」(窪美澄)、「自分の既成概念が気持ちよく壊されていく感覚で、それがすごく良かったです」(東村アキコ)、「当事者を物語の中で消費しない、という意識を随所に感じます」(柚木麻子)と、選考委員からの高い評価が集まった。

 「君の無様はとるにたりない」は、友近から「最後の長いセリフを読んでいるとき、自分でも予想外に、読み進める手が止まり、突然涙が溢れました」と絶賛された。

 贈呈式は5月27日に都内で行なわれる。

 なお受賞作、受賞のことば、ならびに選考委員による選評は、4月22日発売の「小説新潮」5月号に掲載される。