アメリカの電子書籍売上がピークアウトしたという報道は2015年から各所でなされていたが、その詳細な理由について「なぜ電子書籍の売上が落ちているのか」(小山猛)では、コーデックス・グループの行った書籍購買者の購買傾向調査を紹介している。

  1. 2015年の電子書籍マーケットシェアは前年23%から20%に下落。
  2. 書籍購入者4992人中電子書籍購入者は前年35.9%から32.4%まで減少。
  3. 環境自体が激変した音楽業界(CDからMP3、ストリーミング)と異なり、電子書籍閲覧環境は読書のための選択肢の一つでしかない。
  4. 読者、特に若い世代には「デジタル疲れ」の兆候が見られ、スクリーンを見る時間を減らしたいと考えている。

他にも端末ごとの電子書籍閲覧時間の違いなど、興味深いデータもあるため、興味のある方は『出版ニュース』を手にとっていただきたい。

アメリカにおける端末ごとの所有率と、電子書籍読書時間に占める割合
端末 所有率 電子書籍読書に占める割合
電子書籍専用端末 34% 55%
タブレット 66% 28%
スマートフォン 73% 12%

主要な電子書籍閲覧端末の多くがEインクという技術を使っていることを考えると、「スクリーン疲れ」という読者の申告が果たして正しいのかは疑問が残る。しかし、電子書籍が読書のための選択肢の一つでしかないという事実はたしかにその通りで、音楽業界ほどの影響を受けづらいことは確かだ。

また、市場規模という点で考えると、電子書籍市場の伸びの鈍化とともに、電子書籍以外の「紙ではない書籍」の増加も見過ごせない。実際に日本の漫画市場ではComico、GANMA!などの無料漫画アプリが増えており、Amazonも読み放題サービスを始めることが報じられている。日本でも電子書籍市場は鈍化する日がくるだろうが、これまでと同様に紙の出版業界が温存されることはなさそうだ。