僕は、とある大学に通っている、平凡な学生だ。
桜が色付き始めたある日、僕はいつものように大学に向かった。
そして講義を受ける。
講義終了後、僕を勉強熱心な学生だと誤解した教授が、僕をとある部屋に呼び出した。
埃の臭いがする、薄暗い部屋だった。
そこで、彼は僕に、一冊のノートを渡してきた。
青色で、表紙は色が剥がれていた。そして、タイトル欄にはこうあった。
「世界の存在と人間について」
名前には、見慣れない文字の羅列がある。
「白鳥 類」
教授によると、昔この大学にいた教授の物らしい。
白鳥教授は誰も近寄らない様な異質な雰囲気を放っていた、若い教授だった。
誰とも関わろうとしない。講義をマニュアルがあるかの様に行い、誰にも話しかけない。
髪もろくに整えず、目にはクマが溜まっていた。長い髪を手でかけば、フケが床を汚す。
仕事が終われば、呑み会に誘われても無視して、さっさと帰宅する様な人だったらしい。
だが肝心の講義の内容は素晴らしい物で、密かなファンも多かった。僕にノートを渡してきた教授もその一人だ。
この大学を辞めた後、どうやら彼は失踪したらしい。
僕は、折角なのでこのノートを通し、彼の人生観を探ってみる事にした。
世界の存在と人間について
白鳥 類
序章
全く、この世はどうかしている。
世の中は混乱に満ち、そして人が人を殺し合う。人が人を支配する。
人は皆、自分の事を考えるのに精一杯で、世界、そしてこの現実について考える事が出来ない。
この世の中に目を向けてみよう。日本では失う物を全て失った者達が、自分達が何か無敵なのだと錯覚し、人を殺す。
他の国では、自分を何か神の使いだと錯覚した者が、罪の無い人民を操って殺し合いをする。
明確な上下関係。それは元々信頼の証で、そして強き意志を作り出す物だった筈だ。
だが今は人を命令する為の道具に成り下がっている。
・・・・・・ならば、私が教えてやろう。
人のする事がいかに愚かで、神という存在がいかに愚かで、そしてこの世界がいかに美しいかを。
神々という存在について
先に言っておこう。この世に神という物は存在しない。それは人が作り出した虚像だ。
この世は、ビッグバンから発生した産物だ。そしてその中から生きたいという意志を持った存在が、身体を持ち、繁殖したのだ。
その過程に、神という存在は干渉していない。神は人々が救いの為に、創造したに過ぎない。
・・・・・・勿論、信仰そのものを否定する訳ではない。信仰というものは、人々の生きる支えとなり、生きる目的になる。
私が言いたいのは、決してこの世は神が作りだした物では無いという事。だから、神の行動を期待するべきでは無い。
昔からこう言われている様に、神は人々を見守っているのみだ。この考え方も、神ありきだが。
だから、人間が行うべきなのは、第一に行動なのだ。
読者が神を信じている、というのなら申し訳ないと思う。
前述した通り、信仰は悪い物ではない。寧ろ誇るべきだ。自分が信仰する物に自信を持てるのなら、それは君にとって精神疲弊の場合の強力な武器となる。
私は、神のお告げだとほざいて、人間を殺す者達が許せないだけだ。
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