この推理は何も言ってないのと同じです。悪しからず。
初めは「タバコ」がキーだと思った。あるいはその「匂い」。
光一が「堂々と」吸うタバコ、幼少期に「僕」がいじっていた「父の100円ライター」。そこで、私は光一の吸うタバコを「僕」が視覚だけで気づいたような描写になっていることに着目した。そこから、推測して、もしかして「僕」には嗅覚がない? だが、よく読んでみると、初めて英樹の死体のある井戸に近づいた時、「ぷんと湿った臭いが鼻をつ」いたとなっているのでこの推測は半ば却下となった。
続いて私が着目したのはラスト付近、「僕」の入院する病室に光一までついてきたこと(そうです、私は光一をキーパーソンだと思っています)、そして母が「孝志君と、もうひとりは誰だったの」のセリフから、なにかを感じた。母はあえて、そう言ったのではないか? つまり、『果たしてわざわざ作者はその一言「もうひとりは誰だったの」を足すだろうか……』。実は母と光一は面識が本当はある……?
あと気になったのは母の身長について。「僕」が、「母さんが小さいから〜」と序盤で言っている。もしその小ささが子供のそれと変わらないにしても、ある程度の低身長ならば、あとから推理に浮上する「井戸の蓋」に身を隠すことも可能なのでは。
母はミチルの共犯だ。だからその推理はそのまま活かせるのでは?
だがこれに関しては、作者がわかりやすく意図的に読み取ることができるように書いている気がした。ミスリードを誘っている気もする。
そしてあとは父は事件と無関係だと私は推測した。物置に母が隠れていても父ならば見逃す……とも考えたが、共犯は「もうひとり」と神様は言うので人数的に父は含まれないのだろう。
で、光一の存在だが、私は荒唐無稽と分かりつつ、光一・母・ミチルの三角関係、もしくは(というよりは)三人の乱交的な性関係を英樹に目撃されたことを犯行動機のファイナルアンサーとしてみた。
その説で締める前に、「僕」の嗅覚について少し戻る。もしかして「僕」は嗅覚の一部、つまりタバコの匂いだけがわからないのではないか? あるいはタバコの匂いに慣れきっている? そこで私は鬼婆屋敷で少年少女らは喫煙を日常的に行っていたのではないかと考えた。もしくは「僕」だけがその場での喫煙者か。「僕」がタバコの匂いをさせていても、100円ライターの記述から自宅でも父も吸っていて、匂いがバレない可能性がある。そして私は、母もまた喫煙者なのではないかと踏んだ。夫婦両方とも吸うが、ライターをそこら辺にほっておくエピソードの持ち主は父だけだった、という推測。
光一の喫煙は、関係を持っていた「僕」の母からの影響ではないか。何かそこの関係性を考えた。
あとは「光一さんはさっきの図面に糸と書き、その上に大きく×印をつけた」。
ここの光一の行為は、「糸説」から目を逸らすための念押しではないか? 本当は糸が何らかの……。
だが、この自説に誤りがあることに私も気付かざるを得ない。先程も触れたとおり、犯人はミチルと「もうひとり」なのだ、つまりもうひとりは焼死する母だけで終わりのはずなのだ。光一はそこに含まれない。だからもしも鬼婆屋敷で英樹が光一とミチルの「エッチ」を(そこには母もいた)目撃したかどで殺害してしまった場合、犯人は三人になってしまう……。
つまりこの推理は破綻している。でもこの他にいいアイデアが私には浮かばなかった。
というわけで何も言ってないのと同じ推理でした。
というわけで推理には失敗してしまったが、刺激的な読書体験となった。最近、本が読めるモードになっていなかった私に読書する喜びを思い出させるきっかけをくださりました。ありがとうございました。
了
"多宇加世の推測(『神様ゲーム』編)"へのコメント 0件