はじめに言い出したのは誰だったかな、ということを最近の大尉はよく思った。それも仕事の前に限って。
大尉は廃墟の街を歩いた、誰だったかな、と時には呟きさえしながら。民兵の奴らか? いや、軍の仲間内だったか? 思い出せなかった。敷石の隙間から若いヨモギが顔を覗かせていた。
民兵達がパレードをする予定の広場から二キロ離れた丘に古い教会があった。ショッピングセンターなら狙撃にうってつけなのだが、広場から近すぎる。教会がちょうどよかった。あれだけ遠ければ民兵共も気付かない。
教会に辿り着き、鐘楼へと昇った。時計の飾り窓がお誂え向きに開いている。大尉はケースを置き、ライフルを組み立て始めた。音一つ鳴らなかった。美しい少女が眠る前に身支度するような仕草だった。
「こんなところから当たるのかね?」
振り向くと、赤い僧衣を着た老人が立っていた。
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