日常。(41)

日常。(第34話)

mina

小説

1,370文字

あの人は「これが僕の愛し方だから」って言って、いつも私にお金を渡してくる
私はお金=愛だとはおもいたくないけれど、彼の相手をするときは、他の誰よりも真剣になる
それは彼が私にお金を払っているから
彼は「僕があなたにしてあげたいからしているんだ」って高額なお金を私に渡す
私は彼に嫌われないようにしなくちゃいけない
お店のサービス+精神的にも満足させてあげないといけない
彼が買った時間を楽しませなきゃいけない

「はい、今日もこれ」
「 … 」
「足りない?」
「ううん、そうじゃないの」
「 ? 」
「だって…お店にもお金払ってるんでしょ?」
「あぁ、そうだけど」
「だったら…悪いよ」
「…いいんだ、前にも言ったと思うけど、こ
れが僕の愛し方だし…お金が無いときは渡し
てないし」
「 … 」
「嬉しくない?」
「そんなことはないけど…」
確かに私はお金のために風俗の仕事をしている
だから嬉しくないワケはない
実際、彼がこうやって渡してくれるお金が私
の生活を支えてくれている
だから…

「お風呂入ろうか?」
「あぁそうだね、入ろう」
彼は時々、今みたいに私の機嫌を伺うような
顔をする
その度に私は笑顔で彼に接し、彼を不安にさ
せないように努力する
「 … 」
…そのやりとりにものすごく疲れてしまって
いる自分がいることに、私は最近気がついた
「今日はどの香りの入浴剤入れよっか?」
「そうだなー…この前はラベンダーの香りだ
ったから今日は…ローズにしようか?」
私が笑顔になると彼も笑顔になる
そんなことは解っている、これは私の中の問題だ
「 … 」
彼はバツイチで子供が2人いる
四十代後半だと言っていたけど、見た目は若
くみえる
離婚してからはずっと独り暮らしで、仕事ば
かりしてきたから、友達と呼べるような人間
も周りにいないみたいだ
「いい香りだね、ローズにしてよかった」
「そうだね」
私はこの人と一緒にいるのがきっと苦痛なんだ
「 … 」
だけど、お金を渡すということが自分の愛し
方だなんて、私に言うこの人を私は放ってお
けなかった
「どうしたの?君に見つめられちゃうと照れ
ちゃうなぁ」
「ごめんね」
キスをして抱きしめてあげることで彼の心が
安らぐなら…
「僕は君といると落ち着くんだよ」
「そう?」
「そう、僕にはもう…」
彼はそう言って私の胸の中に顔を置いた
「 … 」

         ・

僕は彼女に夢中だった
自分にお金がある限り、彼女に渡して彼女を
拘束したかった
お金を渡せば彼女は僕の言うことを聞いてく
れる、一緒にいてくれる
僕はもう独りになるのは嫌なんだ
だからといって、僕だけだったら誰も僕の傍
にいてくれないし、僕の思い通りにも動いて
くれない
でも、お金があれば…彼女は僕が思う彼女で
いてくれる
だから僕にはお金が必要で、僕はお金が欲し
いから働いている、残業だってする
全ては僕のためなんだ
僕は僕のために生きてるんだ

         ・

彼にカラダを触られていると、悲しくなる
私は彼の孤独を全て引き受けられない
彼のこと…嫌いじゃないんだけど…
「大好きだよ」
「…んっ!」
彼のその言葉に何故だか高揚した私は目の前
が真っ白になった

                end

2015年3月23日公開

作品集『日常。』第34話 (全70話)

© 2015 mina

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