高崎線あるいは上野東京ラインでのオーガニックバイオテロあるいは伝統漁法としての追い込み漁

小林TKG

小説

2,914文字

3/23にはメモ帳に、これを破滅派で書きたいって書いてました。

四月になると、電車が遅れることが多い。多くなる印象。勝手な印象かも知れない。知り合いにその事を話してみると、

「四月になったら、新入生とか新社会人とかが出てくるからねえ」

って言っていた。それが正しいのかどうか、私にはわからない。

 

そんな話をした、聞いた次の日も電車が遅れた。私は予定の一時間前には目的地に到着するように家を出ているので、多少の遅れは大したことないけども、まあ、目的地に到着してから整えたいという欲求があるから、そんなに遅れられても困るは困るんだけども。

 

あ、あとこの整えたいというのは、サウナで使われるようなものとは違う。違うと思う。一度区切りたい。そういう風な感じに思ってもらえるといいかなと。サウナで使用される整えたいというのももしかしたら同じかもしれないけど、それについて私は詳しくないので知らない。

 

家を出て、目的地に到着して、そのままその地での活動に入る。というのがどうも私にはできない。気持ちが切り替えられない。だから、間に小休止を設けたい。小学校の時の二時間目が終わった後のちょっと長い休み時間みたいなの。そんで手ぬぐいなり、タオルなり、そういうので目元を覆って、目をつむる。パソコンで言えば、再起動とかスタンバイ状態になるとか、そういう感じ。スマホで言えば、画面が暗くなる状態。そういう感じ。

 

他人からは、

「早いなあ、今日も早いなあ」

って言われる。その度に私は、この説明を行う。整えたいんです。って。でも、いまいち理解されてない気がする。まあ私自身他人に100%の理解を求めているわけでもないとは思うんだけど。

 

とにかくそういう訳で、あんまり電車が遅れられるのは困るなあ。時間に余裕はあるけども、でもその余裕だって整えに使う時間だからなあ。そんなんなんぼあってもいいですからね。

 

そんな感じでやっと来た電車に乗ると、満杯だった。もう外から見てわかるくらい満杯だった。いつもその時間の電車に乗ってる人プラス、その次と次の電車に乗ってる人、とか、いつもだったら駆け込んで乗るような人とか、そういう人を諸々含めて、もう満杯になっていた。

 

私はホームで先頭に並んで電車を待っていたので、あと遅れるっていう事がアナウンスされてもその場を動かなかったので、動く人は京浜東北線の方に走ったりする。そういう面倒な事を私はしてないので後ろから後ろから列に押されてすでに満杯になった電車に詰め込まれて、車両と車両の連結部分の所まで押し込まれた。

 

「お急ぎの所電車遅れて申し訳ございません」

そんなアナウンス必要なの?と思いながら、ぎゅうぎゅうの状態で電車は定刻より10分ほど遅れて浦和駅を発車した。

 

目的地は赤羽駅。高崎線とか伊勢崎線とか、上野東京ラインだと赤羽駅は浦和駅のすぐ次。10分ほどで到着する。10分間の苦行だな。と思いながら時間が経過するのを待った。背中に連結部のドアのドアノブが刺さってる。膵臓のあたりに。脾臓のあたりに。でも、それだって修行と思えば、苦行と思えば。

 

そんな中、突然の出来事だった。

 

自分の隣にいた人が、自分と同じように満員電車に押し込められて、何時から押し込められていたのかは知らない。わからない。同じ浦和駅から乗ったのかもしれないし、あるいは大宮から乗ってたのかも。その前からかもしれない。その前の駅の事はよく知らない。だから書くことはできないけども。

 

とにかくその隣の人が、突然に吐いた。

 

その瞬間未曽有のパニックが電車内に発生した。きゃーだのわーだの、うああーだのくせえーだの。なんだのかんだの。そしてあれほどぎゅうぎゅうだった満員電車でその人のまわりだけモーゼの十戒のようになった。多少ね。モーゼの十戒は言いすぎかな。多少ね。

 

で、その人が解き放った黄色や茶色、ORANGEや白っぽい感じの、COLORFULな、宇多田ヒカルのCOLLARSみたいなゲロは私の靴にも多少かかっていて、で、その日ちょうど、前の日さ、雨でさ、で、いつも外出の為に履いてる靴がさ、濡れててさ、濡れそぼってしまってて、だからその日は靴流通CENTERの外のWAGONSAILで売ってるみたいな、一足500円の靴を履いててさ私、おじいさんの履いてる靴みたいな。死ぬ直前のおじいさんが履いてるみたいな靴。公民館のおじいさんの靴。そういう靴履いてて私。

 

だから全然大丈夫って思ったし、でもLipovitan D混ぜて煮詰めたRISOTTOみたいなゲロのVISUALARTとそれが放つ酸い臭いを自分の鼻腔で感じた瞬間、私もゲロ吐いた。ゲロ、吐いた。

 

昨日食べたおぼろ豆腐とかブリの刺身の何かとかたっぷりのにんにくとしょうがを利かせた唐揚げの何かとか、そう言うのが同じく昨日飲んだ焼酎とお疲れさんCITRIC ACID SOURと朝飲んだCOFFEEと一緒になって出てきた。まん防終わった直後の花金の神田の駅前の人混みくらいの勢いで出てきた。

 

「おぼろお、ぶろおお」

って言って出てきた。若本規夫さんみたいな声音で出てきた。

 

それでまたモーゼの十戒は広がった。まだモーゼじゃないかもしれないけど、でもさっきよりモーゼ。さっきよりももっとモーゼ。

 

二人のゲロで作った湖畔は合わさったし湖岸浸食で広がったし、これが地球温暖化、あるいは地球温暖化の影響かと思える。わかりやすい。

 

まわりの人は相変わらず、わーだのきゃーだのの悲鳴。ZOMBIE映画みたいな悲鳴。flash動画の消防時代の思い出みたいな感じ。

 

そんな時、車両の反対側の連結部からも悲鳴が聞こえてきた。

 

私は直感的に反対側でも誰かがゲロ吐いたんじゃないかと思った。

 

だから他の乗客は車両の中央部分に集まる。集まるきっと。それしかないんだもん。だって。

 

まるで追い込み漁みたい。

 

そう思った。

 

これが『僕といっしょ』だったとしたら、集まった人間はやがて融合して一体の巨大ヒトゲルゲになるんだろうか。

 

なってほしいな。

 

いいなそれ。夢があって。

 

口がからからに乾いていた。気持ちも悪かった。まあゲロ吐いたし。

 

でも、車両から窓の外を見るとやっと蕨を過ぎたあたり。

 

川口を過ぎて、最後の荒川を越える際の橋の所で誰か非常停止ボタン押してくれないかな。川口駅で誰か線路に飛び込んで人身事故とかになってもいい。

 

そしたらもっとこの時間が長くなるのに。

 

素敵な時間。

 

素敵TIME。

 

そしたらもっとヒトゲルゲになる可能性が増えるだろう。

 

ヒトゲルゲ見てみたいなあ。

 

頭の中ではずっと宇多田ヒカルのCOLORSがリピートして流れていた。特に最初のサビの所。闘牛士のように。

 

赤羽まではまだ5分以上かかる。

2022年4月15日公開

© 2022 小林TKG

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"高崎線あるいは上野東京ラインでのオーガニックバイオテロあるいは伝統漁法としての追い込み漁"へのコメント 2

  • 投稿者 | 2022-04-15 23:05

    実体験が元なのでしょうか想像だけなのでしょうか、タイトルで内容の予想は付きましたが、小林さんらしい作品で良かったです。ただ情景を想像すると気持ち悪くなるので他人にお薦めできないですけれど。英文字表記や比喩がとてもキュート。日常で突然ふりかかってくるささやかな不条理・暴力、小林さん的なテーマだと思いました。

    • 投稿者 | 2022-04-16 00:05

      感想いただきまして、ありがとうございます。
      ある日突然オーガニックバイオテロっていう言葉が、私の中で発生しまして、オーガニックバイオテロってなんだ?って考えたらこういう内容が一番オーガニックバイオテロかなって思ってですね。ええ。それで書いたんですww。

      だから、最初はタイトルもオーガニックバイオテロだけだったんですけども、オーガニックバイオテロってなんかねえ、テロリストってかっこいいみたいな感じがあるじゃないですか。そう言うのも恥ずかしいぞと。だから、オーガニックバイオテロ以外の部分はもうあれです。なるべくそれを薄めようとした結果ですww。はい。

      他人様にはおススメしなくて大丈夫ですww。はい。恥ずかしいんで。大丈夫です。ええ。ありがとうございます。

      著者
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