最初の汚れ。

巣居けけ

小説

3,094文字

彼らはいつでも欲望に忠実なんだ……。

ミソという食事店では、いつも通りの昼食会が行われていた。白いスーツを好む団体の、上層幹部のような人間たちは丸いテーブルを囲む。それぞれが、まるで錆びてしまった仏像のような動かない顔をしている。頭の中では広告代理店の激しい音楽が流れている。

上層部の連中はスープをむさぼり、定期的におしぼりで、右隣りに座る人間の肩を拭きとる。まるでメイドのような手さばきは、過去の原住民を思い出させる……。

白棒はいつでもそそり立っている。大量の熱を帯びたそれは力強く、硬く、それでいてトマトの断面のような赤い水分の様相を纏っている。

ログは自分の白棒を握る。それから何度か白棒をこすると、先端が濡れてくるのを感じながら、目の前で股を開いているジョジの中心部の穴に挿入していく。スポンジのような快感と、宙に浮くような感覚が痺れとして体を襲う。ログは必至に体を動かした。ジョジはまるでお人形のように肩をカクンカクンと揺らし、眼球はガラス玉。よく見ると口角から細長い茶色い何かが伸びているが、それの正体が何なのかまでは、ログにはわからなかった。

ログはついに自身の体を動かす速度を上げた。すでにログには、自分の視界で何かをとらえることができなくなっていた。脳が沸騰しているようで、大量の熱が血液に混ざって体中に巡っていく。足の感覚がなくなったと同時に、白棒は果てへと到達した。解放されたような感覚がログに突き刺さり、体の内に秘めていた全てが放出される……。

ミソの店内では常に食事が、誰かの喉を通っている。熱い、冷たい。熱い、冷たい。それが交互に食道を落ちてゆき、胃という天国で無へと帰る。「消化こそが信条だから」シスターベールを着けている男は、右手に蓮華を持っている……。
「このシチュー、とても美味しいですわ!」男は蓮華でシチューを取り出すと、それを一度口の中に入れる。舌が蓮華の裏側に付かないようにしながら、唾液で湿った口内で必死にシチューに息を吹きかける。そして慎重に外に出し、そのまま横で伸びているログの口に上から注ぎ込む。すると全裸のログの白棒がすぐに天井へ向かって立ち上がり、血管らしい線が太い白棒の表面に浮き出てくる。
「ほら、もう一度できるけど?」男はシチューを食べながら、対面の椅子に座っているジョジに問う。ジョジは無言で席を立つと、そのまま三つの椅子で作り上げたベッドで双眼を閉じているログを背負って、奥の個室へと帰っていった。
「全く、盛んなヤツらだ」男はすでにシスターらしい口調だった。

それから、あの二人の背中を見つめながら、あの二人が今後味わうであろう脳姦の味を予測する。その、あまりにも強烈な波のような快楽に両肩を震わせて、男はすぐに射精までたどり着く。黒い修道衣服がシミで汚れ、シスターは正気を取り戻す。そのままテーブルのワインに手を伸ばす……。

 

ログを大きなベッドの上に頬り投げたジョジは、すぐにログに対して敬礼を完璧な角度で執行する。するとログは目を開き、すぐに全身を舐めてもらえるようにと命令を下す。ジョジは口を開き、ログのありとあらゆる部位に唾液を触れさせる。二つの肌色の肉欲が絡み合い、人間の汗と唾液の臭いが部屋中に充満していく。いつのまにか二人は、互いの白棒を口に含んでいた。執念深く棒を舐めると、ついに同時に果てへと行きつくことができた。

ジョジはログの口づけを奪うと、そのまま耳の穴に自分の白棒を挿入した。少し硬い感触が入り口に現れ、さらに奥深くに棒を突っ込むと、ふわふわとした粘着質の触感が棒に触れる……。ジョジは低く喘ぎ、そのまま体を高速で動かす。動きだけが速まっていき、ついにジョジは象のような大きな喘ぎ声を出しながら、この世の真理を舐め回したような感覚に陥る……。精一杯をやり切った後のジョジは、すぐにログを突き放して自分の白棒を清掃しだす。

 

やつは、コーラで伸びている……。また、精進をさせるべき生徒たちは、いつでも十字路の向かい側に望遠鏡をセットし、その通行料の観測を願っている。「まるで未来を見ているようだ……」ログはいつでも夫のことを考えている。

ログという少年は人形遊びを好む。いつでも行きつけのバーにお手製の人形を売りつけて、店主を困らせる。握手ではなく悪手なので、どうしてもカクテルが背中にこびりついている。
「よし、私は殺人願望を抱きながら、ゆったりと眠りにつくとする……」白色の医療従事者は、いつでも清潔なベッドで仰向けになっている。すぐに瞼は落ちてゆく。そのまま医療従事者は真の眠りへと入り込む……。そうして脳の世界の中に映るのは、砂煙の漂う異国の世界、カラビナだった。

カラビナ。彼女は砂漠の国のお姫様。しかし実際は男。本来の性別が他に知られないように、普段は女らしい服装を心掛けている。黒色のワンピースや、赤いスカートがお気に入り。

数分後にある警告と、それが許されているタイピング技術。問い詰める権限を持っているログは、いつでも病院の頭金を狙っていた。
「それがキミの生活だから?」
「いいや……科学技術を考慮した演説になるけれど、第一に、朝食にトマトを食べるのは勧められるべき治療方法かもしれないな」そこでカクテルだけを飲む。
「あとは、もう苦いジュースを無理やりガソリンとして摂取する必要は、無い」
「ああ! もういい! 帰ってくれ」怒鳴りながら、ログは一気にシャッターを下ろす。金属の轟音が鳴り、肉屋はただの個室になった。
「ようやく理解したか! この愚か者め!」シャッターの向こう側からは、スプレーでの落書きを好んでいる浮浪者の、カツカレー風味な嫌味。「この玉無しが!」
「ああ……僕はきっと、空手の稽古を受けたことがあるんだろうな……」シャッターを背にして、呟きながら奥の部屋へと沈んでいく。

テレビ監督が棒状の麻酔をひたすらに舐めている。ダンサーが、それに気づかずビールジョッキを持ってくる。いつでもにぎわう居酒屋は、どこかの闘牛場のような活気に満ちている。橙色が幻覚かと疑われて数年が経ったが、いつでも酔えるこの場では、どうせ何もかもが幻覚そのものなので、日常に変化はなかった。
「明日がこないといつでも飲めるのに……」酒飲みたちは、いつでも破滅を望む。全てが消滅すれば、自分たちは酒におぼれて死ねるから。

今日は三番のテーブルが最もにぎわいを振りかざしていた。汚い食器はすぐに投げ捨てられ、かき氷が唐揚げに見えている客同士は、つねに自分の顔が巨大なゴキブリだった。
「待ってくれ……まだ理解が追いついていないんだ……人形、人形……ああ、人形焼き」
ログの脳は、すっかり赤色のカクテルに浸されている。全裸のままで頭を抱え、シチューの中に灰色のゲロをこぼす。
「ええっ!? 人形焼き? ならこちらはもんじゃ焼き。お好み焼きに、根性焼きってね!」

ジョジはどうしようもない帽子売り。金属のような高い声を出すと、その横でログが椅子から床に引っ越し、さらに片膝をついて悲しみに暮れはじめる。
「私達は……我々は最後まで! あの人の性癖を擁護することができなかった……」裁判所の横の黄色いベンチを連想しているログ。徐々に赤くなっていく風景。そのまま砂利だらけの地面に腰を落とし、女装の警部に刺さった砂利に吐息を漏らす。「開発されてしまう」
「……もっと擦る必要がある」シスターは鞭を持ち上げた。それに揃ってジョジとログも立ち上がり、互いのゴキブリ顔をひっぱたき始める。顔面にねっとりと広がる熱い痛覚によって酔いが冷めていき、ようやく三人の酒飲みは自身の本来の顔を自覚する。

2021年10月8日公開

© 2021 巣居けけ

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