翌日、フォーラムの出席を諾する旨の電子メールを宮崎氏に送信した。五分と間を置かずに、感謝を綴った文面が返って来た。
その明くる日には、amazonで注文した本が届いた。更にその次の日には、身に覚えの無い段ボールが届いた。宮崎氏が送って来たものであった。其れは『晴天の会』に関する資料であったり、気学に関する本であったりして、中には私が買った本と重複する物も含まれていた。しかるに私は、原稿執筆や大学での講義準備等の合間を見て其れらに目を通した。が、当然ながら走り読みで理解出来る物では無かった。加えて言えば、『晴天の会』の教えは、「気学」をベースに、「すべての哲学の原点」である「仏教」と、「宇宙と臨場感を共にする」とされる「引寄せの法則」を複合した物であるらしく、その複雑さは迷路を為す。が、其れでも頗る興味ふかく感ぜられる所以は、氏が著す文章の力に在る物とおもわれる。
二〇一一年、宇宙の法則はインターチェンジしました。「行動学」の時代が来たのです。ほんの十年前までは、国民の生活に「平均」というものがあり、誰かがそこから落っこちそうになれば、他の誰かが手を差し出して、助けてあげることが出来ました。しかし今は、そうはいかない。落ちてしまった人間を助けてあげることは、もう誰にも出来ないのです。落ちた者は、自分で這い上がって来るしかない。良い・悪いではなく、そういう時代なのです。(猪原誠一郎『「気」に合わせる――宇宙を味方につける方法――』)
この猪原の著作は、『財団法人晴天の会』発足から二ヵ月後の二〇一五年一〇月に刊行された。冒頭から読者の不安を煽動する文章である。「良い・悪いではなく、そういう時代なのです。」と云う一文からは、尊文お得意の断定的なレトリックを見て取る事が出来るが……、果たしてどうか。この先を読めば明かなのだが、本書は、丁寧な「引寄せの法則」指南書、或いは明晰な自己啓発本として実に完成度が高く、尊文の小説やエッセイに見られる、ある種の「あいまいさ」とは殆ど無縁の文章なのである。
例えば、
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