霊感があって得することは、ほとんどありません。血まみれで体の一部が欠損している幽霊は見ていて気持ちのいいものではないですし、トイレや浴室に幽霊がいると虚ろな視線が気になって服を脱ぐのにも落ち着きません。特にこの島では先の戦争で熾烈な地上戦があったせいで、幽霊の人口過密が深刻です。総死者数二十四万余、島民だけでも当時の人口の四分の一が命を落としたわけですから、文字どおり石を投げれば幽霊に当たります。
もちろん除霊の手段がないわけではないのです。幽霊とは残留思念の一種であり、人が死ぬ瞬間に残した恨みや絶望が現世に留まっている状態です。そのため幽霊になる者は自分の死について納得しておらず、この世に強い未練を抱いています。そこで、彼らの無意味で不条理な最期にポジティヴな意味を与えてやることにより、幽霊が死を受け入れて昇天できるようにするのです。ユタと呼ばれる霊媒の一人として、私は個々の霊の話を聞いて昇天を手伝ってきました。手探りの部分が多く、手間暇のかかる作業です。私の所属するユタの職能団体では、各種行政機関に除霊ガイドラインの策定と普及を求めてきました。
その要求がついに聞き入れられたようです。戦没者慰霊式において、政府高官が画期的な方針転換を表明しました。
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