笑う、井上陽水

春風亭どれみ

小説

449文字

        

                  いいよね、陽水-san.

おそらく決まりはないが、

僕はこの頃、妙なことに、笑う井上陽水にばったり出会ったりする。

野球場、遊歩道目抜き通りイルミネーション、そして星のない星空に浮かぶ井上陽水。

そんな時、僕は手を止めて、目を閉じて、iPodから放たれる流行りのロビカリー音楽を聞き、お魚錆びながら沈むレンジローバーに想いを馳せる。

されど、昼でも夜でも、心にささやきかけるのは、にやけて笑う井上陽水うふふ、うふふ、さあ

そんな時は、ただ委ねるしかない。漂って、さまようしかない

あくまで僕は恋する限り

そこには、小舟の行き交う島や、化粧が散らばる波や、情熱に群がる鳥の群れがある。

だって、斬新な響きは瞬間のアートだよ。それを心のように並べて、ホテルから運んでくれたパンとワインと一緒に流し込んじゃって

そこでも井上陽水はただ、夜空に浮かんで笑っている。

そして、星の降る暗がりでレタスの芽が芽生えているのを見つけて、僕はそっと地上を眺め、眠りの底へつく。

大丈夫、夢はつまり想い出のあとさきなのだから

2017年7月9日公開

© 2017 春風亭どれみ

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