大藪春彦賞選考委員会が主催する「第26回大藪春彦賞」の選考会が、1月26日に行われ、太田愛『未明の砦』(KADOKAWA)と松下隆一『侠(※侠は旧字体)』(講談社)の二作が受賞作に決定した。

 作家・大藪春彦の業績を記念し、その物語世界を引き継ぐ新進気鋭の作家および作品に贈られる。

 太田は1964年9月2日の香川県高松市生まれ。1997年テレビシリーズ「ウルトラマンティガ」でシナリオライターとしてデビュー。ドラマ「相棒」「TRICK2」などの脚本を手がける。2012年『犯罪者 クリミナル』(文庫化時に『犯罪者』と改題)で小説家デビュー。14年『幻夏』が「第67回日本推理作家協会賞」にノミネート。他の著書に『天上の葦』『彼らは世界にはなればなれに立っている』がある。

 『未明の砦』は、共謀罪の嫌疑をかけられ、逮捕されようとしていた大手自動車メーカーの若い四人の非正規工員たちの逃亡劇と事件の背後に蠢く陰謀に迫る社会派青春群像劇。

 松下は1964年1月2日兵庫県丹波市生まれの作家・脚本家。2007年、映画脚本『二人ノ世界』が「第10回日本シナリオ大賞」佳作入選。20年、小説『もう森へは行かない』が「第1回京都文学賞」最優秀賞受賞(『羅城門に啼く』に改題し新潮社から刊行)。他の著書に『虎雄とともに』『春を待つ』『二人ノ世界』など。

 『侠』は江戸時代に博奕から足を洗った余命わずかの貧乏蕎麦屋と、店に集う社会のはみだし者達の人間模様を描いた物語。

 候補作には、受賞作のほかに青本雪平『バールの正しい使い方』(徳間書店)、香納諒一『川崎警察 下流域』(徳間書店)、寺地はるな『わたしたちに翼はいらない』(新潮社)の五作があがっていた。選考委員は、大沢在昌、黒川博行、東山彰良の三人。

 受賞者には、大藪春彦賞選考委員会と後援の徳間書店から正賞(顕彰牌・賞状)および副賞各150万円が贈られる。

 なお、贈賞式は3月上旬に開催され、同時に昨年10月に決定した「第7回大藪春彦新人賞(受賞者:安孫子正治氏、受賞作:等圧線)」の贈賞式も行う。