金沢市が主催する「第51回泉鏡花文学賞」が12日、北村薫の『水 本の小説』(新潮社)と朝比奈秋の『あなたの燃える左手で』(河出書房新社)に決まった。

 同賞は、金沢に生まれ、近代日本の文芸に大きな貢献をなした泉鏡花の功績をたたえ、昭和48年に制定された文学賞。各年度において新しく単行本として刊行されたすぐれた文芸作品を対象とし、その選考にあたっては市民参加の方法をとり入れ、推薦人・選考委員の推薦選考により候補作品を決定する。

 選考委員は、五木寛之、金井美恵子、村松友視、嵐山光三郎、山田詠美、綿矢りさの六人。昨年は、大濱普美子『陽だまりの果て』(国書刊行会)が受賞している。

 『水 本の小説』は、本を愛する作家が、言葉と物語の発する光を掬い取り、その輝きを伝える七篇。向田邦子、隆慶一郎、山川静夫、遠藤周作、小林信彦、橋本治、庄野潤三、岸田今日子、エラリー・クイーン、芥川龍之介など、本の達人ならではの探索と発見が胸を打つ〝本の私小説〟。

 『あなたの燃える左手で』は、ハンガリーの病院で手の移植手術を受けた主人公が、見知らぬ白人の手を移植されることから自らの身体を、そして国を奪われることの意味を問う中篇。

 賞金は各150万円。授賞式は11月11日、金沢市民芸術村パフォーミングスクエアで開催される。