日本電信電話株式会社(以下NTT)が、京都大学の出口康夫教授(文学研究科哲学専修/副研究科長、副プロボスト)と共に一般社団法人「京都哲学研究所」を設立する。世界経済や環境問題について討議する「京都会議」を定期的に開催し、国内外の理論形成に積極的に関わっていくという。

 西洋的価値観と日本・東アジアの価値観が矛盾許容的に共存する価値多層社会、パラコンシステント・ワールドの実現を目指す。国内外の産業界、さらに社会全体を巻き込んだ運動論の形成を行う。

 国内外の研究者が参画する哲学研究プロジェクトを一定期間実施し、多言語の学術書・学術論文・一般入門書・メディアコンテンツ等からなる言説空間を創出する。人文系研究者と産官学民人材、科学技術者、アーティスト・デザイナーとの対話・共同研究・共同事業を実施するほか、世界を代表する人材が一堂に会し、世界経済や環境問題などについて討議する「京都会議」を定期的に開催することで、新たな世界価値基準の戦略的展開を行う。

 また共同研究者として、Jay Garfield教授(スミス大学:ドリス・シルバート教授、ハーバード大学神学大学院ディヴィニティスクール:客員教授、メルボルン大学:教授、中央高等チベット学研究所:兼任教授)やGraham Priest教授(メルボルン大学:ボイス・ギブソン名誉教授、ニューヨーク市立大学大学院センター:特別教授)も名を連ねる。

 NTT島田明代表取締役社長は「新しい技術を社会に導入するためには、社会基盤、特にその根幹となる哲学についても環境に合わせ進化させていく必要があります」とし、「今回の研究所設立はその第一歩であり、今後の研究・活動の着実な進展を期待しております」とコメント。

 出口教授は「21世紀の世界は、価値の多元化、多層化をますます必要としています」と述べ、「世界の人々や研究者が、ここ京都に集い、議論し交流することで、京都発の新たな価値観と知のトレンドを生み出す。それが「われわれ」のミッションであり、夢でもあるのです」と研究所に期待を寄せる。

 ちなみに、京大と言えば佐川恭一も出口教授の授業を受けていたといい、その成績をTwitterで明かしている。

 今後、2024年1月19日に設立記念シンポジウム開催し、2月にパートナー企業・賛同者の招待を開始する予定。2024年内に京都宣言発出し、京都会議開催を目指す。

 戦前の日本哲学における大きな流れとして「京都学派」があったが、戦前の軍国主義を正当化するような思想として批判され、戦後は没落した感がある。長らく日本や東アジアにおける哲学は西洋哲学の流れの中で触れられることがあることはあっても、主流からは外れていた。もちろん、戦前の反省に基づく警戒はあるものの、今回の研究所設立がどういう展開になるのか、期待したいところでもある。