KADOKAWAが主催する『第43回横溝正史ミステリ&ホラー大賞』を、露野目つゆのめナキロ「をんごく」が受賞。同作は「読者賞」、「カクヨム賞」も併せて受賞するトリプル受賞という結果になった。

 同賞はKADOKAWAの新人文学賞として、ともに四半世紀以上の歴史を持つ「横溝正史ミステリ大賞(第38回まで)」と「日本ホラー小説大賞(第25回まで)」の二つを統合し、ミステリとホラーの2大ジャンルを対象とした、新たな新人文学賞として創設された。エンタテインメント性にあふれた、新たなミステリ小説またはホラー小説に与えられる。

 露野目ナキロは大阪府箕面市出身、大阪府大阪市在住。イギリス・ニューカッスル大学大学院修士課程修了の現在会社員。受賞作「をんごく」は、大正時代末期の大阪・船場を舞台に、画家の古瀬壮一郎が亡くなった妻・倭子の霊を四天王寺に住む巫女に降ろしてもらうよう依頼し、その後、壮一郎の住む船場の家で異変が起こりはじめるという物語。

 最終候補には受賞作のほか、ウシジマ タクロヲ「人類賛歌」、大塚「けものの名前」、栗谷美嘉「美大怪異譚」の四作が上がっていた。4月27日に選考会が行われ、最終選考に残った4作品のうち、選考委員である綾辻行人、有栖川有栖、黒川博行、辻村深月、道尾秀介、米澤穂信の六人の審査により「大賞」が決定した。

 また、一般から選ばれたモニター審査員に最も多く支持された作品に与えられる「読者賞」とWeb小説サイト「カクヨム」ユーザーによって選ばれた作品に与えられる「カクヨム賞」も露野目ナキロ「をんごく」に決定。まさかのトリプル受賞となった。

 書評家、翻訳家の大森望氏も自身のTwitterで以下のように予備選考での評価を明かし、絶賛している。

 正賞として金田一耕助像、副賞に賞金300万円が贈られる。受賞のことば及び選評は「小説 野性時代」2023年7月号(6月25日配信予定)で発表される。

 ちなみに、昨年は大賞は「受賞作なし」で、今回は二年ぶりの大賞受賞作となった。初の試みとなったモニター審査導入により、一般読者、錚々たる顔ぶれの審査員ともに認めるという、まさに〝破格の新人〟が誕生したと言っていいだろう。今後の活躍にも期待したい。