KADOKAWAが欧州の大手出版系エンターテインメント・グループであるMedia-Participations Paris(メディア・パルティシパシオン以下MP)と、同グループ傘下のフランス・ベルギー大手コミック出版社Editions Dupuis S.A.(エディシオン・デュプイ以下Dupuis)と世界のフランス語圏市場向けに、日本や韓国発のコミック、ライトノベルなどのコンテンツを翻訳出版する合弁会社を設立する。

 1月25日には、Dupuisの既存出版レーベルであるVega(ヴェガ)関連の事業を分社化し、KADOKAWAがVega株式の51%を取得することに合意した。

 KADOKAWAグループは、多彩なポートフォリオから成るIP(Intellectual Property)を安定的に創出し、世界に広く展開することを中核とした「グローバル・メディアミックス with Technology」の推進を基本戦略として掲げ、これまで北米・アジア圏を中心に海外拠点の事業基盤強化・拡大を進めてきた。

 MPは、売上規模においてフランス第3位の出版社であり、コミック出版では欧州を代表する存在でもあるという。電子書籍、縦スクロールコミック、アニメ配信など、さまざまなプラットフォームの運営も手がける一方、KADOKAWAと同様、自社でアニメ制作やゲーム開発も行っている。

 Dupuisは、100年以上の業歴を有し、MPの中核出版社として欧州で最も有名なコミックヒーローの数々を生み出しており、2021年以降はVegaレーベル下で日本発のコミック作品の翻訳出版を行なっている。

 フランスは日本発のコミック作品についても日本に次ぐ世界第2位の市場規模となっている。KADOKAWAは「同市場は過去10年間で4倍に成長し、今やフランス国内で流通する書籍の7冊に1冊が日本発のコミック作品となっている。KADOKAWAとしても、すでに直接進出している地域に加え、フランスを含む世界のフランス語圏市場には大きく成長する可能性があると考えている」と今回の同意について述べている。

 今後、Vegaを通じて、MPが有する強力なコミックの出版流通インフラや販売・プロモーションネットワークを活用しつつ、KADOKAWA作品に限らず、幅広く日本や韓国の作品に焦点を当てる。それと同時に、その他地域に比べ、欧州ではまだ初期的な成長段階にある日本のライトノベル作品の展開に加え、欧州発のIPのコミカライズなどを含む新規領域への参入にも取り組んでいく予定。

 また、KADOKAWAとMP間では、今後、電子コミックやノベルのプラットフォーム運営をはじめ、両社が様々な形で積極的な事業展開を進めているその他のエンターテインメント領域に提携関係を拡大させていく可能性も検討していく。

 出版事業の不景気が叫ばれる中、当然海外マーケットに打って出るというのは一つの選択だろう。日本大手のKADOKAWAが欧州でどのくらい成果を上げられるのか、これからの動向次第では出版のグローバル化が加速するかもしれない。