英国の児童文学作家、A・A・ミルン(アラン・アレクサンダー・ミルン、1882.1.18~1956.1.31)による世界一有名なクマ『クマのプーさん』の著作権が2017年5月21日をもって消滅し、パブリックドメインとなった。

 

それに伴い『クマのプー』の新訳が、6月25日に角川文庫より出版される。訳は昨年出版された公式続編と同じく直木賞作家の森絵都が担当し、「コロボックル物語」シリーズの村上勉が挿絵を描く。

 

以前にお伝えした通り、TPP協定が発効されれば著作権は20年延長される予定であったのだが、ドナルド・トランプの登場によりアメリカがTPP交渉から離脱したため、発行のめどが立たなくなった。そしてついにその日は訪れ、「クマのプーさん」は自由化された。

 

自由化と言ってもそれは本文だけである。当然、E・H・シェパード(アーネスト・ハワード・シェパード、1879.12.10~1976.3.24)による挿絵の著作権はまだ残っているのだろうからキャラクターグッズなどを勝手に作ることは出来ない。だからこそ村上勉によって新しい姿が生み出されたのであろう。

 

しかし、「クマのプーさん」は世界で最も稼ぐキャラクターであり、文化に組み込まれた存在と言える。新しい姿で生まれたとして、簡単に受け入れられるものではない。権利である以上、新訳の出版は問題ないのだろうが、その権利はただ単に法律で年数を区切ったものに過ぎない。長年培われた文化にまで影響を及ぼすことはできないだろう。

 

新たな産声を上げた「クマのプー」が、今後どのような展開を見せるのか想像もつかないが、昨年の公式続編から引き続いてKADOKAWAと森絵都が絡んでいるあたり、その背後には原作者一族の姿が見え隠れする。

 

後追いは続くか。ディズニーは動くのか。今後も同じような事例は続くのであろうから、我々消費者も態度をわきまえておかねばなるまい。