二十世紀を代表する仏小説家マルセル・プルーストの代表作『失われた時を求めて』に関連深い美術作品などを展示した『プルーストと美術』展が都内・渋谷区の日仏会館で開催中だ。

日本を代表するプルーストの専門家で京都大学名誉教授である、吉川一義氏の監修で、プルーストと美術の関わりを示す書籍、雑誌、画集など貴重な資料を展示。さらに、プルーストが実見したり複製画像で見たりした美術作品も画像パネルの形で展示している。

筆者は積読状態であるが、未読でも十分に楽しめる充実したパンフレットが配布されているので安心して鑑賞できる。

プルーストによる手書きのスケッチなども。美術に対する審美眼は確かなプルーストだが、彼自身に絵心があったのかは議論の余地がありそうだ。

筆者はコロナ禍以前の三年ほど前にパリを訪れた。その際、オルセー美術館に行き、その広大な敷地と、一日ではとても見きれないほどの美術作品を目の当たりにした驚きは今でも覚えている。時代は異なるが、そうした環境でプルーストは様々な見識を深めていったのだろうと思うと、パリの街並みの記憶は、重層な文化の記憶を刻み続けるその息遣いとともに蘇る。

コロナ禍に加え、ロシアによるウクライナ侵攻で緊迫するヨーロッパ情勢でなかなか実際にパリの地を訪れることは困難な今こそ、改めてプルーストが心を震わせた作品に思いを馳せるのも一興だと思う。25日までと会期は残りわずかだが、機会があればぜひ訪れてみてほしい。