勒野宇流の投稿一覧 49件

  1. 影なき小説家(ペイパーバック・ライター)第13話 影なき小説家(ペイパーバック・ライター) / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,437文字

       (第13話)      3日後の夕方、内田が進捗状況を確認しに来た。    すでに3分の2まで書き上げている依本は、内心の得意気を隠しながら、プリントアウトした原稿を渡した。    しかし…

  2. でぶでよろよろの太陽(8章 の3) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,835文字

       (8章の3)      田んぼの向こう、遠くに稜線がある。しかし黒い雲と繋がり、稜線との境目がなかなか判別できない。凝視して、多少薄く見えるところから雲だと、かろうじて分かる程度。雲は昼間…

  3. 影なき小説家(ペイパーバック・ライター) 第14話 影なき小説家(ペイパーバック・ライター) / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 1,976文字

       (第14話)      駅で内田と別れた依本はぜんぜん呑み足りなかったので、「大葉」の暖簾をくぐった。    いつもの壁際がうまい具合に空いていて、落ち着く場所を確保できたことに満足する。…

  4. でぶでよろよろの太陽 (9章 の1) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,123文字

       (9章の1)      わたしは、駅に行きたくなった。鄙びた温泉街の、単線の小駅。一日にたった数本だけしかやって来ないローカル線。そんな駅を味わいたかった。    乳母車を押している主婦に…

  5. でぶでよろよろの太陽 (9章 の2) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,597文字

       (9章の2)      バスがやってくるまでにかなり待たされた。これはわたしが、「バスがすぐに来る」と念じなかったからだ。田舎のバスは本数が少なく、長く待たされるのが当たり前なのだ。特に念…

  6. 影なき小説家(ペイパーバック・ライター) 第15話 影なき小説家(ペイパーバック・ライター) / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 3,886文字

       (第15話)      1冊分を書きあげた依本は内田に送った。    デビュー時には、直接手渡すか、書留で送るかだった。それが今や、メールに添付するだけとくる。レトロな感覚を持つ人間として…

  7. でぶでよろよろの太陽 (9章 の3) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,229文字

       (9章の3)      わたしは結局独身のまま30代を通り過ぎた。あの時に思い描いた年齢をとっくにすぎているのだ。しかしそれが、どうも実感としてわかない。    現在のわたしは、もう40代…

  8. 影なき小説家(ペイパーバック・ライター) 第16話 影なき小説家(ペイパーバック・ライター) / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,254文字

       (第16話)      「大葉」で、久しぶりに女神と会った。    もっとも会ったからといって話をするわけでもない。知り合いでもなんでもないのだ。単に見かけた、という程度だ。    その日…

  9. 影なき小説家(ペイパーバック・ライター) 第17話 影なき小説家(ペイパーバック・ライター) / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 1,698文字

       (第17話)      まだ依頼があったころ、編集者に「がんばって書いてますか?」とよく言われた。依頼主にケチをつけるなんてできないので受け流していたものの、実に違和感のある言葉だなぁと依…

  10. 影なき小説家(ペイパーバック・ライター) 第18話 影なき小説家(ペイパーバック・ライター) / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,721文字

       内田がやってきて、依本は原稿を渡す。   「ほう、もう完成したんですか。助かります」    表情は変わらないが、一応お褒めの言葉は引き出せた。とりあえず目標の一つは達成したことになる。根を…

  11. でぶでよろよろの太陽 (9章 の4) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 1,875文字

       (9章の4)      調度品などない玄関で殺風景そのもの。モルタルの壁にはひびが稲妻のように走っている。靴箱は埃まみれで、手前に傾ければ砂利がざっと落ちてくることだろう。もうちょっとマシ…

  12. でぶでよろよろの太陽 (9章 の5) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,216文字

       (9章の5)      一部屋ずつ運ばず、そろって食事をさせるのは手間をかけたくないからだろう。みすぼらしい安宿のやりそうなことだ。    おかずがまた貧弱だった。肉類、刺身類はなし。揚げ…

  13. 影なき小説家(ペイパーバック・ライター) 第19話 影なき小説家(ペイパーバック・ライター) / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 1,948文字

       (第19話)      それから1週間も経たず、もう1作仕上げてしまった。    依本は書き終わると、すぐさま内田に連絡を入れ、メールに添付して送った。あまりの快調さに自分自身で驚いていた…