「断捨離と自分史①」

無職紀行(第9話)

消雲堂

小説

1,380文字

 

今、日本テレビで「人生がときめく片づけの魔法」って断捨離ドラマやってます。断捨離って僕は嫌いなんです。だって、何でもかんでも捨てちまえって行為は自分史構築の真逆な気がしますよね。

自分史ってのは、記憶を蘇らせるためにモノに依存することも重要なんですからね。

といっても、なんだかんだ保存していってゴミ屋敷にするんじゃなくて、整理しながら記憶に結び付けられない不要なモノを捨てていくってことなのかなぁ?

でも、その時に記憶に結び付けられなくても時間経過によって「あ!」って蘇ることがありますよねぇ~。だから僕はレシートでも切符でも何でもかんでも取って置いちゃうんです。でもね…昔から自分史を書くつもりじゃなかったので、ただただ、僕はだらしがないからモノを捨てられなかったんだと思いますけどね。

「ときめかないものを捨てる」「捨てられないモノに向き合って考えてください」って言うんですけど、モノに触れて自分の半生の思い出のような良い記憶を辿っちゃったりなんかすると、もういけません。捨てられませんよ。

外でゴミを拾ってきて自分の家の前に滞留積載させちゃうという世間で言われているゴミ屋敷の住人たちとは「捨てられない理由」はかなり違いますよ。

ゴミ屋敷の人たちのモノは、もともと自分のものじゃないんですから、自分たちの人生には影響がないんです。だから本当のゴミなんですよ。彼らには嫌世感からくるどうしようもない癒されることのない寂しさがあるんでしょうね。モノを集積することで寂しさを誤魔化そうとしているのかもしれません。

何度も言いますが、大事なモノを捨てられないという人たちは、モノに良い悪いじゃない強い記憶があるからなんですよね。そんな気持ちが強いんだろうと思うんです。

僕は簡単に壊れちゃうものを捨てます。例えば自分で作ったプラモデルなんか捨てました。だって用もなく精密だし、材質が脆くて落としただけで壊れちゃうものです。一生懸命に作って捨てられないなら、人にあげましょうね。

あとは服も捨てちゃう。だって服なんかに思い入れないでしょ?人に買ってもらったってのは別か?

うーん…人によって記憶を辿れるような重要なモノってそれぞれに違うのかもしれませんね。

でもね、記憶を辿れるようなものじゃないし、一般的に役に立たないし、おまけに値打ちもないんだけど、捨てられないモノってあるんですよ。そう、僕はそれが捨てられないんです。

怪獣のフィギュアとかガチャガチャとかモデルガンとか…いい年して大人買いした玩具なんか捨てられないんですよ。それぞれに良い思い出なんかありません。自分史書くのに必要かといえば…ま、1回書いて終わりかな?くらい?

あとは本かな?本は仕事に使う分野のモノは「捨ててもいっかぁ~」ぐらいに粗末に扱っちゃうんですけど、昔の探偵小説とか幻想文学とか怪談本とかさ、仕事に全然関係ないんだけど、高価なモノだから、いつまでも保管しちゃうんですよ。

昔、八王子の古書店に大事にしてた本を売っちゃったことがあるんですが、今でも後悔してるんですよ。売った本ってのは桃源社から出てた小栗虫太郎の作品集とか栗本薫を世に出した探偵小説雑誌「幻影城」のほとんどとか漫画雑誌「ガロ」ほとんどとかさ…。

ああ、自分史書くどころか…引越しするたびに「片付かない」自分が嫌になっちゃうんですよ。

2013年9月27日公開

作品集『無職紀行』第9話 (全10話)

© 2013 消雲堂

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