歯医者に行く。

かきすて(第38話)

吉田柚葉

小説

1,661文字

ひさしぶりに歯医者に行きました。空いてました。

右の奥歯がいたみだして二週間が経ち、ぼくはおもいこしをあげた。

歯科医院えらびはなやまなかった。家からもっともちかいところにきめた。どこにいこうとも、ふだんの歯みがきのいたらなさをなじられ、そう言っても、けっきょくはあっけなく治療をおえることがわかっているからだ。

金曜日のひるやすみに電話で予約した。翌日の十二時半にきまった。

歯科医院にいくのはじつに十年ぶりだ。高校二年生からいままで歯にさしたるふちょうがなかったのは、よろこぶべきことであるが、いざいたみだすと、十年間の感謝などわきおこるはずもなく、なんとはなく世界をうらむきもちがふくれていった。

午後からのしごとが手につかない。もとより金曜日は倦怠感と解放感の萌芽のせいでうわついたここちになりがちだが、つぎの日によからぬ予定がはいったことで、さっさと家にかえってねむってしまいたくなった。
「あした歯医者いれたんだよ」

と、となりの席の岩城さんに言った。
「わたしも来週、おやしらずをぬいてもらいにいきますよ」

2021年12月5日公開

作品集『かきすて』第38話 (全40話)

かきすて

かきすては2話、14話、24話を無料で読むことができます。 続きはAmazonでご利用ください。

Amazonへ行く
© 2021 吉田柚葉

読み終えたらレビューしてください

この作品のタグ

著者

リストに追加する

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 短編集として公開したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

あなたの反応

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

作品の知性

作品の完成度

作品の構成

作品から得た感情

作品を読んで

作者の印象


この作品にはまだレビューがありません。ぜひレビューを残してください。

破滅チャートとは

"歯医者に行く。"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る