河出書房新社が主催する『第59回文藝賞』選考会が8月22日、都内・明治記念館で行われ受賞作に安堂ホセ「ジャクソンひとり」、日比野コレコ「ビューティフルからビューティフルへ」の二作が選ばれた。

選考委員を務める角田光代、島本理生、穂村弘、町田康による選考の結果、『第59回文藝賞』受賞作は、安堂ホセ(あんどう・ほせ)「ジャクソンひとり」、日比野コレコ(ひびの・これこ)「ビューティフルからビューティフルへ」の二作に決定。

受賞作・選評・選考経過・受賞の言葉は、10月7日発売の「文藝」冬季号に掲載される。

なお、贈呈式は、11月中旬、明治記念館で行われる。受賞者には、正賞として記念品、副賞として50万円が贈られる。

安堂ホセは1994年、東京都生まれ。受賞作「ジャクソンひとり」は、スポーツブランドのスタッフ専用ジムで整体師をするアフリカ系と日本人のミックスであるジャクソンが、彼のTシャツのQRコードから偶然読み取られた、ブラックミックスの男が裸で磔にされた動画について真相を追求する。はじめはジャクソン自身が疑われたものの、動画の男は自分だと主張する3人の男に出会い物語が展開する。研ぎ澄まされた視線と痛快な知恵で生き抜く若者たちの、鮮烈なる逆襲劇。

日比野コレコは2003年、奈良県生まれ。現在、大学一年生。受賞作「ビューティフルからビューティフルへ」は、絶望をドレスコードにして生きる高校三年生の静と、ネグレクト家庭に育ち「死にたい歴=年齢」のナナの物語。ある晩、受験生のナナが単語カードを片手に歩いていると、駅前でサイファーをしている若い男に声をかけられた。ナナは気まぐれで、彼=ビルE を、静と自分の通い慣れている「ことばぁ」という老婆の家に誘うが。軽やかなことば遊びと、たたみかけるようなパンチラインの奔流。生と死の両極に振り切れて乱反射する、高校生たちのモノローグ。