スウェーデン・アカデミーは8日、2020年のノーベル文学賞をアメリカの女性詩人ルイーズ・グリュックに授与すると発表した。賞金として1000万スウェーデンクローナ(約1億2000万円)が贈られる。

近年、スウェーデン・アカデミー内部の不祥事問題により2018年度の開催が見送られるなど揺れ動いていたノーベル文学賞だが、昨年度より体制を改めて再び開催されるようになった。昨年は開催が見送られていた2018年度と、2019年度が一度に授与される形式であったが、今年から以前の形式に戻っている。

2020年度ノーベル文学賞の受賞者となったルイーズ・グリュック(Louise Elisabeth Glück,1943~)は、アメリカの女性詩人である。サラ・ローレンス大学やコロンビア大学で詩について学びつつ、1962年頃より詩人としての活動を始めた。そのキャリアの中で、ピューリッツァー賞詩部門(1993)、ボーリンゲン賞(2001)、米国議会図書館桂冠詩人(2003~2004)、全米図書賞(2014)、全米人文科学メダル(2015)など多くの賞を受賞しており、現在はイェール大学の非常勤教授としてマサチューセッツ州で暮らしている。

ルイーズの作品は明快な作風で知られ、家族関係や神話などに題材を取った作品が多い。また、9.11同時多発テロに際して発表された詩など、トラウマや苦しみに向き合う姿勢を描いた作品もある。スウェーデン・アカデミーは、ルイーズが受賞に至った理由を“for her unmistakable poetic voice that with austere beauty makes individual existence universal.”(厳粛な美しさで個人の存在を普遍的にする、彼女の紛れもない詩的表現のために。)と評価している。

授賞式は12月に開催される予定だが、コロナウイルスの影響により、ストックホルムでの開催を取りやめオンライン形式での授賞式となる。また、メダルは受賞者各国のスウェーデン大使館を介して授与されるという。

一部で受賞が期待されていた、日本人作家の村上春樹氏は今年も受賞を逃した。