場末の人生

山谷感人

エセー

1,369文字

昨夜、スナックに行っただけのハナシ。

場末のスナックに行った。偶々、テレビジョンを灯り代わりに付けていたら、東京の小岩を歩く! なる往時、自身の青春時代を過ごした街並みが瞼に入って、言葉もなく単純に、今いる部屋からただ、エスケープしたくなった故。
二十一時半。一万円札だけをポケットに入れ、僕は個室だが所謂、集合生活をしているのでコソッと出ようとしたのだが、玄関の向こう側、奥。共同食堂から笑い声が響いていた。煩いと思いつつ逆に無論、僕はその食堂のドアを開けた。遊民の血が騒いだ、としておこう。
四人。僕が現在、暮らしているトコロは、三十代前半から八十代までステイしているが、そこに居たのは僕とやや同年代の所謂、馬鹿四天王であった。無論、判ってはいたが。
「お! 山谷さん、馬鹿のトップが来た!」
僕はその哄笑を微笑で流し「茶を呉れ」と述べた。「はいっ」とタクと云う渾名の、僕になついているヤツが動いた。「濃いめで頼むわ」
僕は基本、格好をつけるのが好きなので、単に茶を飲むだけでも、皆がガバガバ煽っている時、全く作法を識らなくても湯飲みを右に廻したり左に廻したりして一服する。
此方も此方で、まあ、いいわ。雑魚いたわで誘う。「さて、スナックとやらに、我は行こうと思う」
一人が、「行く、行く!」と叫んだ。下僕のようなタクも述べた。「山谷さん! 一万円有れば三人で二時間、呑めますよ!」「さよか。就いてまいれ」 「へへっ」 残りの二人は、如実に、ポカンとしていた。
徒歩三十分。ヴィーナスなる名前の、どんだけゴージャスなのだろう! なる小屋に着いた。店内に入ったら見た事ある風景。僕は「男はつらいよ」を全作品、三周は観ているのだが、それこそ寅次郎がリリーを探しに行った小岩の場末スナック、ネタであった。所謂、ババアばっかりじゃん……。案内した、下僕のタクを殴ろうかと考えたが、扉を開けば最早、帰れぬ。もう一人の、連れの顔を、僕は石川啄木レヴェルで、ぢっと見て「帰ろうと言え」なるサインを送ったが、要は、ただ酒を浴びれたら、何でも良い、アルコール依存症なので是非もない。
仕方なく入店したヴィーナス。五十歳過ぎのババアに囲まれながら、下僕なるタクは「愛がうまれた日」や「ポケベルが鳴らなくて」なぞを器用に、そう若輩者なのにババア向けに器用に唄っていた。お前、ババア・キラーか! もう一人はアルコールさえ呑めれば良いから、ジンロのボトルをラッパ飲みしだすしね。早く他界して呉れ。
悶々として、この一連を鑑みた時、一つの答えが有った。そう、僕の人生、そのものだ。
無聊にてスナック行こうかなあ、が僕にとって旅であったし、何かをしよう、とした時、常に足手まといの仲間がいた。無論、アチラガワから映したら、僕がそうだったのかも識れない。人生とは、こうしたモノで、たかが「スナックに行こう!」の軽いテンションで、考えされらるるモノである。場末の人生、場末のスナック。下僕、アルコール依存症、それが僕に付き添って呉れる存在。結句になるがサンクスとしか云えないだろう。チェッカーズも唄え。ジンロ、五本目、頼め。
なお、何だかんだ述べつつ、その、場末のスナックの五十歳以上のババアに、熱心にLINEしているのは僕である。スーパーマーケットに、半額セールの時間に、お弁当を買いに行こう! なるデートを誘われている。
場末の人生。アデュー。

2022年5月4日公開

© 2022 山谷感人

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