紙上大兄皇子の死
高橋文樹
『ちっさめろん』は破滅派同人紙上大兄皇子の遺作である。長らく破滅派の中心的な執筆陣に名を連ねていた彼は二〇一五年、霊的な存在としてなんとか命脈を保っていたが、ついに死んだ。本作は彼の遺稿である。ファイルは私があずかっていた初期原稿のフォルダの中にWordファイルとして保存されていた。
約十年を経て発表されることになったこの作品だが、いま読み返してみても新鮮な驚きをもたらしてくれる。SFという破滅派に乏しいジャンルにおいて、皇子は卓抜な才能を発揮した。
しかしながら、発表までに長い時間を要してしまったがために、少し現実と矛盾することになる。そこで、私は故人の名誉のために、作中で現実と齟齬をきたしてしまった点、ならびに現実と不思議な符号を見せた点について解説したい。
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