幼き父を背負った祖母があの日見た空は
煌々と金色に輝いていた
眩しくて目を閉じた後に
もくもくと見たことのない奇妙な形の雲が
薄暗くなった真夏の空に昇っていた
焼け野原になった街に出た祖母が
闇市でどんなことをしていたのか
語られることは最後までなかった
幼き母と愛する祖母の為に祖父は
メリケンの空母に突っ込む零戦を作り続けた
右手の二本の指を無くしたその理由を
寡黙な祖父が語るとはなかった
テレビやラジオが語ることは
彼らに何を思い出させたのだろう
ぼくが夏になると思い出すのは
祖父が苦手なりに孫をあやそうと
追いかけてくすぐる仕草
いつも笑顔を絶やさなかった祖母が
沸かすお風呂の立ち昇る湯気
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