刑事とサーカス。

巣居けけ

小説

7,523文字

公園のベンチに座り込んでいる刑事が、「もう書けないよ……」と囁いている。

そんなわけでおれは、ようやくありつけた新品な冷たいベッドの上で、赤色のバードウォッチングに参加することを必死に妄想していた。そうすることで次の投薬の時間までをやりすごした。鉄の香りに混ざって冷風が吹く個人病室の中で、乾燥した鳥どもが脱糞の圧力で飛び立つ姿を妄想し始めたんだ。

おれは新しい錠剤を粉末にする係で一週間を過ごしたが、結局は注射器で人を絶頂させる係に戻った。おれは自分で自分の錠剤を壊すことはなかったが、自分のコピー機で頭を染めたことがあった。病棟の他の連中は、看護婦や看守どもに自作の違法薬物を与えて手ごまにしていたが、おれは素早く山羊の仕事に乗り移るために、そういった野蛮行為の全てを禁じた。

おれが昼食を取っている時、おれの向かいには違法薬物の取引で有名な男が座ってきた。名はドーブルといって、黒い肌を持った大男だった。おれは興味本位で奴に訊ねた。どうしてあんたらは看護婦や看守に違法薬物を与えることができるのか、そもそも、どうしてあんたらは違法薬物を持っているんだ、あんたらはどうやってここで商売をしているんだ、と。そしたらドーブルは空咳をした後に、自分の昼食であるミネストローネの少ない残りを啜った後に答えた。曰く、おれたちは投薬でもらった錠剤で薬を作ってる、と。なるほど、確かに精神に作用する薬を粉末にし、混ぜ合わせれば、市販の薬では手に入らない快感を与えてくれる薬に進化させることもできるだろう。おれは納得したふりをして席を立った。注文したばかりのハンバーグはまだ冷え切っていなかったし、そもそも半分も食べれていなかったが、それでもおれは自分の黄色いトレーを持って立ち上がった。すると後ろからドーブルが声を掛けてきた。奴の手には三つの錠剤があった。おれは一目散に走り出した。廃棄口にハンバーグをトレーごと落として、さっさと食堂から抜け出した。

おれはプールの集合写真で一晩をやり過ごした経験がある。鉄のバットがでぶの社長の知り合いに届けられると、寒い冗談を受け入れている商人に、街の一部をピザのような香りへと改革する話が出回った。おれは朝日と共に記者を名乗った。おれが満を持してそうすると、たとえ酩酊の元で自分の歯列に爪楊枝を刺し込んで遊んでいるスーツのでくの坊の正体が、国際関係を仕事にしている硬い連中だったとしても、そのでくの坊は酒を呑んで酔っ払ったみたいに、なんでも喋ってくれる。なんでも駄菓子を買ってくれる。そしてでくの坊は居酒屋の店主と二階の寝室で湿った素肌を連結させる……。

おれは他人の話を聞き続けるのには長けていなかったが、相手に気づかれないように録音機のスイッチを入れることには長けていた。記者を名乗っていた時期のおれは、れっきとした諜報員だった。

おれには港で医師を名乗っていた時期がある。だがある日、隣で商売を始めようとしていた不動産のでぶの女がそれを妨害してきた。その女は、おれが完璧に研ぎ澄まされた赤いメスを握って、新しい患者の肉体的な悩みを解明しようと意気込むと、決まって騒ぎ散らすメンドウな奴だった。奴はいつでも、おれが人を殺すんだって言いふらす。奴は調理に失敗した憎たらしい肉団子のような顔面で、おれの患者を疑心暗鬼に突き落とす。おかげでおれは何度も食事の無い休日を過ごした。パンの耳すら口に入れられない一日を五回ほど過ごした後に、おれはあの女を殺そうかと考えた。しかし、ぎりぎりの所でとどまった。おれの知ってる医師は皆、殺人未遂は犯しても殺人は犯さない。医師を名乗っている以上、彼らの名誉を汚すわけにはいかなかった。だからおれは持っているメスを全部売り払って、さっさと港から退散した。

あてはあった。かつての薬物仲間に連絡を取れば、その日のうちに新しい仕事にありつけた。

今のおれはれっきとした山羊の調教師だ。

今のおれには三本の注射器を自由自在に操れる権限がある。黄色い薬で山羊をしつけるのが今のおれの仕事だ。牧場の隅にたむろする普通の山羊は、草だけを食べて生きている。おれはそんな呑気の者に投薬をして、路地裏なんかで薬を嗜む山羊に成長させる。路地裏のあれらは問題としても見られているが、おれはそうは思わない。連中が居るからこそ、この街には薬と金が素早く循環しているし、それのおかげでおれのような戸籍無しが稼げてる。この街には山羊が必要で、それを知らない国際連中は、山羊掃討作戦の後に泣く。おれはその泣き声を聴きながらホームレスのサンタクロースに戻る。そしてかつておれが成長させた山羊どもに薬を売る。人間にも売る。しかし人間に対してはいつでも三割増しの値段を提示する。何度か殴られそうになるが、そういう時は山羊が助けてくれる。牧場か、あるいは街の歩道の隅でたむろしている山羊は確かに力無しだが、路地裏の山羊は人間に匹敵する知性と筋力を持っていて、おれ以外にもボディーガードにしているサンタクロースは多い。

サンタクロースとは路地裏の違法薬物を牛耳る存在だ。彼らはいつでも赤い衣服を身にまとっているが、彼らから薬を買う人間や山羊どもは彼らの衣服が赤色だと言い当てることができない。おれはサンタクロースとして三年動いたが、おれのシャツやブーツを指さして、赤色だと言い捨てながら薬の値段の札束を差し出してきた奴は一人も居なかった。連中にはサンタクロースの衣服がそれぞれ違うように見えている。稀に衣服の色についての議論が発生する。青だの黄色だのと言い争うが、赤という色は一切出てこない。常用者の連中はサンタクロースの赤を視れない。

おれはサンタクロースとして三年動いた後に、運よく路地裏から抜け出すことができた。そしてかつての医者のような職に就くことができた。もちろん違法薬物関連で、違法薬物専門の医者におれはなった。マンションの一室がおれの管理する病院で、おれは一番奥の部屋を診察室として来院者を待った。だいたい二日に一人あるいは一匹の人間あるいは山羊が来院する。そして来院の連中はだいたいが自分にあった違法薬物を見失っている。おれはそんな奴らの話を聞き、アンタにはこの薬が似合いますよ、と錠剤を薦めてやる。すると患者は笑顔で帰っていく。
「おい、あんた、所属はどこだね?」刑事は煙草の紫煙を吐き出すような、弱い勢いだった。

おれは震える膝や頬の筋肉を抑え込みながら答えた。「え、お、おれは刑事だ」
「……そりゃあ、ここに居るのは全員が刑事だろうよ。まあ、医者もいるけれど。あるいは新聞記者になりすましたロクデナシか? それとも薬好きの愚か者か? 道楽主義の遠鉄バスを修理する力士の息子は潰れているし、蟻の巣を再現したはげの学者はどこまでも利己的な杖をしゃぶっているんだ。おれは刑事で、あんたはいつでも新聞紙の隅から情報を得ている刑事なのか?」
「そうかい」おれはさりげなく刑事の顔を視た。白髪の奴はおれとは違い、頬の筋肉をぐにゃりと曲げる笑みでおれを視ていた。確実におれの素性を疑っていたが、おれは嘘を突き通す覚悟だった。「でもおれは刑事だ。一流さ」おれは釣りだけで生きていたかつての友人を思い出していた。奴はその日に釣り上げた魚やゴミの類を腰に括りつける癖を持っていた。夕暮れまでに釣りを終えた彼はいつものように腰に獲物を括り付け、魚やゴミを買い取ってくれる記者のもとへと行く。そこまでの道のりで、売る獲物と売らない獲物を選別する。売らない獲物は今晩か、いつかの食糧になる。売る獲物は硬貨となり、彼は硬貨のほぼ全てを釣り道具の買い足しに使う。『ほぼ』というのはつまり、ボロい住処の少ない家賃の支払いにもここで手に入れた硬貨を使っているということ。しかし彼はまれに、記者のもとへは行かずに住処に帰ってしまうことがある。その時の彼は腰に括りつけた獲物のことすら忘れ、路地裏の奥の方にある住処へ入っていってしまう。そしてそのまま寝る。彼が記者の元へ顔を出さない日というのは、彼の脳が何よりも睡眠を要求している日だった。彼は脳の睡眠欲求には勝てない……。そして彼は一日に百匹以上の魚を釣り、五十以上のゴミの類を釣り上げる漁師でもある……。

おれにもついに、魚が必要な日がやってきた。その日は午前で仕事、彼と交流があった時期のおれは新聞に掲載する写真を撮影する仕事に就いていた、を切り上げ、彼がいつでも釣り糸を垂らしている場所へ向かった。そして彼の細い肩をちょちょいと叩き、彼に交渉を挑んだ。彼は記者に魚を売る時は向こうの言い値で売るが、それ以外に魚を提供する時は値段を提示してくる。そして彼がどんな値段を言ってくるのかは彼の調子に比例している。おれは彼が絶好調の中に居ると願いながら、魚を一匹売ってくれ、と交渉を持ち掛けた。すると彼は首だけを動かして真後ろに居るおれを見上げた。
「今日はバケツが黄色に見える人が居るから……」
「色ってのは、いつでも虹の帰りを待ってるんだ」

おれはその時幸福に包まれた。全身を顔の良い女が舐めてくれている時の心地だった。緊張で委縮していた心臓がゆっくりと弛緩していくのがわかった。彼の顔は笑みだった。絶好調の中で釣りをしている証拠だった。おれは再度、魚をくれないか、と言い、彼の言葉を待った。すると彼は横に置いてある青のバケツの方向に頭を動かし、五円で良いよ、とだけ囁いた。
「いつでも新鮮さが保たれていればいいんだがな……」おれは黒ズボンのポケットから一円玉を五枚取り出し、彼の横に置いてからバケツの中の魚を一匹掴んで踵を返した。「海には戻るなよ」

おれは酒飲み屋に入り込んできた少年の顔を見上げる……。「おい! あんたはどうして白い髪なんだ?」

すると刑事は黙読を静止しておれを視る。一秒の間で瞳と瞳が合った後に、おれはこの煩い刑事が刑務所の箱に入った経験があることを見抜いた。そこはこの国でも最悪の称号を冠している箱だった。全身が棘だらけで、一歩も動くことを許さない箱だった。おれは刑事の脚を見た。そして、やはりな、と納得を頭の中で感じた。刑事の靴は所々に赤黒い染みが付いていた。それは棘だらけの箱の中で過ごし、足が穴だらけになったことを意味していた。あそこの棘で作った穴はいつまでたっても治らないことは有名だった。

首を動かして血だまりを見つめていた刑事は、ようやくどこか別の場所を見つめながら、やはり紫煙を吐き出す調子で少年に声を出した。
「自分で一流を名乗る奴ってのは、歪みの無い本物か、薄っぺらい偽物かのどっちかだ。刑事としての履歴なんてモノは関係無い。それに一流というやつは、いつでも特殊な動物の死骸の香りがする電子機器で物事や恋人の脚の長さを測ると言われているが、おれはそうは思わない……。たいていの刑事はカツラを被って偉そうにふんぞり返るか、地べたに這いつくばる勢いで街を歩いて情報を集めるかだ。あんた、初々しい刑事の背広に値札がまだ付いているとこを見たことがあるか? おれは今までたくさん見てきた。そして時限爆弾の解除に精を出してきた。いつでもマイナスドライバーを懐にしまいこみ、電線や鍵盤の解体方法を何度も頭の中で転がして、脳で考えるよりも先に素手が動くように鍛えた。山羊の住む爆弾解除には奴らの唾液が必要だった。しかしおれは奴らの唾液を一般的なローションで代用したんだ。なぜかわかるかい? 少年」
「オープンカーが走っているから!」少年は酒飲み屋の壁に掛けられた滑り台で三回だけ滑る……。他の警察官が、どうしてここに滑り台があるのかを疑問として漏らす……。

おれは驚いたふりをした。そうすることでこの刑事に、自分は仲間ですよ、と示した。おれは手錠の冷たさを知っているが、檻の鉄の重さは知らなかった。「あんたはどこまでも山羊嫌いだったんだ。だからこそ唾液を採取する手順を知らなかったし、知っていたとしてもそれを使うわけにはいかなかったんだ」
「そうだな……。そしてあんたの目には輝きがある。いいだろう。あんたはおそらく本物だ。まぁ、どうせ一課の刑事だろう? これが殺人だって嗅ぎつけたから、一足先に到着したってことだろう?」

刑事はひどく浮いている歪曲した声を発した。そして自分がまだ若さの残っている新鮮な刑事であることを脇で示した。彼の猛禽類のような、あるいは蜘蛛のような眼光に少年が四度目の滑り台を執行し、おれは速やかな推測を始めた。彼の靴の香りを採取したのだ。親指で彼の靴の一部を擦り、もう片方の手の指で血だまりを採取。左右の鼻孔にそれぞれの指を押し付け、香りを比べる。……鉄の香ばしい臭いが左右から脳を圧縮し、全身が熱くなっていく……。すると酒飲み屋の採取をしていた警察官の一人がおれの耳元で、若さを示した例の刑事の犯罪歴を囁き始める……。

おれは医者をやっていた時期にいくつもの人間や山羊の血の香りに頭をつっこんだ。そして様々な個々人の血液の個性を脳に刻み付けた。その経験はいまでも生きている。今、脳に宿った二つの血液の鉄の香りは、おれが今まで嗅いできたどの血液の香りとも一致しなかった。しかしおれは医者の時期いこの街の裏社会に属するほぼ全ての人間と山羊の血液を嗅いできたはずだ……。
「これはどこの奴の血だ?」おれは血だまりを睨みながら呟いた。
「それはどんな連中の血なの? おじさん!」少年が五度目の滑り台を執行していた。二人目の警察官が、再び壁掛けの滑り台に疑問を落としていた。

地球儀の中心を必死にさがしている男。街の枯れ木の数を数えて夜を過ごす男。おれはこの酒飲み屋の歴史を想った。そうすることで建物と一体化し、ここで起こった全ての出来事を学ぼうと考えた。しゃがみの体勢のままで目を瞑り、隣の刑事や少年の存在を風味だけで感じる。おれは数十年の歴代の酒飲み屋の長の顔を暗記した。

そして薬莢を変えて火薬の臭いと汗のぬめりを嗅いでいく。刑事がスラックスを下げ、露出した陰茎をおれが差し出した医療用ハサミで切断する。しかし彼の陰茎とはゴムのようなよく伸びる性質を持っていたため、彼が悲鳴を上げながら性欲を喪失することはなかった。

おれは返却された医療用ハサミを完璧に砕いて食らい、少年が使っている滑り台に近づいた。
「これはいつ作られたものなんだ……? いや、話さなくていい。五年前だろ?」

少年は驚きを吐き出した。「どうしてわかったの? 僕のお父さんが作ってくれたんだ」
「なら……」おれは刑事らしい腕組で一、二歩歩いてみせる。壁際の埃を採取している警察官とぶつかる。「ああすまない」

そしておれは少年の前に戻り、彼の広い額に指を当てる。「君の父はいつでも君の健康や体育的能力の将来を考えていたようだね」
「わあ! いつでも僕が中心だったんだ!」少年は六度目の滑り台を執行する。さらに二人の警察官が彼の滑り台の存在や、彼独自の滑り方に疑問を想う。
「なあ、どうして彼は尻を滑り台に付けて滑っているんだ?」我慢を知らない一人の警察官がしゃがんだままの刑事に訊ねた。
「彼はそういった種族に属してるんだ」おれは刑事が余計なネグレクトの実態を吐き出してしまう前に答えてやった。警察官は納得した様子で採取の仕事に戻った。
「なあ、あんたは本当に一流なんだろ?」刑事がさらに歪んだ声で問いかけてきた。おれには刑事の頭が、すっかり風船に見えていた。
「あ、ああ。うん……ふんふん……。そうさ。おれは一流だからな」横の刑事に対して腕を組んで見せる。そしてそのまま、しゃがんでいるおれは出来の良いコサックダンスを披露する……。
「おお! 彼が歴代のコサックダンスを倒したバレーの名手か!」
「汽笛の中心で風を起こす人間ね!」
「道楽者!」

周りの警察官どもは小銭を投げてくる。おれは山羊の真似をイメージして舌を伸ばし、全ての小銭を背広のポケットに収納する。
「ふふん。そうかい。でも、ここであんたが喜ぶような情報はもうでてこないと思うぞ。この血はすでに採取したし、他の痕跡なんてものは一切無いってハナシだ。連中は秘密裏に情報を交換し、秘密裏に捜査を進めるからな」
「そ、そうか……。ならおれはさっさとお暇するかね……。鉄パイプの上で新しい嬢が待ってるんでね……」
「待て、あんたは確かに一課の人間だが、単独でここに来たってことは、それなりに自由が許されてるってことだろう? ならあんたにこれをやる」

刑事は床に放置したままのスラックスをを持ち上げて、尻ポケットから一枚の紙を取り出した。

おれは彼が取り出したそれをスッと受け取った。
「これは、メモか? この住所がなんなんだ?」

おれが疑問を顔に浮かべると、彼は問題がわからない生徒に自信満々に答えや解き方を教える数学教師のような笑みでおれに近づいた。焼酎のような香りが漂った。
「殺人事件にしか興味がない一課の人間は知らないだろうが、実は今日、この店で裏の取引の類が予定されていたんだ。しかし実際は取引なんて行われないどころか、この血だまりだ。おれたちはこの血だまりを、裏の人間同士の諍いだと思ってる。どんな理由があるのかはまだわからんが、とにかく連中が勝手に争いを始めた可能性が高いんだ。そのメモはおれたちがマークしてる商人の潜伏先だ。そしてその商人とは、今日この場で取引をする相手だと、おれたちは見てる。あんた、自由が利くなら、その住所に行ってみるのはどうだ? もしこの血の持ち主なら、どうしてやられたのかを聞きだせばいいし、違うってんなら、そいつから別のアテを吐き出せばいい」
「ちょっと待ってくれ。どうにもあんたの口ぶりからは、その商人とやらがおれたち刑事と簡単に口を利いてくれるように思えるんだが、どういうことなんだ?」
「あいつとおれたちはそういう関係なんだ。あいつの商売を見逃すから、こっちに裏社会の情報を流す」
「なるほど。あんたらが裏の商人を飼っているってことはわかった。……そんなやつをおれに会わせて良いのか? おれはイッカだぜ?」しかしおれに『イッカ』なんてものはわからなかった。
「構わん。これをしたのはおれの独断だが……おれは刺激を求めてるんだ」
「……そうかい」

そして最後に少年が七度目の滑り台を執行する。おれは気持ち良く滑り終えた少年の露出している尻に医療用ハサミを突き立てた。少年は首だけでおれを見て、かつてのあの釣り人のような目を作った。
「お前があの時の釣り人だったのか?」
「こぼしてもいいけど、拭かないとだめなんだよ、おじさん」

シュールの中の壁のような絵画がおれの中に現れ、風と共に吹き荒れている。

2022年8月24日公開

© 2022 巣居けけ

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