お子さま天下⑧

お子さま天下(第8話)

吉田柚葉

小説

1,671文字

八回目ですが、特に言うことはないです。

それからどのようなやりとりがあったのかは覚えていない。気がつくと俺は、自分の塾の前で風に吹かれていた。右手には、小さなビニール袋が握られていた。その中には、薬を入れた紙袋が三つ、入っている。薬が増えたのだ。俺はその場にしゃがみこんで、薬の説明書を読んだ。朝起きてすぐに飲むものが一種類。昼食後と夕方に一錠ずつ飲むものが一種類。夜に二錠飲むものが一種類。それとは別に、夜に一錠飲むものがもう一種類。不安時に頓服薬として服用するものが一種類。しめて七錠。数えているうちに、いつかの島田さんの声が脳裏に響いた。

前職で営業マンをしていたとき、成績不振で頭がおかしくなっちゃったことがあってね。仕事を投げ出して、三日ばかり海を眺めていたことがあったよ。精神科には行ったのだけど、薬を貰って、それをゴミ箱に捨てて帰ってきた。

いかにもありそうな話だった。初めてうつだと診断されたときに誰かのブログで読んだ内容だった気もする。ひょっとすると島田さんは、その内容を拝借して、我がこととして俺に話して聞かせたのかもしれない。

2019年9月21日公開

作品集『お子さま天下』第8話 (全14話)

お子さま天下

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© 2019 吉田柚葉

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